子犬を飼うのは大忙し!

史嶋桂

コメント(9)

01.jpg

日本ではなぜか子犬から犬を飼いたがるひとが多い。確かに子犬は可愛いからその気持ちは分からないでもない。だが実は子犬から犬を飼うと言う行為は、時間制限があり、かなり大変なことでもあるのだ。

理由の一つは犬の成長がとても早いことだ。犬はおよそ1年で性成熟し2年で成犬になる。つまり人間なら20年かかるところを十分の一で大人になってしまう。その十分の一の時間の中で、子犬から大人への教育、言い方を変えれば訓練やしつけを完成させなくてはならないわけだ。

それなのに日本では犬を飼ったことのない初心者ほど子犬から犬を飼いたがる。これは子犬から飼わないと自分に懐いてくれないのではないかと言う思い込みがあるせいと、なにより子犬の可愛い外観にキュートレスポンスを刺激されるからだろう。

しかし現実問題として、子犬から犬を飼うのは大変なことなのだ。まず子犬から飼ってしまうと、ともかくとても忙しい。この忙しいというのは毎日子犬の世話で時間が取られるという意味だけではない。

puppy07.jpg

一番大変なのは、社会化の臨界期までに一定以上の社会化を進めなくてはならないと言う制約のほうだ。犬種や犬による個体差はあるが、飼い主が関われる子犬の社会化の最適期間は生後2ヶ月から3ヶ月の終わり頃までで、この時期のことを社会化の臨界期とも呼ぶ。仮に8週齢くらいから飼い始めるとすると、飼い主に残された時間は約1ヶ月しかない。それ以前に繁殖犬舎(ブリーダー)にいる間も複数の課題がある。具体的にどんな課題があるか見てみよう。

まず子犬の初期の発達では、後天的な環境に大きく左右されやすい時期が続く。この時期に子犬が受けた外部刺激は子犬の生涯に渡って子犬の性質に影響を与える。具体的に子犬の発達に人間がどんな風に関われば良いかを時系列に並べると以下のようになる。

02.jpg

1.新生子期:出産から2週齢移行期:生後13日から20日

生まれて間もないこの時期は嗅覚と触覚(温感)程度しか機能していない時期だが、触覚によって子犬の機能は強化される。フォックス博士によるとオオカミの子は生後6日ごろから人間に育てられると15日過ぎから育てられた場合より人間に懐き易いと報告している。スタンレー・コリン博士は新生子期の子犬を毎日数分でも人間がハンドリングすることで、情緒安定、ストレス耐性、学習能力の増大などの効果があるとしている。僕自身は、自宅で生まれた子犬の全てを、毎日母犬の元に行き、一匹ずつ取り上げて撫で、ぬるま湯で湿らせたタオルで汚れを拭うことを繰り返した。必要なら排泄も促した。こうすることで子犬は人間の手に慣れるし、多産である洋犬の母犬の負担も減らせると考えたからだ。

03.jpg

*個人的な感想だが、子犬の幼少期から子犬のハンドリングを毎日やるような繁殖者でなければ、ブリーダーと自称する人から子犬を買ってもメリットは少ない。この事からも複数の犬種に跨って大量の子犬を作出するような人は良いブリーダーとは呼べないと思う。

2.移行期:生後13日から20日

子犬たちはよちよち歩きをはじめ、排泄も自分で出来るようになる。母犬の乳房の取り合いで兄弟姉妹間の競合が始まる。尻尾を振って感情を表わし、不興を示す唸り声も出すようになる。つまり子犬の五感の全てが機能するようになる。

この時期の兄弟姉妹との取っ組み合い遊びは必須である。僕は家族にも手伝ってもらい、毎日子犬を一匹ずつ膝に抱き上げ、優しく撫でながら穏やかに話しかけることを繰り返した。そのことで子犬は人間の家族の声を覚え、母犬同様に声の主を探すようになっていった。

toshi.jpg

3.社会化期:生後4週から13週

この時期は相手が生物でも無生物でも、出会った対象にひたすら興味を持って接する時期だ。この頃親しく接した相手は犬でも人でも、あるいは猫のような他の生物でも生涯を通じて犬の身内と見なされるようになる。一方でこの時期の中には第一の恐怖期と呼ばれる時期が含まれるので注意が必要だ。第一の恐怖期は6週齢から11週齢の間のどこかで訪れる。犬種によってその時期には、ずれが見られるが、生後6から8週齢が子犬の感受性がもっとも高く、同時に精神的・肉体的苦痛に対して最も敏感になる。従ってこの時期は慣れ親しんだ親元で兄弟姉妹と一緒に過ごすことが必須となる。

puppy17.jpg

*8週齢規制はこの時期の子犬の発達を助ける意味でも重要だ。したがって子犬の分譲は8週令以降に親元から新しい飼い主家族に直接行われるのが望ましい。ここまでの時期、子犬は母親の元で兄弟姉妹と過ごし、人間の家族ともたびたび触れ合う必要がある。

