「日本と海外の動物法を徹底比較する」シンポジウムレポート(5)

尾形聡子

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『日本と海外の動物法を徹底比較する』シンポジウムレポートの5回目は、弁護士で司法書士の渋谷寛さんから我が国日本の動物愛護管理法についてのお話でした。渋谷さんは、東京で渋谷総合法律事務所所長を務めるかたわら、ペット法学会、農林水産省・環境省ペットフードの安全確保に関する研究会委員やヤマザキ学園大学の講師、某雑誌でのペットに関する法律相談の話し手など、動物に関する法律において幅広くご活躍されています。

また、実際に2012年の動物愛護管理法の法改正では、環境省の中央環境審議会動物愛護部会動物愛護管理のあり方検討小委員会の委員として携わられたそうです。非常に限られた時間の中でしたが、前回の動物愛護管理法の法改正での変更点や、諸外国との動物法の違いについての説明がありました。

「日本の憲法には動物に関する規定はまったくありません。憲法改正への流れの中で環境問題については見ていこうとする話はでていますが、動物に関してはどうかというと、まだそれほど深まっていないというのが現状です。」

日本でもっとも基本となる法律は憲法です。その憲法に動物に関する文言がないならば、憲法に続く法律においてはどのようになっているのでしょうか。

「憲法の次に重要なのが、国会で作られる法律です。動物愛護管理法もこれにあたります。環境省など行政機関がつくる政省令と法律とは意味合いが違います。みなさんからみますとどちらも同じように感じるかもしれませんし、むしろ、政省令のほうが細かく書かれているのでわかりやすいと感じるかもしれません。それに対して議会で作られる法律は、どちらかというと抽象的で分かりにくいものが多いという印象を受けるのではないかと思います。」

動物愛護管理法の中には地域による特性などを考慮するため、都道府県への措置として、地域ごとに細かい条例をつくるようにとの条文が盛り込まれていますが、そもそもいまの日本の大きな法体系の中では、動物はどのような位置づけになっているのでしょうか。

「日本の法律上、動物は生き物という扱いはあまりされておらず、物と同じものとして扱われています。とはいえ、裁判所の解釈では命あるという点をとらえていたり、飼い主の動物に対する愛情をとらえ、慰謝料を認めるなどの形で単純な物とは違うという扱いをしてはいます。」

このような日本の法律上の動物の立ち位置を前提としながら、1973年に作られその後3回の改正を経て、現在の事実上65カ条からなる動物愛護管理法について、海外の動物法と比較しながら注目すべき条文についての説明が行われていきました。

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日本の動物愛護管理法について

「動物愛護管理法は、基本的に大きくふたつのことを規定している法律といえると思います。ひとつは動物の福祉についてです。愛護法では福祉という言葉ではなく愛護という言葉が使われていますが、いずれにしましても動物のことを考えるためのものです。もうひとつは動物の管理になります。これは、動物がほかの人に迷惑をかけないようにするためのものです。」

ふたつ目の観点は、日本に独特なものではないかと感じます。たとえば、周辺環境の保全にかかわる条文、人の生命に対して動物が侵害することを防止するための条文などは、ほかの人に迷惑をかけないという、動物愛護管理法の二本柱の観点のうちのひとつを象徴するような規定ともいえるかと思います。

「第6条は、動物愛護管理において推進計画を作りなさい、というものです。今回の改正では東日本の大震災を受けて、震災時における動物の適正な飼養および保管に関する条文が付け加えられました。また、第7条には飼い主の責務がありますが、こちらは改正のたびにいろいろな責務がつけ加わってきています。たとえば今回の改正では条文に終生飼養という言葉が加わりました。」

