犬を確実に呼び戻すには?

史嶋桂

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犬をリードから放して自由に遊ばせることは、犬の自主性をたもちつつ、犬と飼い主の関係性を確立する上でも重要な事だ。近年は合法的に犬を放すことが出来るドッグランも各地に普及したし、猟犬種なら法的な制限のない山林などで実猟を行わないまでもその真似事くらいはしたほうが犬の情緒も安定する。さらにリードなしで飼い主が犬を制御できるようになれば、その信頼関係もより深まる。今回は家庭犬を対象に呼び戻し訓練のコツを考えてみたい。

しかしリードから放したとたん、飼い主がどんなに呼んでも帰って来ないような犬では、犬を自由に放すことはできない。犬が行方不明になったり事故にあったりする危険性が高すぎるからだ。ではどの様にしたら、確実に呼び戻しに従うような犬に育てることができるだろう。その事を考えることは、ドッグランで犬を遊ばせるためだけでなく、犬を確実に飼い主の制御下に置き、咬傷事故を防いだり、犬が暴走して事故に遭うのを防ぐ意味でも重要だと僕は考える。

犬の呼び戻しを確実にする方法は複数ある。僕がもっとも大切だと思うのは、犬と飼い主の間に明確な主従関係、言い方を変えれば擬似的な親子関係を構築することだ。なぜそう思うかと言うと、僕は犬を大人になるのをやめた狼のような存在と捉えているからだ。そして社会的な肉食動物である犬は子として親代わりの飼い主に従うことで情緒が安定し大袈裟に言えば幸福に暮らせるとも考えている。

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写真のマイロというジャックラッセルテリアは若いころ一時期呼び戻しに従わない時期があった。彼女は生まれ持ったアルファ気質故に、僕を自分の親代わりと認めるまで、僕の招集を無視する癖があったのだ。

犬と言う生き物について別の見方もできると思う。僕は狼の群れの上位個体、第一位のアルファや第二位のベータになることをやめた狼から犬が出来たとも考えている。だから飼い主がアルファ=群れのリーダー=犬の親代わりとして犬から認められることが重要だと考えるのだ。

狼の群れの構成メンバーは、最初に繁殖した雌雄が一生続く夫婦となり、その父親と母親がそれぞれ同性のアルファとなって群れを統率する。一方第二位のベータ以下の個体はすべて群れのリーダーであるアルファに従い、さらに三位であるガンマはベータに、四位であるデルタはガンマに従うというように厳密なヒエラルキーに従って行動する。

ただしアルファ以外の順位はしばしば入れ替わる。それは必ずしも暴力的な手段で相手を従わせるものではない。たとえばベータ以下の個体が群れの中で上位にいられるかどうかは、他のメンバーたちの支持がどのくらい得られるかどうかにかかっている。

もし両親の狼が不在になると、自分がリーダーシップをとるという強い意志を常に群れの狼たちに示し続ける個体が序列第一位のアルファとなり次の繁殖個体になる。多くの場合、アルファ気質をもって生まれた雌雄が群れのリーダーとなり、次世代を残すのだ。そしてアルファは群れの誰よりも高いスキルと豊富な経験によって群れの全員の安全を図り、狩りを成功に導く。その際、強硬な手段を使うか、平和裏に群れを支配するかどうかはアルファの資質にかかっている。アルファ=強硬な支配者と言う単純な図式はそこには見られない。これも犬の飼い主が利用可能なスキームだ。

そしてアルファの召集に逆らう狼はいない。アルファの召集は狼が生きていくための糧、獲物を狩りに行くための招集であり、群れで協力して獲物を捕らえなければ、狼たちは飢えてしまう。だからアルファの召集に従わない狼がいればその狼は群れを去り、自ら苦労を重ね、配偶者を見つけ自分で群れを作るしかない。

一方で犬と狼の社会的な立場はかなり異なる。狼は直線的なヒエラルキーをもった社会で暮らすが、犬はむしろ一対一の関係性が強く、相手によって変わる上下関係を認識しながら暮らしている。そのため犬から見ると、どの局面でも自分より上と感じる相手の方が、召集に従い易いと思われるのだ。

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ここに犬を確実に呼び戻す上での一つ目のヒントがある。狼の群れのアルファは、ある意味他のメンバーの最上位者であり、多くの場合他の個体の両親だ。と言うことは、単純に考えれば、飼い主が飼い犬の親の立場を確実に維持できていれば、犬は親である飼い主を上位者と認め、その召集=呼び戻しにも従い易くなるということだ。

