犬と飼い主の関係をもっと良くするには?スワレからやり直そう

史嶋桂

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今まで50年以上犬と付き合ってきて、たくさんの犬の飼い主さんと話してみて感じたこと。自分の犬との関係を改善したいと思っている飼い主さんは意外なほど多かった。もちろんそのほとんどは普通の家庭犬だ。もっと自分の犬に良い子になって欲しい、飼い主の言うことを素直に聞いて欲しい。でも犬は犬だから、今以上は無理なのではないか?そう思っている飼い主さんも多かった。でも本当にそうだろうか?写真は分離不安を抱え、独りで座って待てができなかったジャンを私鉄の駅頭で訓練しているところ。著しい分離不安があっても彼は訓練を通じてそれを乗り越えることができた。

具体的なお話を伺うと、訓練教室に通ったり、トレーナーをつけたりしたのに、自分の犬の反応がいまいちだと感じている飼い主さんが多かった。飼い主さんのほとんどは、それを犬のせいにして、この犬種はもともとそういう性質だからとか、訓練向きの血統ではないから、あるいは成犬になって飼いはじめたからとか、様々な理由をつけて、犬との意思疎通の改善に諦め気味のことが多かった。極端な例では、家の犬は先生(訓練士)の言うことは良く聞くのに、飼い主の言うことはさっぱり聞かないと言う話もよく耳にした。

でも本当にそれは犬のせいなのだろうか?

僕は違うと思う。

実はそういう飼い主さんの行動を見ていると必ず共通する点がある。それは犬に飼い主の意図を理解してもらう方法が良くわかっていない様に見えることだ。そして犬に対する態度が曖昧なことも多かった。

僕はこの問題を改善するには、犬が飼い主の働きかけ、言い方は様々だが、命令、指示、キュー等、を理解できたか確認し、次に犬が飼い主に従うことで利益を得たことを犬自身が学習したかまでをチェックし、それを訓練にフィードバックする必要があると考えている。

その改善には、スワレを徹底してやり直すのがお勧めだ。飼い主が、視府・声符の提示を行い、犬の反応を観察して、できたら報奨を与える、という一連の訓練過程を根気良く繰り返し、自分の行動と犬の反応を客観的に観察し、犬の反応がもっとも良くなるまで自分の行動の修正を繰り返すのだ。

これはある意味、飼い主の自主訓練とも言える。

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あるいは飼い主の側が犬の自主的な行動を観察し、犬が自主的に行った事でも、それが望ましい行動なら、飼い主の意図にそってやった事にしてしまう、と言う手もある。

具体的には犬がたまたまやったことを褒める、と言うところから始める。僕はジャックラッセルテリアのマイロに、この方法でスワレを教えた。理由はマイロが補助動作を一切受け付けない厄介な性癖を持つ犬だったからだ。

一方のジャン(写真の犬)は、補助動作を嫌うのは同じだったが、マイロが一年かけて覚えた基礎服従訓練を横から見ているだけで、わずか一週間でほぼ覚えてしまった。つまり訓練難易度が高いとされるジャックラッセルテリアという犬種は、訓練された犬の模倣をさせれば短期間で訓練が入る可能性が高いわけだ。

補助動作に従うような素直な犬ならもっと簡単だ。犬にスワレと声符(声の指示)を出しながら、犬の腰を押し下げ、首を少し持ち上げスワレの姿勢を取らせればよい。

犬が自主的でも多少逆らっても座ったら 「ヨシヨシ、スワレ」 と笑顔で大げさに誉めて餌の報酬を与える。

ここで大切なのは何がヨシヨシだったのか、確実に犬に覚えてもらうことだ。

だから変な言い方だけど既に座っている犬をヨシヨシ、スワレと背中を撫でながら褒めるのだ。

その事で犬は声符と自分の行動を関連付け、飼い主になんと言われて、自分がどんな行動をとったら褒められたかを理解し易くなる。

さらに犬は人間の笑顔を、犬がリラックスしている時の表情と同等に捉える。

あるいは良い意味で、自分と同じ感情に基づく表情だと誤解している。

人間も口を横に広く薄く開いた犬の表情を、人間の笑顔のように捉える。

人によっては犬を擬人化して、それが犬の笑顔だと言う人もいる。

人間も犬の表情を人間の表情に置き換えて良い意味で誤解しているわけだが、それは別に構わない。誤解または勘違いでもお互いに似たような感情に根ざした表情であるのはかわりないからだ。

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だから、犬が望ましい行動を見せた時、飼い主は犬をきちんと笑顔で誉めるべきだ。

必ずしも声符に従った時だけでなくても良い。

犬が勝手に取った行動でも望ましい行動なら笑顔で毎回ヨシヨシ・イイコと褒めるのだ。

さらに餌の報酬は多少後回しでも良い。

良くポジティブトレーニングだからとすばやく餌を与えることにばかりこだわる飼い主さんがいるが、犬の反射神経は人間よりずっと優れていて反応も早い。だから犬にとっては、飼い主がすばやく餌を差し出しても、ゆっくり差し出しても大きな差はない。