終生飼養とは、動物を飼うならば、生涯飼いきれるかどうかということを考えた上で飼いはじめましょう、ということを徹底していくためのものです。

「動物取扱業者についての規制ですが、日本は届出制から登録制(第一種:対象動物は哺乳類・鳥類・爬虫類)にかわりました。先ほどのアルシャーさんのお話にありましたように、ドイツでの許可制というかたちは、日本よりももう一段厳しい規制になると思います。ドイツとの大きな違いは、日本は主に書類審査だけという点です。基準を満たせなければ登録できないのですが、実際に現場に視察しにいくことは法律上の要件とはなっていませんし、面接もありませんので、書類上で基準を満たしてさえいれば登録できるという状況ともいえます。また、ドイツは2年ほどで更新ということでしたが、日本では5年ごとの更新となっています。」

また、生涯動物を飼育してはならないといった外国の法律ほどは厳しくないものの、日本にも、罰金以上の刑を受け、動物に関する法律に違反したりした場合には、一定期間登録ができないという条文があります(第12条)。また、登録拒否だけでなく、登録を受けた後に不正などが発覚した場合には、登録が有効な期間であっても取り消すことができるという条文もあります(第19条)。

「第21条では、基準順守義務が掲げられています。第一種動物取扱業者は、動物の健康と安全を守るため、環境省が定める管理方法などの細かな基準を順守する義務があるというものです。」

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今回の改正でくわえられたものひとつに、8週齢規制があることをご存知のかたも多いかと思います。

「法文上では56日と書かれていますが、施行後3年間は45日、そのあとは49日に読み替えることになっています。つまり、56日と書かれているものの、それが確実に実現するかどうかは今の段階では未定な状況にあります。」

行政の引き取りについても今回改正されました。

「以前は、行政は動物を引き取らなくてはならないと読めるような文面だったのですが、それを、行政は理由があれば引き取りを拒絶できる、という内容に変更されました。」

罰則についてもずいぶん強化されたようです。

「罰則は二倍になっています。ただし、罰則の中には懲役刑と罰金刑しかなく、諸外国にあるような飼育禁止は含まれていません。このあたりが法体系の違いとして表れていると感じます。ただし、行政は法の根拠に基づいて勧告や命令を出せるので、行政の運用の仕方しだいでは、勧告や命令の内容に飼育禁止を盛り込む可能性はあると思っています。」

西山ゆう子さんが『「日本と海外の動物法を徹底比較する」シンポジウムレポート(3)』でお話されていました、マイクロチップの装着についてはどうのようになっているのでしょうか。

「今回の改正の際、マイクロチップの義務化について検討されました。しかしまだ早いだろうということで、次回の改正までにマイクロチップについては熟考していきましょうということになっています。けっして否定されているわけではありませんので、将来的に義務化される可能性は高いと思われます。」

また、マイクロチップと同様に、米国ロサンゼルスでは義務化されている不妊去勢手術については、日本では繁殖制限につとめなくてはならないとされてはいます。しかし、手術以外の方法を選択する余地は残されており、義務化はされていません。

スケジュールが押している状況の中で、予定されていたよりも短い時間での講演となったため、すべてを話しきれなかったと渋谷さん。それでも、日本の動物愛護管理法が実際どのようなもので、外国と比較してどのような状況にあるのか、ざっくりと大枠をとらえることができたお話でした。

海外の動物のいい点を理解するためには、やはり、日本の法律を知ることが大前提にあると思います。けれども、独自で条文を読み、そこに書かれていることを細かに理解するのはなかなか難しいことです。ですので、このような日本の動物愛護管理法を学ぶことのできるセミナーが全国各地で定期的に開かれ、一般の飼い主の方々がそれに参加し、法律を理解し考える機会を増やしていくことで愛護法がより身近なものとなることが大切ではないかと感じたお話でした。

【関連記事】
「日本と海外の動物法を徹底比較する」シンポジウムレポート(1)
「日本と海外の動物法を徹底比較する」シンポジウムレポート(2)
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「日本と海外の動物法を徹底比較する」シンポジウムレポート(4)

 

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