*ここから先は、子犬が譲渡され、新しい飼い主の下で暮らし始めてからの話だ。

12週齢から生後3ヶ月台の間は子犬の感受性がもっとも豊かな時期、社会化の臨界期にあたる。子犬を引き取った新しい飼い主は、子犬が新しい環境になれたら、出来るだけ多数の犬や人と多くの場所に慣らすことで社会化を進める必要がある。前にも書いたが、100人の人と100匹の犬に会わせるくらいのつもりで毎日子犬の社会化を促すべきだ。仮にワクチン接種のリスクがあっても、これは外せない事柄だ。

この社会化期の特徴として、一日あたりたった十分程度一緒に遊ぶだけでも、子犬はその相手を自分にとても近しい存在と学習する点が興味深い。このため犬がたくさん集まる公園やドッグランに繰り返し通い、長時間そこで過ごし、たくさんの犬とその飼い主さんに少しずつ会わせて遊ばせるのが望ましい。

一匹あたり毎回十分程度繰り返し遊ぶだけで、子犬は相手の犬を身内扱いするようになり、その愛着は一生続く永続的なものに出来る。それは子犬の社会性を高めるに役立つ。

同じようなことは人や無生物に対しても起こる。例えば自転車の籠に載せてドッグランに通えば子犬は自転車の籠で運ばれることにも愛着を抱くし、帰宅途中でドッグカフェに寄って休憩すれば、その場所も子犬にとって親しい場所と記憶されるようになる。

さらに健康診断のために社会化期に頻繁に獣医師を訪れた犬は、怪我や病気治療のために獣医師を訪れても怖がらずに診療を受けられるようになる。

この社会期の終わりがはっきりしない犬種や、社会期が長く続く犬もいる。マズルが長く耳が自然に立つような犬は、社会化期の終わりがはっきりしていることが多く、垂れ耳やマズルが短い犬はいつ社会化期が終わったかはっきりしないことが多い。だから子犬を飼っている飼い主さんは、子犬の態度の変化をよく観察し、犬の成長過程に合わせた適切な対応を取らなくてはならない。

088.jpg

4. 恐怖期:生後4ヶ月から6ヶ月前

犬種や個体によって差はあるが、早い犬で生後13週くらいから第二の恐怖期(若齢期)が始まる。これは祖先のオオカミの子が自分の敵を認識する時期にあたる。ほとんど全ての犬種の子犬が見知らぬ犬や人、知らない場所、初めて経験することに恐怖心を抱きだす。この時期に酷い目にあったり、怖い想いをしたりした相手や場所は一生を通じて怖い相手、注意すべき場所として印象付けられる。従ってこの時期に子犬に怖い想いをさせないほうが良いし、強い体罰は絶対に行ってはいけない。最悪飼い主が犬を叱責する際に体罰を下すと、犬は飼い主も恐怖の対象と学習してしまい、それまで築いてきた信頼関係さえ損ないかねない。

puppy03.jpg

一方で犬が軽い不安を抱き続けていることを利用して、飼い主に対する服従心を高めることも出来る。恐怖期以前に多くの場所に連れ出した犬なら、軽い不安を抱きながらも飼い主について新しい場所を訪れることが出来る。この時、飼い主が毅然とした態度で犬をリードすれば、不安を感じた犬は飼い主に依存心を抱き易くなり、うまくリードすればそれは尊敬にも繋がる。

こうして子犬から若犬への成長過程でブリーダーや飼い主が何をしなくてはならないかを書き並べてみると、子犬から犬を飼うと言うことはまるでカウントダウンタイマーに急かされて犬の相手をするような忙しさがあることが分かるだろう。正直、僕は初心者が初めて飼う犬は子犬では無いほうが良いと思う。そのくらい子犬から飼うと言うのは大変なことなのだ。

僕自身もそうだったが、最初のころに飼った犬たちは成犬であり保護犬だった。その多くは米軍族が日本に置き去りにした犬たちで日本語さえ知らない犬たちだったが、毎日餌を与え、散歩に連れ出し、世話を重ねるうちに、最初から家の犬だったかのように僕や家族に懐いてくれた。成犬だから新しい飼い主に懐かないなどと言うことはない。初めて犬を飼おうと考えている方は、ぜひ保護犬の譲渡もその選択肢の一つに加えて欲しいと思う。

