バックヤードブリーダーを考える

ガニング亜紀

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(image from Clker-Free-Vector-Images )

アメリカにおけるペットの頭数過剰問題は、数十年に渡って解決策が模索され続けています。1970年代アニマルシェルターは持ち込まれた動物で溢れかえり、そのほとんどが殺処分となっていた最悪の時代でした。現在、様々な対策で殺処分率は低下しているとは言え、アメリカ全体では未だ持ち込まれた動物の約35%が殺処分となっています。(統計はアメリカ動物虐待防止協会より)

ペットの頭数過剰問題の元凶としてしばしば取り上げられ、法的な対策も整備されて来つつあるパピーミル(大規模な商業的繁殖施設)に比べ、なかなか対策が進まないもう一つの元凶はバックヤードブリーダーと呼ばれる素人の繁殖です。

バックヤードブリーダーの問題点、自治体が取っている対策を紹介したいと思います。

バックヤードブリーダーを直訳すると裏庭繁殖家。アメリカの裏庭は周囲を塀で囲まれて外から見えないようになっている構造が多いので、そこにケージや小屋を置いてこっそり犬の繁殖をする人というのが元々の意味ですが、小遣い稼ぎや楽しみのために犬を交配させる人も、うっかりアクシデントで子犬が産まれる状況を作ってしまった人も同じように呼ばれています。たいていの場合、好ましくない意味を込めて呼ばれ、特別に犬が好きというわけではない人たちから見ても良識ある行動とはされません。

バックヤードブリーダーの何が問題なのか

バックヤードブリーダーのまず大きな問題は「無計画なこと」です。きちんとした責任あるシリアスブリーダーなら、犬を交配させる前から予約を取って子犬の行き先を決めておきます。バックヤードブリーダーの場合、アクシデントで産まれてしまう場合は言うに及ばず、小遣い稼ぎや楽しみのために繁殖をしている人々も、子犬が産まれてからネットや新聞広告などで引き取り手を探し始めます。でも全ての子犬に引き取り手が見つからなかったら?繁殖させた人の家庭でも飼いきれなかったら?こういう事例が後を絶たず、悪びれもせずにアニマルシェルターに子犬を持ち込む人々がペットの頭数過剰問題に大きく影を落としています。

また別の大きな問題は「知識の欠如」です。犬の基本的な健康管理、遺伝疾患の知識、疾患ではなくても良識あるブリーダーなら繁殖から外すような気質、犬種のスタンダード、これらのことを何も知らず考えることもないままに繁殖をすることで、数の問題だけでなく犬の生活の質にまで悪影響を及ぼすことになります。無理な妊娠出産で体を壊したり命を落とすこともある母犬、遺伝疾患に苦しむことになる犬、難しい気質で飼い主から見放される犬、一番大きな犠牲を払わされることになるのはいつも動物です。

血統書の付いた純血種であるというのは、交配させて子犬を産ませても良いという条件ではありません。

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(image from Clker-Free-Vector-Images )

自治体の対応

残念ながら、現在のところアメリカでは連邦法から自治体の条例まで含めても、バックヤードブリーディングそのものを禁止する法律はありません。しかし多くの自治体で様々な規制を設けて、動物の繁殖をするには相当の覚悟がないとできないような仕組みを作っています。ロサンゼルス市を例にとって紹介いたしましょう。

ロサンゼルス市は、商業施設で繁殖された犬、猫、うさぎを店頭販売することを条例で禁じていますが、個人的な動物の売買や譲渡に関しては対象にしていません。その代わりに、個人での動物の繁殖を許可制とする規制を設けています。繁殖許可の内容は以下のようなものです。

  • ロサンゼルス市において犬または猫の繁殖をする全ての者は、所有者・一時預かり者・居住者・一時滞在者などのあらゆる条件に関わらず、あらかじめ繁殖許可を得なくてはならない。
  • 許可証の期限は1年間。引き続き繁殖をする場合は有効期限以前に更新をしなくてはならない。
  • 繁殖許可証の発行料金は235ドル。他に避妊去勢手術を行わない場合の登録料金100ドル/年が発生する(LA市の通常の登録料金は20ドル)
  • 繁殖許可を受けた家庭において許可証の有効期限内に許される出産回数は1回のみ。
  • 別途特別許可を受けた場合のみ、1年間で最高2回までの出産が認められるが、動物の健康を守る為最大限の注意を払う。
  • 産まれた子犬、子猫は生後8週齢に達するまで、販売・譲渡・交換など取引のために移動させてはならない。
  • 規定のワクチン接種が完了するまで、販売・譲渡をしてはならない。引渡しの際には、健康記録とワクチン接種の証明書類を添付する。
  • 販売・譲渡の広告には必ず繁殖許可証番号を記載する。購入者・引き取り者に対してはレシートに必ず繁殖許可証番号を記載する。
  • 販売・譲渡を行った場合は5日以内に、ロサンゼルス動物衛生局に動物の新しい所有者の氏名・住所・電話番号を届けなくてはならない。
  • これらの規則に違反した場合、初回250ドル、二回目以降1000ドルの罰金が課せられる。

この他に年間3匹以上の動物を販売する場合には州の販売許可証を取得しなくてはなりません。

このように個人が動物の繁殖を行うには、犬のこと以外の手間も経費もかかります。前述したような医学的な知識なども併せると、犬種の保存に情熱とプライドを持つシリアスブリーダーか、同等の覚悟のある人にしかできないことだと言えるでしょう。

行政がここまでバックヤードブリーダー対策に力を入れるのは、ペットの頭数過剰問題はペットオーナーだけではなく社会全体の問題だからです。アニマルシェルターで動物を殺処分するために税金が使われるのは納税者全員の損失です。

日本では個人が動物の繁殖をすることに関しての許可証や規制などはありません。私は日本にもこのような行政の規制はあってしかるべきだと思います。動物の繁殖は「かわいい愛犬の赤ちゃんが見たい」程度の気持でやるべきことではないし、犬が大切な家族だというなら、なおさらそのリスクの高さや責任の重さは周知徹底されなくてはいけません。

来る2017年は5年に一度の動物愛護法改正の年です。個人の意識に訴えるだけでは歯がゆい思いをするだけの問題も、法律が変われば違う方向に動きます。こんな方向からの殺処分減少のためのアプローチもあると知っていただければと思います。

【参考サイト】
Breeders Permit | Los Angeles Animal Services

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