犬には訓練が必要だ!

史嶋桂

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それは現代の日本で犬を誰にでも安全な存在にして飼うためである。訓練と言っても普通の家庭犬なら難しいことを教える必要はない。スワレ・ツケ・フセ・マテ・コイが最低限できればよい。それに可能ならモッテ・コイができれば十分だ。ただし最初の5つのごく基本的な訓練は飼い主が命じたらいつでもどこでも確実にできるように毎日訓練を繰り返さなくてはならない。

なぜなら飼い主自らの手によって基礎服従訓練を入れた犬は、少なくとも飼い主の命令に従って動くことになれているからだ。これは命令に従う習慣がついていると言ってもいいだろう。犬と飼い主の間に、命令される者と命令する者の関係が確立すると、それは飼い主と犬の間で擬似的な親子関係を成立させる一助となる。そしてオオカミが群れのアルファに従うように、子犬は母犬に従う。大人犬に遊んでもらった子犬や若犬は大人犬の行動を模倣する。犬は自分を教え導く長上者を尊敬し従うようになる。だから犬の訓練は飼い主自らが行わなくてはならない。

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犬に命令するという表現を嫌う飼い主さんもいるが、僕はごつい軍用犬崩れみたいな連中が最初の訓練相手だったので、どうもこの表現から離れるのが難しい。なぜなら訓練中の預かり犬も含め、自分の犬がきちんと命令に従わなければ、対人でも対犬でも殺傷事故が起きるという認識が常にあったからだ。先の記事で取り上げたように、温和と思われやすいゴールデン・リトリーバだって、大袈裟でなくチワワだって傷事故の当事者になりうると僕は考える。

だからと言って犬をむやみに危険な存在だとは考えたことはない。包丁や果物ナイフと一緒で、どんなに良く切れる刃物だって、包丁を使いこなせるその家の主婦が、台所で野菜や肉を切っているなら、なにも危険がないのと同じだ。

危険なのはその刃物が、何かの理由で人や生き物に向けられたときだ。

人間は自前ではそれほど強力な武器を持たない。もちろん例外もある。空手の高段者なら素手でレンガを砕き、足でぶ厚い板を割る。だがそうした格闘技を身につける過程で行う修行は彼らに一定以上の攻撃抑制を与えるように出来ている。

自分自身の経験から言えば、修行の過程で他人と実際に殴りあう実体験を通じて、自分の拳が他人に与える痛みや危険性を、自らが殴られる痛みで実体験したということが大きいと思う。正直僕は鍛えた拳で他人を殴ることに恐怖を覚えた。そしてその自覚と想像力が修行の場以外での攻撃抑制に繋がっている。

これは子犬同士が同腹の兄弟姉妹の子犬たちと行う取っ組み合い遊びに似ている。幼い牙で咬んだり咬まれたりを繰り返すことで、子犬は他の子犬を本気で咬むと自分も咬まれて痛いという経験を繰り返す。この繰り返しの結果、相手を本気で咬まない「甘咬み」という攻撃抑制を学んでいくわけだ。

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もしそうした経験のない子犬を飼うことになってしまったら、社会性のある大人犬の飼い主に頼んで、その子犬に「遊び相手を本気で咬んではいけない」ことから始めて犬の礼儀を大人犬から教えてもらう必要がある。僕は著しい咬み癖のあったマイロを生後2歳の牝の狼犬に教育してもらった。

マイロは狼犬から遊び相手の犬を本気で咬んではいけないことから始まり、水を飲む順番を守るようなことまで教えてもらった。もちろん仔犬を大人犬に預けて教育してもらうリスクはある。しかしその学習をさせないと社会化の機会を奪われた子犬は一生他の犬を怖がり、最悪咬み癖のある犬になってしまうかも知れない。

これは人間の子供でも同じようなことが言える。幼時より子供同士の喧嘩も、格闘技も一切経験しないままに大人になった人間は、他人に殴られたり、投げ飛ばされたりした経験がない。そのため、自分が相手に暴力を振るったら相手がどうなるか?相手がどんな風に感じるか?と言う想像力が働かないことがある。

だから普段は穏やかで暴力など振るったことのない人が、何かのきっかけで相手を死傷させるような攻撃をしてしまうことが起こりうる。そして同じことが犬でも起こると僕は考える。幼時に子犬同士で咬んだり咬まれたりした経験の無い犬は、自分の牙の威力を知らずに人や犬を傷つけることがあるのだ。

一方犬の咬傷事故による死者は、人間が犯す殺人事件の被害者よりはるかに少ない。僕はこうした例から、相手を死傷させうる自前の武器や能力を持った存在には攻撃抑制が必須であると考える。

