子犬の社会化はどこまで?ジャックラッセルテリア飼育奮闘記(39)

史嶋桂

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_1273793.jpg これは新たにジャックラッセルテリアの仔犬を飼った飼い主さんからよく聞かれる質問だ。 「仔犬には社会化が大切だというけど、一体どこまで社会化すればよいの?」 僕は可能な限り、広く、深く、と答えるようにしている。ただし犬の器量の範囲で、という前提条件をつけての話だ。

なぜこの犬種には、広く深く社会化が必要だと僕が考えているか?

ジャックラッセルテリアは咬傷事故という視点からみると、小型犬にも関わらず、圧倒的に加害者になりやすい犬種の一つだからだ。テリアはそもそも社会化を怠ると排他的になりやすい。だが現代の日本ではわざわざ犬を番犬として排他的に育てる必要などないだろう。

犬対犬の社会化では、自分の飼った犬が他の犬を恐れるそぶりを見せないなら、できるだけ多くの犬種、できるだけ幅広い年齢層の犬たちと直接会わせて挨拶をさせ、可能なら取っ組み合い遊びをさせてもらい社会化を進めるべきだと考えている。

一方、この犬種専門のブリーダーさんの中には、ジャックラッセルテリアはそういう飼い方に向かないと言う方もいる。あるいは親兄弟との間で十分な社会化を済ませてあるから、それ以上の社会化は急ぐ必要がないというブリーダーさんもいる。

そういう意見も一理あるとは思うが、僕は東京の都市部で犬を飼い続けている。そうした犬が過密な環境では、社会化は二段階で進めるべきだと思うのだ。

一段階目はブリーダーさんの元で母親と兄弟姉妹と過ごす生後2~3か月の間に行われるべき、家族内での社会化だ。子犬はこの社会化によって初期の「社会的攻撃抑制」を身に着ける必要がある。いわゆる「甘咬み」が出来るように育てるわけだ。犬の飼養数が少ない地域なら、これさえできていればあとは応用の範囲でなんとかなるはずだ。

しかし日本という国は15歳以下の人口より犬猫の方が多いペット大国だ。都市部で犬を飼えば、人も犬も多く、刺激も多い環境そのものが最初のハードルになる。だから犬がたくさんいる市街地で犬を飼う場合、二段階目の社会化が必須になる。なぜなら、毎日の散歩でよその犬に会わずに済ませることなどできないからだ。よその犬に出会うたびに、吠えたり、攻撃的に振舞う犬、なにか大きな音や声がするたびにビクつく犬では、散歩だってやりにくくて仕方ないだろう。

そういう地域で重要なのは新しい飼い主さんの家に引き取られ、その家の環境に慣れたあたりで始める第二の社会化と言うわけだ。

僕は第二の社会化は次のような順序で進めるべきだと考えている。

  • 犬が暮らす家そのものと近隣環境への馴致
  • 隣近所に住んでいる犬とその飼い主を対象とした社会化
  • その子犬が将来接するであろう、あらゆる社会環境と犬と人への社会化
  • かかりつけの獣医さんへの社会化

ジャックラッセルテリアは活発すぎて怪我をする子もいるので、将来犬がお世話になる獣医師に牙をむくような犬では困る。そのためには治療とは無関係に頻繁に獣医さんを訪問し獣医さんや看護師さんに可愛がってもらい、いつでもどこでも獣医さんが触れるようにしておくのがお勧めだ。

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ただしジャックラッセルテリアといえども、中には例外的に臆病な犬、形質的な面で問題がある犬もいる。特に未熟児で生まれ、人工的な保育を受けた犬は母親の初乳から十分な免疫を受け取っていない場合がある。こうした犬は性質的にも体質的にも弱いので無理は禁物だ。

また他の犬とすぐに仲良くできない犬も要注意だ。だから自分の犬が初対面の犬を怖がるような性格なら、絶対に無理強いをしてはいけない。保護犬を飼うときもそうだが、そういう犬には、ゆっくり少しずつ環境馴致を含め、近隣の犬と人の社会への社会化を行う必要があるのだ。

もう一つ、社会化の際に注意が必要な犬種というのもいる。例えば視覚猟犬、いわゆるサイトハウンドと呼ばれる犬たちだ。

一般的な犬は視覚より嗅覚にたよって、相対した相手の素性を探ろうとする。だから犬の匂いのする相手を獲物と誤認する確率は低い。しかしサイトハウンドは脚の早い獲物を視覚に頼って長距離追跡してしとめる=殺すことを目的として育種された犬種のため、こちらの犬が、まだ犬らしいふるまいをきちんと見せられない幼犬だと、最悪獲物と誤認され襲撃されることがありうる。

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もちろん写真のサイトハウンドのように飼い主さんがきちんと訓練を通じた社会化を行い、あらゆる犬種を身内とみなすような犬に育てていれば問題はない。しかし現実問題として、そこまで完璧な犬対犬での社会化が完成した犬は少ないのが日本の現状だ。

