犬を助けること、人を助けること

ガニング亜紀

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(photo via facebook.com/PawFund/ )

11月の半ば、毎年恒例のジェファーソン賞の受賞者が発表されました。ジェファーソン賞というのはAmerican Institute for Public Service(アメリカ公共奉仕協会。1972年、ジャクリーン・ケネディ・オナシス氏、ロバート・タフトJr.上院議員、サミュエル・ベアード氏により設立。)が、公益や地域のために奉仕する人々のノーベル賞のようなものを作ろうという趣旨で設立した賞です。1973年から様々な形で公共のために貢献してきた人々に授けられて来ています。今年は北カリフォルニアのベイエリア地区で、PAW FUND設立者で地域の動物のために活動を続けている女性ジル・ポウズナー氏が受賞者の一人となりました。ポウズナー氏の活動を紹介すると共に、彼女の視点や考え方を多くの方にご一考いただきたいと思います。

ポウズナー氏は写真家/劇作家であり、女性や同性愛者のための支援活動も続けてきたアクティビストでもあります。約15年前に個人でホームレスの人々が飼う動物のための支援活動を始め、その後2011年にはPAW FUNDという非営利団体を立ち上げました。PAW=Pets And Wellness(ペットと健康)の頭文字とpaw(犬や猫の肉球のついた足)をかけた素敵な名前です。

PAW FUNDの活動は、飼っている動物に必要なケアを与えることができないホームレスや低所得の人々に、ペットへの無料ワクチン接種・無料または低料金の避妊去勢手術・寄生虫駆除・マイクロチップ・その他の医療行為などを提供することです。これらの活動は動物とその飼い主を助けるだけでなく社会全体の利益になるというポウズナー氏の理念の下に行われています。ワクチン接種は地域に伝染病が広がることの予防になり、避妊去勢手術の提供は地元のシェルターに動物が持ち込まれて殺処分となることを防ぎます。動物を健康に保ち、迷子になっても飼い主の手に戻る手を打っておくことも、公衆衛生とシェルターへの持ち込みの対策になります。

しかしポウズナー氏自身も、15年前に活動を始める以前は「そんな状態でどうして動物を飼おうとするのか?」と思っていたと言います。けれど多くの人と会い、話をして触れ合ううちに彼女の考えも変わっていきました。「その人がどんな経済状態にあるかに関係なく犬や猫は彼らにとってのかけがえのないコンパニオンです。それにホームレスの人々が必ずしも悪い飼い主だというわけではない。彼らだって最良の飼い主になれる可能性があり、そうなれば社会にとってもプラスになります。」

安泰だと思っていた経済状態がやむを得ない事情で困窮してしまうことも珍しくはありません。思いがけない失業、家族の大病、事故や天災、そんな状態になった時に、ペットをシェルターに連れて行くことは人にとっても動物にとっても悲劇だし、公共の利益にもならない。寄付によって活動している非営利団体が手を貸すことでマイナスのサイクルを断ち切れるならwin-winじゃないかというわけです。

もちろん、動物を迎える前に経済的なことは考慮しておかなくてはいけないのですが、いま実際に困窮している人に「どうして先に考えておかなかったの」と責めるよりも、まずは助けの手をのべる。その上で適切な指導や啓蒙活動に移っていかなくては、相手は心を開いてくれません。そうやって信頼関係が築かれることで、正しい理念も指導もスッと受け入れられるのでしょう。

PAW FUNDはいくつかの場所で月に一度ずつ車両を使った移動クリニックで活動をしています。毎回、何十人もの人が長蛇の列を作り何時間も辛抱強く待っていますが、どうしても仕事を休めないとかクリニックの場所まで行く手段がないという人のためには、ボランティアの人々がペットの送り迎えを引き受けています。獣医師や獣看護師もボランティアです。PAW FUNDのサービスを受けるのに所得の証明などは必要ありません。「飼い主たちは自分のペットに十分な医療を受けさせてやれないことを情けなく思っているのに、その上お金がないことを証明しなさいなんてことは言えませんよ。全てのペットは飼い主がお金持ちだろうと貧乏だろうと、できる限り健康に過ごさなくてはいけないんです。」とポウズナー氏は言います。

この動画はポウズナー氏のジェファーソン賞の受賞を紹介するローカルニュースの映像で、同氏のインタビューと移動クリニックの様子が紹介されています。

インタビューの中でポウズナー氏は「私たちは"あ~今日は良いことをしたなあ、あ~うまく行ったなあ、あ~あの飼い主さんは自分のペットに何が必要かちゃんと理解してくれたなあ"と思いながら家に帰ります。」と述べています。彼女の言葉は嘘ではないと思いますが、当たり前ながらそれだけではない、辛い嫌な思いもやりきれない思いもたくさん味わっていることでしょう。けれどこんな風に口に出して自分たちを肯定することがエネルギーになっている気がします。

保護活動の中であまりにも多くのネガティブな経験を通して、人間不信になったり、人間への対応が必要以上に強くなっている例はたくさん目に入ってきます。無責任な飼い主や、犠牲になる動物を見て憤る気持ちは痛いほどに分かるのですが、それでもやはり動物保護に携わる方々が「北風」ではなくて「太陽」の対応ができれば、物事が良い方に回りやすくなるのではないでしょうか。本当にどうしようもない業者や虐待飼育に対しては毅然とした対応が必要ですが、誰かがそうだったからと言って次に目の前に現れた人も同じような悪人だというわけではない。当たり前のことなのですが、忘れられがちになっているように思えます。

犬を助けることと人を助けることは別々に切り離されたことではなくて、全部がつながっていることです。つながっていなくては犬のためにも人のためにもならないし、社会からも孤立してしまう。ジル・ポウズナーさんを見ていて、そんなことをずっと考えています。

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