飼い主が犬を捨てる理由(前半)

五十嵐廣幸

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オーストラリア、メルボルン

名前はヘクター、3歳のオスのラブラドールレトリーバー、色は黒。
ヘクターは子犬の時にブリーダーからRさんの元に来た。私はRさんと仕事場で会うと「散歩にいった?」と聞いたが彼女の返事は殆ど「行ってない」だった。Rさんは犬の散歩をしない飼い主だった。Rさんはパーティーやイベントごとが大好きで、おしゃれな生活を好む女性だった。そんなRさんは自分好みの物件を見つけ、その引越し先がペット不可だったこともあって犬を手放すことにした。

オーストラリアで犬を保護施設に連れて行く理由(※1)は、

  • 家を引っ越すから(引っ越し先がペット不可、庭が小さいなど)
  • 吠え声等がうるさくて近所迷惑になったから
  • フェンスの不備や、犬が庭に穴を掘るなどの理由で犬が脱走をするから
  • 恋人、夫婦関係の解消によって犬が不要になったから
  • 犬にかける時間がないから
  • 犬の衝動買い、犬が(その犬種が)が欲しくなかったプレゼントであったから
  • 生まれた子犬を欲しくなかった
  • 犬が増えすぎたから
  • 飼い主の健康問題
  • 犬の訓練不足、もしくは訓練をする時間がない、訓練をしたくないから

ヘクターはオーストラリアでの犬の放棄の典型的な一頭であるといえる。

カナダ、ケベック州

名前はモジョ、8歳オスのミックス犬。
Sさんはカナダでグルーマーの仕事をしている。常連さんがモジョをグルーミングに連れてきた。Sさんが「今日はどんな風にしましょうか?」と聞くとその飼い主は泣きながら「今までで一番素敵にしてあげて」と言った。6歳になるお子さんの犬のアレルギー症状が酷くなって苦しんでいるということだった。子供が大きくなればアレルギーにも強くなってるかもしれないと思い、今まで時間をかけてみたが症状は改善されなかった。飼い主は明日、モジョを施設に連れて行くことにした。犬を綺麗にして「早く良い飼い主に出会って欲しい」という思いだった。Sさんは地元の保護施設でボランティアとして活動していたこともあった。モジョは既に8歳、シニアに入るこの年齢だとレスキュー団体に受け入れてもらえない場合も多い。Sさん夫婦はモジョの里親探しを試みたが、モジョの年齢故それは容易ではなかった。Sさんご夫婦は犬の負担も考慮してモジョを新しい家族として迎え入れることに決めたのだ。

カナダ、ケベック州で犬を保護施設に連れて行く主な理由(※2)は、

  • 犬の問題行動
  • 人間のアレルギー
  • 子供が生まれるから
  • 時間と場所がないから
  • 引っ越しのため
  • 安価な去勢や避妊手術の施設やシステムがないこと
  • ペット可の物件が少ない
  • 市や自治体が専門家の意見や調査を無視してBSL(特定犬種禁止)条例を作ってしまった結果
  • ケベック州というフランス語圏である特殊な事情も大きく関係していて、文化歴史的なことから、フランス系カナダ人の社会では、動物に関して「もの」という感覚が強いということ

(Quebec being a francophone province the relationship between the english community and the french community is important. the french view the animals as a commodity for many the english community dogs and cats are member of the family)(回答文そのまま)

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モジョ

犬を飼おうと決めた時、犬を飼い始めた時に私たちは「この犬を手放すだろう」とは決して思わない。しかし結果としてヘクターやモジョの飼い主のように愛犬を手放すことが起こっている。

飼育放棄理由の一つでもある「問題のある犬」は実は飼い主側の主観や、飼い主の技量が犬に反映されているとも私は考えている。言い換えれば、同じ一頭の犬の行動でも見る人間によって「問題行動」とする人と、しない人がいるだろう。

「吠える」という行為を問題としている場合、私たち人間は「耳障り」ということでその行為を良くないものとしていることが多い。「近所迷惑になるから吠えちゃダメだ」は代表的な一つかもしれない。しかし不審者が近寄った事に対して吠えた場合には飼い主はその行為を問題にしないで逆に褒めたりする。だがフェンスの向こうで犬や猫が通って飼い犬が吠えると叱る。これは人間の主観や飼い主のストレス度合いによって「犬が問題行為をしている」と決めていないだろうか?

