ゴールデンレトリーバーと凶暴性(?)

藤田りか子

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ゴールデン・レトリーバーは狩猟行動の中でも「獲物を口にくわえて運ぶ」という部分を強調されてブリーディングされた犬種である。ただし今回引き起こされた乳児の死亡事故は、「回収行動」という部分とは関係はなく、むしろレトリーバーであろうとハウンド犬であろうと関係なく、全ての犬が持っている根本的な狩猟行動によって引き起こされたとものではないか、と私は個人的に思う。

遅ばせながら、スウェーデンに住む私はつい数日前に日本でゴールデン・レトリーバーが乳児の頭部を噛んで死亡事故を起こした、というニュースを知った。乳児は10ヶ月でハイハイのし始めだったそうだ。それに対してネットのメディアでの反応のほとんどは、

「普段おとなしい犬なのに」

「従順な犬なのに」

「凶暴で噛み付いたりするような犬種ではないのに」

というような反応にあふれていた。がっかりである。従順さと賢さを結びつけている点も、やはりかなりのがっかりを感じた。賢い犬なら、従順で大人しい、とでも言わんばかりである。これぞ擬人化も甚だしい。さらに、ほとんどの人が犬の狩猟欲について言及していないことに驚いた。少なくともドッグアクチュアリーでは様々なアングルから犬の咬傷事故についての解説記事を過去に発表してきている。例えば京子・アルシャーさんの2011年「犬の遊びが本気になるとき」というブログ。ゴールデンの事件に対して「大人しい犬なのに」と疑問を持ったネットメディアの方々にぜひ読んでいただきたい記事である。以下のごとく抜粋したい。

ただし、ここで明らかにしておきたいのは狩猟行動はイコール「獲物に対する攻撃性(Aggressivity)」の現われではなく、主に獲物を殺して食べることが目的であるということ。そして英語でAggression(アグレッション)あるいはAggressive(アグレッシブ)という言葉を日本語で表すとき、多くが単に「攻撃性」と訳され、往々にして一方的に相手を侵略する意味での攻撃性の印象から「悪いもの・危険なもの」として位置づけられているが、イヌの行動学からいう攻撃性とはイヌがイヌの社会で生きてゆくために生まれ持つ戦略の一つ。

私自身もちょうど今から2年前に「子供と犬、気をつけよう」という警告を発信するブログを記したのだが、まさにそこで書いたことが現実に起きた、という感じがした。以下のように抜粋しよう。

あるトレーナーが話してくれたのだが、彼のクライエントの犬が赤ちゃんに噛み付いたという。赤ちゃんは、クライエントの子供であり、別の部屋に犬といっしょにさせておいた時に事故が起こった。突然鳴き声がして、急いで部屋にはいったら、その犬は赤ちゃんの頭をくわえていたという。クライエントは、果たしてこの犬を安楽死させるか、どうか相談を持ちかけてきた。彼の答えは

「犬は食肉動物。ハイハイして頼りなく動くものを見れば、彼の狩猟本能にスイッチが入ることもある。でも、僕なら、決して乳飲み子と犬を監視抜きの単独で同じ部屋に放置することはないでしょう。もっともこの犬は、問題犬でもなんでもなく、普通の犬ですよ。監視がない場合、赤ちゃんと犬をいっしょにさせない、ということを守れば、何も安楽死をさせることはないと思います」

彼はさらに、

「どんなに犬が通常優しく振る舞っていても、犬という動物である限り、そのクライエントの犬のような行動を取る可能性はいくらでもある」

と付けたした

京子・アルシャーさんはさらに前出の記事でも、この様に述べられている。

子供が犠牲となった事件で咬傷箇所が頭部と首に集中していることは、犬の行動においては明らかに狩猟行動の一環であり、それにより浮き上がる問題点は「なぜ子供を獲物として犬が狩猟行動を示したのか」ということだった

今回のゴールデンの事故は稀なケースなどではなく、世界中で起きているのは、2010年のThe Dog Actually Timesである「子どもの咬傷事故に関する調査が示すこと」でも明らかである。アメリカからの調査を記したものだ。そこでは以下の様に述べられている。

子どもは身体が小さいため、犬の口が子どもの顔に届きやすいことが原因ともなっていると言えるそうです。実際、50%ほどが子ども時代に犬に咬まれ、そのうちの80%が頭部や首を咬まれると見込まれています。

私はここで事故のどこに責任があるか、ということを取り上げたいのではない。マスメディアの犬の見方について非常に違和感を感じた、ということを言いたかっただけだ。マスメディアの見方、というのはそれを受け取る大衆の動物観にも大きく影響を与える。それを考えると非常に辛くなる。

ドッグアクチュアリーには、上記のブログの他にも犬の咬む、という行動について多くの記事が発表されているので、それらも合わせて読まれたい。犬という動物、その行動を理解することこそ、犬の幸せ、飼い主の幸せに繋がる。そう信じている。

以下、咬む、ということに関連した過去記事。
噛みやすい犬種? (1)
噛みやすい犬種? (2)
噛む犬はこうして作られる (2) - 犬種の持つ目的
噛む犬はこうして作られる (3) - 幼少期の過ごし方
噛む犬はこうして作られる (4) - 犬と共に育つ
噛む犬はこうして作られる (5) - レージ・シンドローム
子供の咬傷事故を防ぐために飼い主ができること
犬の問題行動対策(3)ー 咬み癖 (前編)
犬の問題行動対策(3)ー 咬み癖 (後編)
子供が嫌いな犬

【関連記事】
ゴールデンの咬傷事故はどうして起こったのか?

 

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