「日本と海外の動物法を徹底比較する」シンポジウムレポート(6)

尾形聡子

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これまで5回にわたり、『日本と海外の動物法を徹底比較する』シンポジウムレポートをお伝えしてきました。6回目の今回より、プログラム第2部のパネルディスカッションをご紹介したいと思います。

次回の法改正に向けてすでにさまざまな課題が挙げられている中からパネルディスカッションの議題として取り上げられたのは、 "業者規制制度"と"虐待防止制度"についてでした。パネリストはこれまでレポートでお伝えしました5名の方々にくわえ、コーディネーターとして、動物の法律問題について幅広く関わられている弁護士の細川敦史さんが、さらに、ひとつめの議題には『犬を殺すのは誰か ペット流通の闇』の著者としても知られる朝日新聞社の太田匡彦さんが、ふたつめの議題には女優で公益財団法人動物環境・福祉協会Evaを設立した杉本彩さんが参加されました。特別ゲストとして、料理研究家で元衆議院議員の藤野真紀子さん、東京都議会議員の塩村あやかさんも参加して、2時間半にもおよぶ議論がかわされました。

第2部:パネルディスカッション『日本と海外の動物法を徹底比較する』

議題(1) 業者規制制度を徹底比較

細川さん:「犬猫の殺処分ゼロを目指す動きが活発になっていますが、ゼロになったあとにすべきことがたくさんあります。また、一部ペット業者による大量遺棄事件などが起きていますが、ペット業者の方々が飼い主となる人に適正な教育指導をしていけるようになることが、全体的な動物の福祉の発展へと繋がっていくはずです。そういう観点から、やはり、業者を規制する制度を抜きにすることはできないと考えています。」

太田さん:「今回は、大量遺棄事件を起こすような悪徳業者を、日本、自治体、そして日本人として、放置しておいていいのかということを議論する場です。殺処分を減らすということと、悪質な業者を規制しなくてはならないということは、動物福祉という観点からすると並列の関係であって、並行して考えていかなくてはならないと思っています。

日本で動物販売業をしている業者にはいくつかの業態があります。いわゆるブリーダーと呼ばれる優良な方々、繁殖業者、パピーミル、競り市、卸業、そのようなところからペットを仕入れて販売する生体小売業者があります。皆さんがいうペットショップは、最後の生体小売業者のことになります。生体小売業のビジネスがここまで発展した日本は、世界的に見ると極めて異例といいますか、異常ともいえると思います。このような小売業者がペットを仕入れる必要があるために、競り市(ペットオークション)というものが存在しています。そして、競り市があるために、パピーミルが存在できている、ということになっているのです。このような状況の中で、昨年、犬の大量遺棄事件が全国で相次いで起こりました。これらを受けて改めて、業者への規制強化をするべきではないか、と考えていこうということです。」

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今回のパネルディスカッションでコーディネーターをされた弁護士の細川敦史さん。

登録制か、許可制か

山口さん:「英国での動物取扱業者は認可制(ライセンス制)になっています。更新は1年ごとです。ライセンス更新の前には必ず査察が入り、そこで適正飼養がなされていない場合には、基準を満たすよう改善命令がだされます。改善されなければもちろんライセンスはおりません。」

渋谷さん:「日本も登録制から許可制にという動きがありますが、審査基準がどの程度のものになるのかという点が重要だと思っています。ですので、現行法の登録制の中にそのような審査基準を組み入れることになるか、もしくは、名前もかえて審査基準をしっかりと明記した許可制とするか、いずれかにしたいと考えています。」

吉田さん:「登録制か許可制かは、法律上の扱いにおいて決定的な違いがあります。基本的に職業の自由、経済活動の自由を原則にするのが最初に制定された届出制であり、それに続いての登録制です。全部いったん禁止ということにして、ある一定の条件を満たす場合のみ、禁止を解いてそれを認めるというのが許可制、免許制になります。現在の日本での動物取扱業は登録制でありながらも条件をかなり厳しくしているため、実際には許可制にかなり近いという説明があるのですが、それならばなぜ許可制にしないのか?ということにもなってきます。この点はとても重要な考えどころであり課題であると考えています。一般的に禁止にしてしまえば、その後のいろいろな作業はやりやすくなります。ただし禁止する段階で、なぜこの業態について禁止しなくてはならないのか、ということについての説明は、かなり丁寧にする必要があります。」

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料理研究家で元衆議院議員の藤野真紀子さんが代表理事を務めるTOKYO ZEROキャンペーンでは、2020年の東京オリンピック・パラリンピックという節目に向けて限りなく殺処分の数をゼロに近づけたいという志を持って活動が行われています。

