家庭に迎えられる探知犬たち

ガニング亜紀

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(photo by skeeze )

この記事を準備するためにパソコンを立ち上げ、dog actuallyのサイトを開いてみた時のことです。その時にトップにあった藤田さんの記事「ワーキングドッグはペットになるか?」を見て「あらま!なんと奇遇なタイミング」と驚きました。そう、今日ご紹介するのはまさにワーキングドッグを家庭に迎えてくださいというアメリカ運輸保安庁の試みです。

空港で危険物などが持ち込まれていないかを探知する犬を見かけたことがある方も多いかと思います。アメリカではあの探知犬たちを管理するのはアメリカ運輸保安庁の仕事です。同庁では空港で働く爆発物探知犬の育成訓練も行っているのですが、訓練を受けた犬の全てが探知犬として働けるわけではありません。中にはこの任務への適性がないと認定される犬もいます。2015年11月、運輸保安庁ではそういう適性がないとされた犬の新しい飼い主を募集すると初めての一般告知をしました。

譲渡の対象となっているのは、爆発物探知犬の適性がないとされた犬と、探知犬の任務から引退した犬で、年齢は2~10歳。犬種はジャーマンショートヘアーポインター、ラブラドール、ジャーマンシェパード、ベルジアンマリノア。募集の告知の中で「譲渡対象の犬たちは使役犬として任務に就くために運輸保安庁に連れてこられた犬です。これらの犬種は指示された作業への熱意という特性の故に選ばれています。したがって彼らは大変に活発な犬種です。犬たちの中には、とても良く訓練された者もそうではない者もいます。運輸保安庁では犬たちは犬舎で生活しており、一般の家庭の環境には馴染みがありません。」と説明されており、"良く訓練されて何でもいうことを聞く賢い犬がやって来る!"という幻想を抱かないでくださいよとあらかじめ釘を刺している感じが伺えます。

引退探知犬または元探知犬候補を家庭に迎える場合、譲渡手数料などはかかりません。ただし運輸保安庁が犬たちを訓練しているテキサス州サンアントニオ市の施設まで犬を迎えに来ることが条件です。輸送にかかる費用なども全て新しい飼い主の自己負担となります。

この告知は去年の11月のもので、現在は一般家庭への譲渡はラブラドールのみに限られていることから、やはり途中で軌道修正があったようです。希望者が記入する申込書には、家族全員の職業と勤務時間、所有している自動車のタイプ、庭や家の周囲のフェンスについてなどの項目の他に、旅行や緊急時の犬の預かり先、犬を希望した動機、犬の飼育経験、あなたにとっての犬の問題行動とは何か、と言った質問が並びます。

過去または現在他のペットと暮らしている場合には、かかりつけの獣医師に医療記録の請求をしても良いか?といった項目もあり、審査はなかなか厳しいようです。

Explosive detection dog, CBP

By Gerald Nino/CBP [Public domain], via Wikimedia Commons

「◯◯のようです」という推測ばかりで恐縮なのですが、国防や警備に関わる公的機関ですので公開されている情報が里親希望者への必要最低限のものしかないのです。しかし同じように適性の問題で家庭犬として譲渡される元盲導犬候補たちや、引退した軍用犬たちに希望者が殺到することを考えると、元探知犬候補の犬を家庭に迎えるのも、かなり狭き門であることは想像できます。

同じように働く犬であっても、警察犬は引退後も担当ハンドラーまたは引退ハンドラーへの譲渡しか許されていません。引退軍用犬に関しても、襲撃訓練を受けた犬は一般家庭への譲渡は許されておらず、他の犬の希望者への審査も相当に厳しいものです。

テロへの警戒や危機感が日に日に高くなる現在、爆発物探知犬の育成の重要性も以前よりも高くなり、運輸保安庁には毎年200頭以上の犬が探知犬候補としてやって来ます。その過程では当然「適性がない」として外される犬や引退犬もたくさん出てきます。そういう犬たちに家庭犬としての新しい犬生があると言うのは良いことですし、何より犬を引き受ける人間の方に厳しい基準を設けているのは正しいことだと感じます。

しばしば見受けられる間違いですが、職業犬になるような犬種は何の訓練もしなくても人間の言うことをよく聞き、扱いやすいのだと思っている人は意外に沢山います。そこまでではなくても、一旦プロの手で訓練を受けた犬は、その後も何のフォローアップもしなくても一生従順で問題など起こさないという誤解もよく見聞きします。家庭に迎える犬の選択肢に引退職業犬や元職業犬候補が加わり認知されることで、そのような誤認識を減らしていく一助になって欲しいと心から思います。でも何よりも心から望むのは、人間のために働いたり訓練を受けて来た犬が残りの犬生を楽しく幸せに過ごしてくれることです。

【参考サイト】
TSA seeking people to adopt dogs who have retired of have not mastered the explosives training skills required to work for TSA

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