むしろ犬は人間の表情や態度の変化を視覚と聴覚で人間よりすばやく捉える。

だから飼い主が餌を出すことを急ぐあまり、笑顔と褒め言葉=訓練のもっとも大切な報酬を省いてしまうほうが問題なのだ。

最悪の場合、犬は餌だけに反応するようになってしまう。これでは本末転倒だ。

また犬の視覚は人間と異なり、コントラスト優先で動きを捉えることに長けている。

彼らの視覚はおそらく単色のコントラストが強いもので、人間のように多彩な色や詳細な構造は捉えることが出来ない。

だが動き=例えば飼い主が取り澄まして声符を出した時の表情から、ヨシヨシ・スワレと笑顔で褒めたときの表情の変化にはずっと敏感だ。

この表情の変化を捉える犬の観察力は、祖先のオオカミが群れの中でコミュニケーションを取るために、お互いに視線をかわし、その表情の変化や仕草で相互に意図を組み取り合うことで培われたものだ。

オオカミの研究者は、よく彼らの表情の変化を百面相にたとえる。そのくらいオオカミたちは表情の変化が豊かで、表情の変化を使ってお互いに意思と感情を伝え合うことが出来る。

犬の飼い主である人間も本来は表情豊かな類人猿の末裔だ。だからそれを利用して自分の感情の変化=犬が言うことを聞いてくれた、と言う喜びを笑顔で犬に伝えるべきなのだ。

大切なことなので繰り返す。犬は相手の表情や仕草から、相手の感情の変化を読むのに長けた生き物だ。

だから飼い主は訓練の最中、たとえ犬が自分の意図に沿わないことをしても、不安な表情を見せてはいけない。犬が言うことを聞いてくれないときに犬を無視したり、残念そうな表情を見せるのはいい。だが間違っても犬の吠え声や唸り声等攻撃的な態度にひるむようなことは絶対にあってはならない。

なぜなら犬は異種である飼い主のネガティブな表情や仕草にも敏感に反応するからだ。

飼い主がちょっとでも犬を怖がれば、犬は自分が強い態度で出れば飼い主が折れてくれると望ましくない学習をしてしまう。また極端に臆病な犬なら、自分を恐れた飼い主が反撃として自分を攻撃するかも知れないと不安を感じることもありうる。

だから良い意味で飼い主の表情変化をうまく犬に読ませる=覚えさせるには条件がある。それは飼い主の表情や仕草の変化が、犬の利益に繋がる経験を繰り返させるということだ。

すでに訓練を始めて、少しでも飼い主とコミュニケーションが取れるようになった犬は、飼い主からスワレと視符(仕草の指示)と声符(言葉の指示)を出され、自分がスワレに従った時の飼い主の反応をまず見る。

飼い主に笑顔で大げさにヨシヨシ・スワレと褒められ、その後ご褒美の餌がもらえれば、スワレの視符と声符と自分の座る行動とセットで、つまりは飼い主の笑顔と褒め言葉と餌の報酬をスワレの声符と視符に関連付けて学習することになる。

この関連付け学習が次第に強化されていけば、犬は自主的に飼い主の顔を見て、アイコンタクトを求め、飼い主の視符や声符に注目するようになって行く。

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そして声符と視符を出し続け、犬がそれに毎回従い、笑顔と褒め言葉と餌をもらい続けた犬は、やがて一連の報酬(笑顔と褒め言葉と餌)を期待して自ら飼い主の足下にやってきてスワレの姿勢を取ることさえ始める。

ここまで関連学習が完成すれば、次の課題に進んでもすぐに犬はその課題を学習できるだろう。

だから基本中の基本であるスワレの訓練は最初に確実に完成させなくてはならない。訓練がうまく行かないと悩む飼い主さんは是非スワレからやり直していただきたい。ポイントは犬が近くにいても遠くにいても、スワレの声符・視符で停座姿勢になるまで訓練することだ。

もう一つ飼い主が認識すべきなのは、犬の聴覚が人間より優れ、人間が通常発することが出来る声の周波数はすべて捉えることが出来るのに、子音の方は理解できないと言うことだ。だから飼い主が 「ヨシヨシ、スワレ」 と笑顔で犬を褒めても、飼い主の褒め言葉は犬にはこんな風に聞こえるのかも知れない。

「オイオイ、ウアエ」

彼らはフォルマントと抑揚で飼い主の声を聞いており子音は理解出来ない。だから飼い主は犬に声符を出すとき、褒めるときは滑舌良くはっきりとしたイントネーションで声に出さねばならない。ただし犬の聴覚は優れているので大声を出す必要はない。むしろ犬に聞き取れる範囲で小さい声の方が犬も声符を聞き取ろうと集中しやすくなる。そして自信ありげな声色の方が、自信なさげな声音より、犬に好まれることも覚えておいたほうが良い。

もう一つのポイントは報酬である餌の与え方だ。慌てて餌を差し出す必要はないと先に述べた。

むしろ犬にある姿勢をとらせ続けるには 笑顔+褒め言葉 の少し後のタイミングで餌を与えた方が良い場合もある。

犬はスワレと言われ、飼い主に笑顔で褒めてもらった後に餌を貰うことになる。

その間、犬は座った姿勢のまま餌を待つことになり、自然とスワレ・マテへの対応が可能になっていく。

そんな風に犬と飼い主の関係改善は、飼い主が犬を徹底的に観察するところから始め、飼い主側の曖昧な行動を根気良く排除し、犬の反応を次の訓練にフィードバックしながら進めれば必ず改善する。ただし、課題によっては時間がかかることもあると覚悟しよう。大切なのは諦めないこと、一つの方法にこだわらないこと、うまく行った方法は徹底的に繰り返すこと、そうすれば最後はきっとうまく行く。それが犬と飼い主の関係改善に繋がると僕は考えている。

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