一方で近年は犬と飼い主が同等の立場で友達のように暮らしたいとする飼い主もいる。だがこと呼び戻しについては、飼い主と犬の関係が同等では難しいかも知れない。なぜなら人間である飼い主がそう思っても、犬自身は明確な上下意識を持っているからだ。犬に対して明確なリーダーシップを発揮しない飼い主は、犬から見ると自分より下位の存在=その意向を無視しても構わない相手と見なさられかねないのだ。

例えば、散歩の最中に犬の自由意志を尊重して、犬の行き先に無条件について行く飼い主は、犬から見ると下位者として振舞っているように見える。そういう飼い主の呼び戻しはうまく行かないことが多い。少なくとも僕自身は、自分自身が犬の上位者として犬の親の地位を占める以外の方法で、呼び戻しを確実にする方法を思いつけない。

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犬の呼び戻しを確実にするもうひとつのコツは、犬の意識の中で犬の欲求を飼い主の命令が上回る状況を作り出すことだ。

写真のように犬が自分の意思で他の動物の臭跡を追っている最中に飼い主が犬を呼び戻したとき、犬は自分の欲求と飼い主の命令を天秤にかける。そして飼い主の命令が犬の欲求を大きく上回れば、犬は一目散に飼い主の下に駆け戻る。もし犬自身の欲求より飼い主の命令が僅かに上回る程度だと、犬は渋々と飼い主の下に戻ってくるだろう。

反対に犬にとって自分の欲求の方が飼い主の命令より重要だと判断されてしまうと、犬は飼い主の方をちょっと見ただけでまた自分の行動に戻ってしまう。そしてそういう状況が繰り返し容認されてしまえば、犬は飼い主がどんなに大声で呼んでも自分の気が向かなければ飼い主の元へ帰ってこなくなる。

ここで少し妥協して、犬の欲求に対して飼い主の命令に報酬を上乗せするという方法がある。例えば餌の報酬を使って陽性トレーニングを行ってきた犬なら、飼い主に呼ばれて戻ったら、飼い主が笑顔で褒めてくれる、なでてくれる、犬が大好きなご褒美が必ずもらえる、と言う学習を繰り返せばよい。

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この時大切なのは、呼び戻した犬をまたすぐに自由な状況に戻してやることだ。例えば一回の呼び戻しで犬をリードにつなぎ、犬にとっての楽しい時間がそれで終わってしまうという経験を繰り返すと、犬はどんなに魅力的な餌をチラつかせても戻ってこなくなってしまう。呼ばれて戻っても飼い主は自分の欲求をいきなり封じたりはしないという姿勢を繰り返し犬に見せることが重要なのだ。

以下は僕が考える呼び戻し訓練のコツだ。

  • 犬を確実に呼び戻すためには、飼い主が犬に対して優しく頼りになる親の立場を確立する必要がある。
  • そのためには、普段の散歩から、脚側歩行を一定以上守れるように訓練する。
  • 十分な運動量の散歩を毎日朝夕行い、犬が疲れて帰ってきたら、犬に餌を与え休ませる。

*ここまでが、普段からやっておくべきことだ。

  • そして呼び戻し訓練では、呼ばれた犬が帰ってきたら、笑顔で戻ったことを大げさに褒め可愛がりご褒美を与える。
  • 帰ってきた犬をすぐに自由な状況に戻し、犬自身が欲する、他の犬との遊びや匂い取りに戻すことを繰り返す。

こうした訓練を根気良く続ければ、犬と飼い主の間に強固な親子関係が構築され、犬はいつでもどこでも、呼べば確実に帰ってくるようになるのだ。

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もうひとつ付け加えるなら、訓練が未完成の段階では「犬が戻れない時は呼ばない」と言うことになるだろう。犬が自分の探索欲求に従い、必死で何かの臭跡を追っているときは、その探索が一段落するまで待ってから呼び戻す。

そして写真のように犬が少し不安を感じて尻尾を下げ、飼い主を振り返り、アイコンタクトをとってきたようなタイミングが呼び戻しのベストなタイミングだ。そういうタイミングで呼べば、犬も喜んで召集に応じる。そんな風に犬の側の都合もきちんと考慮した鷹揚な飼い主であることも、犬を確実に呼び戻すポイントになると僕は考える。

 

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