また靴をかじった、ソファーを壊したなどを「問題」としながらも、実はその行為の原因は犬の運動不足やストレスであることも十分考えられる。この場合も問題を作っているのは犬ではなく飼い主と言ってよいはずだ。犬に適切な運動と訓練を与え、脳を使わせ、本能を刺激するようなアクティビティを通じて彼らの生活は充実しているだろうか?日常生活や日頃のマンネリで犬は退屈していないか?と私たち飼い主は考える必要がある。

もう一つ大きな要因に、安易に犬を手に入れられる現状があることも「問題がある犬」を作り出しているといえる。オーストラリアやケベックでは地元ローカル紙やインターネットを通じての「犬売ります、買います」がある。ケベックではPuppy Millやペットショップがいまだに沢山ある。そこで社会化が欠けている犬を手に入れた結果、問題行動が出やすいのは明らかだ。

「問題のある犬」という一言だけでは、実は犬のどんな行動の何が問題なのか?と具体的な内容までは分からないというのが本音だ。だからこそ飼い主は、犬の行動に対してフェアなジャッジをするべきではないだろうか?

日本

さて日本の飼育放棄理由をみてみよう。
NPO法人ピースウインズ・ジャパンが犬の保護・譲渡活動を主軸として運営する「ピースワンコ・ジャパン」に取材したところ、直接飼い主から犬を引き取る理由で多いのは、

  1. 親が飼っていた犬
    これは高齢の親が飼っていた犬がいるが親が亡くなった、入院する、介護施設に入るなどで飼い主が犬が飼えない状況になったということ。親族は犬を引き取れないという理由
  2. 咬む犬
    家族の皆が犬から咬まれて、犬に触れないという理由
  3. 生活保護を受けるから
  4. 子供のアレルギー
    子供が生まれる前からいる犬に対して、子供にアレルギー反応が出た、医者が犬を飼うことを考えるべきと言われたことが理由

これらの理由が上位を占めるということだ。

"1.親が飼っていた犬"については、その子や親族は「なぜ自分の犬でもない、見たこともない犬の面倒をしなければならないのか?」そういう気持ちもあるかもしれない。または犬を飼える場所がないという事も考えられる。

"4.子供のアレルギー"はモジョとほぼ同じケースだろう。

この二つは、解決策を飼い主自ら見つけることができると思うのだ。

私たち飼い主は、犬の寿命の約15年間を考えて犬を飼い始めたりする。しかし飼い主自身の病気や突然の交通事故、体が不自由になった、また治療の為に長期の入院等が必要を考えて愛犬の引越し先を確保しておくことは飼い主としてやるべき一つではないだろうか?

オーストラリアにはCertificate of Identificationという登録書がある。これには私の住所、氏名、連絡先、犬の名前、性別、マイクロチップの番号、犬の色、犬種、私の犬の場合は、以前の保護施設の情報もある。そしてSecond contact's Detailsという欄には私以外の連絡先である友人の名前を記入してある。この用紙の役目は、犬の飼い主である私が死んだり、居所が掴めない状況になった時には、この第二コンタクトへ連絡される。私の友達は万が一私に何かあった場合、私の愛犬を引き取って面倒を見てくれることになっている。しかしSecond contact's Detailsに記載がない場合、犬は身元引き受け人なしで保護施設に連れて行かれることになってしまう。

ピースワンコの里親の申込書にも、このSecond contact's Detailsと同じ役割の飼い主以外の犬の引き取り先を記入する欄がある。犬の第二の保護者がいることは、自分の愛犬をシェルターに連れて行かないことを意味する。更にその犬種やその犬の個体を理解した人間であれば、犬にとってもストレスの軽減につながり次の幸せへの近道と考えられないだろうか?また「万が一の引っ越し先」が決まっても、一年に一度ぐらいは「まだ私の犬の面倒をみられるか?」ということを相手に確認をとることが良いだろう。

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ピースワンコ・ジャパン世田谷譲渡センターで里親を待つ犬たち

この続きは次回に。

※1、※2
オーストラリア、カナダ ケベック州の飼育放棄理由は筆者が直接動物保護施設に問い合わせて入手したデータを基に、日本語に翻訳しております。

【資料提供】
RSPCA Australia
Second contact's Details
Centre d'Adoption d'Animaux de Compagnie du Quebec
Society for the Prevention of Cruelty to Animals
ピースワンコ・ジャパン

 

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