そういう意味では、普通の人間の方が格闘技経験者や犬よりずっと危険かも知れないと思う。なぜなら原始時代より人間は武器を手に入れることで著しく高い攻撃能力を獲得してきたからだ。現代社会なら、ネット通販でもナイフや銃が買える国もある。そうして安易に入手できる武器には攻撃抑制がセットされていない。

人間について言えば、素手でレンガを砕くような拳と技は容易には習得できないが、武器は簡単に手に入るし簡単に使える。だから武器と言うものはとても危険なのだ。

犬の危険性も、彼らが感情のある生き物である点を含めて、包丁やナイフと同じようなものかも知れない。他人に害意をもった人間が持った刃物はとても危険だ。同じように人間に敵意を抱いた犬も危険だ。彼らは生まれながらにして、抜き身のナイフに相当する鋭く長い犬歯と、それを他の生き物に突き立てることが出来る頑丈な顎を持っている。つまり人間を攻撃しようとする意思を持ってしまった犬は、人間の犯罪者と同等かそれ以上に危険な存在と化す。

ここでやはり自問せざるを得ない。僕は生まれる前からボクサーとジャーマンシェパードとドーベルマンがゴロゴロ居る中で育った。そして幼児期から小学校に上がるまで、彼らの子犬のような立場で大切に守られて育った。犬たちは取るに足らない僕に攻撃の矛先を向けることは無かった。それは何故だったのか?

僕の最初の犬体験は、覚えている限り捉まり立ちの台になってくれたボクサーの老犬だ。米軍族が帰国の際に日本に置き去りにする犬を祖父が引き取って、日本語で訓練を入れ直し、里親に譲渡することを繰り返していた。だからそういう大きな犬が実家にはたくさんいたのだ。

そのボクサーの老犬は繁殖経験のある牝で、おそらくは母性本能も手伝って、僕を自分が属している群れに生まれた子供として扱ってくれたのだと思う。彼女はやがて幼稚園の送り迎えまでしてくれるようになった。

一度だけ、新入りのドイツシェパードが僕に唸り吠え掛かり咬みつこうとしたことがあった。僕は精神的に弱い犬の方が良く吠えること、そういう犬はむやみに近づかなければ危険はないことを知っていた。だから庭で吠えている犬からゆっくり後じさって離れた。そのとたん、老ボクサーがそのシェパードに飛び掛った。他の犬たちも次々とそれに続いた。僕に吠え掛かったシェパードはあっと言う間に数匹の大型犬に圧倒され、押し倒されてしまった。僕は大慌てで自分に吠え掛かった犬を助けに行った。

ステイ、マテと声をかけ、襲い掛かった犬たちの名を一匹ずつ呼び、首の皮をひっぱり、時にはシッポを引っ張って攻撃対象から引き離した。襲いかかった犬たちは、群れの最長老であるボクサーがマテの命令で襲撃を止めたとたん、三々五々解散した。僕はおびえておなかを出し小便まで漏らしたシェパードに声をかけた。なんと言ったかまでは覚えていない。さっきまで僕に敵意をむき出しにしていた大きな犬は潮垂れていたが、大人しく僕の愛撫を受け入れた。僕が他の犬に命じて、彼らの襲撃を止めたことを彼も理解したのだと思った。

そんな風に飼い主がマテと一言命じただけで、すべての活動を止めるように訓練された犬なら、他人や他の犬を攻撃しようとするのも確実に止めることが出来る。それが出来ない犬の場合は、リードと首輪で制御する必要が生じる。どんなに大人しげな犬でも大型犬や攻撃力の高い犬なら、人や犬に致命傷を与えることが出来るからだ。飼い主はそのことを認識した上で、犬を確実に制御できるように日々訓練を続けなくてはならない。

一方で仔犬から飼った犬なら、飼い主が手間暇かけて、あらゆる犬と人に社会化を行い、犬自身が身に着けた攻撃抑制がすべての犬と人に発揮されればそれでも良い。ただ多くの場合、社会化には穴が生じやすい。例えば近隣に日本人と大きく異なる人種の人々がいない場合、そういう相手と社会化させる機会はなかなか得られないだろう。

これからの日本だと子供に対する社会化が課題になることもありうる。日本は超高齢化時代を迎え、お年寄りなら散歩のたびに確実に会えるが、近隣に幼い子供がいない場合、子供たちに遊んでもらって犬の社会化を行うのは意外に難しいのだ。

そういう時こそ、基礎服従訓練が重要になる。

基礎服従訓練は社会化による攻撃抑制そのものの代替ではないが、マテの一言で確実に止まる犬なら危険な状況は回避可能だからだ。

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