 

GREEN DOGがお勧めする商品

フード選びに迷ったら。厳選お試しセット
累計注文30,000食突破(2016年7月現在)
フード選びに迷ったら。厳選お試しセット
EPA・DHA豊富!皮膚被毛の健康をサポート
EPA・DHA豊富!皮膚被毛の健康をサポート
ワイルドアラスカンサーモンオイル
獣医師も注目する「お腹の強力サポーター」
獣医師も注目する「お腹の強力サポーター」
バランスフローラ
諦めないで!歯磨き嫌いさんにはコレ
諦めないで!歯磨き嫌いさんにはコレ
ペット用歯磨きジェル 歯にマヌカ
食べきりサイズのおやつが5種類試せる!
食べきりサイズのおやつが5種類試せる!
WITH GREEN DOG ミニサイズおやつセット

dog actually ライター書籍 PickUp

「犬と遊ぶ」 レッスン テクニック: 見落としがちな「犬との遊び」は最大のトレーニング法だった! (世界のドッグスペシャリスト)
「犬と遊ぶ」 レッスン テクニック: 見落としがちな「犬との遊び」は最大のトレー… イェシカ・オーベリー (著), 藤田 りか子 (編集, 写真) 誠文堂新光社 (2015/8/20)
最新 世界の犬種大図鑑: 原産国に受け継がれた420犬種の姿形
最新 世界の犬種大図鑑: 原産国に受け継がれた420犬種の姿形 藤田 りか子 (著), リネー・ヴィレス (著, その他)
誠文堂新光社 (2015/2/24)
ドッグ・トレーナーに必要な「子犬レッスン」テクニック: 子犬の気質を読みながら、犬の語学と社会化を適切に学ばせる (犬の行動シミュレーションガイド) (犬の行動シミュレーション・ガイド)
ドッグ・トレーナーに必要な「子犬レッスン」テクニック: 子犬の気質を読みながら… ヴィベケ リーセ (著), 藤田 りか子 (編集), Vibeke Sch. Reese (原著)
誠文堂新光社 (2014/8/20)
よくわかる 犬の遺伝学: 健全性から毛色まで、知って役立つ遺伝の法則
よくわかる 犬の遺伝学: 健全性から毛色まで、知って役立つ遺伝の法則 尾形 聡子 (編集)
誠文堂新光社 (2014/1/20)
今日からチャレンジ! 楽しいローフードのすすめ
今日からチャレンジ! 楽しいローフードのすすめ カリーナ・ベス・マクドナルド (著), 森 ひとみ (翻訳), 尾形 聡子 (翻訳)
エー・ディー・サマーズ (2014/2/28)
DVDBOOK 犬はしぐさで会話する(1): ヴィベケ・リーセの犬のボディランゲージ解説 ()
DVDBOOK 犬はしぐさで会話する(1): ヴィベケ・リーセの犬のボディランゲージ解説 ヴィベケ・リーセ (著), 藤田 りか子 (編集)
誠文堂新光社 (2013/12/10)
いぬ語会話帖: 犬の言葉をシンプルに理解するためのフォトブック
いぬ語会話帖: 犬の言葉をシンプルに理解するためのフォトブック ヴィベケ・リーセ (著)
誠文堂新光社 (2014/7/10)
ドッグ・トレーナーに必要な「深読み・先読み」テクニック: 犬の行動シミュレーション・ガイド
ドッグ・トレーナーに必要な「深読み・先読み」テクニック: 犬の行動シミュレーション・ガイド ヴィベケ・S. リーセ (著), 藤田 りか子 (編集, 写真)
誠文堂新光社 (2011/8/19)
ドッグ・トレーナーに必要な「複数の犬を同時に扱う」テクニック: 犬の群れとリーダーシップについての深まる謎を解く! (犬の行動シミュレーションガイド)
ドッグ・トレーナーに必要な「複数の犬を同時に扱う」テクニック: 犬の群れとリーダーシップについての深まる謎を解く!… ヴィベケ・リーセ (著), 藤田 りか子 (著)
誠文堂新光社 (2013/4/19)
ドッグ・トレーナーに必要な 「犬に信頼される」テクニック: 「深読み・先読み」の第2弾、問題行動はこれで直せる! (犬の行動シミュレーションガイド)
ドッグ・トレーナーに必要な 「犬に信頼される」テクニック: 「深読み・先読み」の第2弾、問題行動はこれで直せる! … ヴィベケ・リーセ (著), 藤田 りか子 (著)
誠文堂新光社 (2012/11/19)

もっと見る