8週齢規制と飼育施設規制

太田さん:「8週齢規制は、悪質な業者を規制するための大きな一手だと考えています。もちろん大前提にあるのは、幼すぎる子犬を産まれた環境から引き離すことにおける問題、つまり動物福祉の問題です。一方で、今の生体小売業者は年間2万、3万頭という在庫を抱えての商売をしています。とにかく早く子犬を売らなくてはならないというのがビジネスモデルの根幹としてあるのですが、そこに対して、生後56日までは生まれた環境から子犬を引き離してはいけないという8週齢規制を入れることにより、ビジネスモデルに変革をうながすことになると考えています。もうひとつ、大量にペットを消費するということの裏舞台にある競り市および大量生産の現場に対しても、変革をうながしていけることになるとも考えています。

また、8週齢規制を入れるということは、子犬を長い期間パピーミルにおいておくことになります。それまで36日ほどで出荷されていた子犬たちを56日までおかなくてはならなくなることで、今までの飼養管理の仕方では、当然多大な問題が生じてくることになります。そうなると、そこに対して新たに政省令を改正するなど飼養管理の基準を入れていくきっかけとなり、業者への規制もうまく進んでいくのではないかと考えられます。もちろん規制を入れればいいだけではなく、どうやって守らせていくかについては冷静に知恵を絞っていかなくてはならない課題と考えます。」

藤野さん:「8週齢規制につきましては、目安として(改正動物愛護法の施行から5年が経過した)平成30年9月までには方向性がつくはずだと思います。また、業者に対するマイクロチップの義務化と8週齢規制をセットで実現しようという気運が出てきています。そのためにも、官民一体となってそれを後押ししていきたいと思っています。」

細川さん:「8週齢規制をすることで、生年月日をごまかす業者がでてくるだろうという問題点などもありますが、8週齢規制は日数の問題から飼育施設の数値規制にシフトしてきているという実感があります。子犬時代は母犬とともに過ごしなさい、ということから、親子で過ごす施設がどんなところであるべきかというところへ移ってきているということです。生活環境が悪ければ、そこで過ごす期間が長くなるほど辛い時期も長くなってしまうことが考えられるからです。実際に、飼育施設について具体的な数値で規制をしましょうという話は、前回の法改正でも議論の対象となっていました。」

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東京都議会議員の塩村あやかさんからも、現在関わっている案件についての報告がありました。

塩村さん:「実際に私が関わっている案件なのですが、狭いケージの中に3,4頭の子犬が入れられていたり、毛が抜け落ちて皮膚病になっていたりと、誰がみてもひどい状態で飼育しているペットショップが存在しています。なぜこの店が営業を続けてこられたのかと不思議に思うほどに悲惨な状態です。行政の方へ調査をするように申し出たのですが、やはり、すぐには処分ができないのです。最初に申し出てからもうすぐ1年ほどになります。週に何度も行政とやり取りをしながら進めているのですが、なかなか一足飛びにはいきません。それはやはり、ケージの大きさなどが数値で定められていないため、その中に何頭入っていようとも虐待とはなかなか言いにくい、という面があるからです。ある程度の数値規制を入れていかないと行政側としても動きにくく、とにかく時間ばかりかかってしまうということが、今回の件を通じてわかりました。」

渋谷さん:「数値規制については、特に行政の方からの要望がありますね。実際に行政の方が査察に行ったときに、客観的な基準があれば、その数値を超えているから虐待ですよと言いやすい、といわれています。数値規制は前回の改正の際の議論の対象となりましたが、反面、動物にはいろいろな種類がいて大きさもさまざまですので、それぞれの動物に対して虐待のラインを決める数値そのものを決めることは非常に難しいとされました。」

山口さん:「何らかの基準がないと、指導がとてもしにくいと思います。ただし英国の場合は、数値が入っている法令もありますが、数値の入っていない法令もあります。明らかな数値が入っていない場合、たとえばケージの中に動物がいる場合には、"5つのニーズ"に基づいて動物が必要とする状態でいられないような大きさや環境ではダメです、というような書き方がされており、基準が出されています。そして先ほども触れられていましたが、8週齢規制は飼育管理基準と抱き合わせにしない限り、本来犬に必要とされる福祉は守ることができないと思っています。」

太田さん:「やはり、8週齢(56日)規制をする段階では飼養施設の規制は必ずつくらなくてはなりません。56日に向け、2016年9月には今の45日から49日齢規制になります。繁殖の場に置かれている犬たち、売られる現場にいる犬たちの福祉が、このタイミングで向上するどころか低下する可能性があります。そこに向けて、ケージの大きさなど飼養施設の規制、そして雌犬の繁殖回数の制限などに関してどのようにしていくのか準備をしはじめなくてはならない時期に入っていると思います。」

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