なんでこんな事を書くかというと、マイロはあるスキー場の駐車場で出会ったボルゾイにいきなり襲われたことがあるのだ。幸いボルゾイの牙はマイロが着ていたカッパの上を滑ったので彼女は傷一つ追わなかった。マイロの方も悲鳴一つ上げることは無かった。

しかし>3匹のボルゾイを連れた飼い主の女性は、雪の積もった駐車場で自分の犬たちに引き倒され、マイロに襲い掛かった犬たちを止めることさえ出来なかった。その経験から僕はサイトハウンドについては、相手の飼い主がOKを出しても、マイロを近づけるかどうかは自分で判断するようになった。ボルゾイからみたら、仔犬時代のマイロはウサギ大の手頃な獲物に見えても仕方ないと思ったからだ。

では自分の犬を咬傷事故の被害者にしないためにはどうすればよいか?

僕はこれも可能な限り幅広い社会化を自分の犬に施すことが一つの解だと考えている。

どのような相手でも、臆せずに犬らしく挨拶して、自分はフレンドリーな犬だと明確に示せる犬なら、そうした特殊な性癖を持つ犬、社会化不十分な犬でも襲われる確率を低くできるからだ。

もちろんこれは、飼い主を引きずるようにして散歩している大型犬、散歩の間中、伸びるリードで自由に走り回っている犬には通用しない。飼い主が制御できていない犬、飼い主に制御する意思がない犬の場合は、自分の犬の社会化の対象とはなり得ない可能性が高いからだ。

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では子犬時代の社会化はどのように進めればよいのか?

僕は飼い始めたばかりのジャックラッセルテリアの子犬マイロが、狼犬の教育的指導のおかげで、よその犬や人をいきなり咬むことがなくなってから、毎日近所の犬が集まる広場にマイロをつれて行き、許しを得て複数の大型犬と遊ばせて貰った。さらに毎週末は駒沢公園のドッグランにも連れて行き、様々な犬たちと遊ばせた。

マイロは前述の定義でいうと、そこそこ器量のある犬、あらゆる犬を怖がらない子犬だったが、まずいことに態度が大きすぎた。彼女はどんな犬が相手でも四肢を踏ん張り、頭を高く上げて挨拶した。こういう犬の場合、下位の挨拶が下手なので、相手が臆病な犬だと「なんか怖い」という印象を相手に与えてしまうため、飼い主である僕がいつでもマイロを止められるようについて回った。

幸い同じジャックラッセルテリア同士の場合を除き問題は生じなかった。

むしろ同じ犬種同士でガウガウ声を伴う「取っ組み合い遊び」を始めてしまうことが問題だった。駒沢のドッグランは近隣の一般家庭への騒音に対する規定があり、吠え続ける犬は退場しなくてはならないからだ。

幸か不幸かマイロと他のジャックラッセルテリアのガウガウ遊びは、多くの場合、遠くまで通るような吠え声を発することがなかったので、その点では大きな問題は生じなかった。

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二匹目のジャンは、ペットショップが彼を仕入れた直後に発症した疥癬のせいで、ペットの量販店の付属病院で、不特定多数の犬たちと一緒に過ごし、店頭に移されてからも売れ残り犬として大部屋暮らしを送っていた。そのおかげでマイロとはくらべものにならないくらい、犬対犬での社会化が進んでいた。もし彼が最初から健康な仔犬だったら、マイロのようになってしまっただろうと考えると皮肉なものだ。

初めて駒沢のドッグランに行ったときも、ジャンは自主的にランの中のあらゆる犬たちに下位の挨拶をして回り、ほとんどの犬に受け入れられた。小型犬にとって鬼門であるサイトハウンドも問題なかった。こういう器量がある犬はたとえ売れ残り犬でも飼いやすいものだ。

僕はジャンが一歳を過ぎてからは、公園でのカブトムシ虫取りからスキー場での雪遊びまで、普段の生活でも犬を連れて行ける場所なら、買い物やカフェでの飲食などあらゆる所にマイロとジャンを連れていった。自転車の籠に乗せての移動はもちろん、クルマのシートやカーゴスペースでの長距離移動にも徐々に慣らしていった。

ジャンはクルマや自転車で行った先に楽しい遊び場所があると理解すると、クルマでのお出かけをことのほか楽しみにするようになった。

そんな風に乗り物に慣らすのも、行った先で行儀良く過ごすのも、社会化の課題と言えるだろう。飼い主がでかける先、あらゆる環境に対する馴致も、犬が人間と犬の社会で支障なく暮らしていくための大切な社会化の対象なのだ。

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ただし引き取ったばかりの仔犬や保護犬の場合は、まず飼い主家族とその家の環境、さらに周辺環境と近隣の住民と飼い犬への社会化が最優先されるべきなのは言うまでもない。いずれにしても初対面ですぐ懐くフレンドリーな犬なら、誰にでもすぐ受け入れてもらえるはずだ。そのため仔犬には広く、深い社会化が欠かせないと僕は思うのだ。

 

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