犬との暮らしで大切なことは?

史嶋桂

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犬と暮らす上で大切なことって何だろう?犬の健康に注意する?自分の身の丈にあった犬を選ぶ?家族全員が犬と暮らすことに賛成する?社会化や訓練をきちんと行う?いろいろ大切なことはたくさんあるけど、僕はもっと大切なことがあると思う。

それは犬と人がお互いに家族として認め合える関係を築くことだ。僕がそんな風に思うのは、僕の幼少期がやや特殊なものだったからかも知れない。

僕は自分が生まれる前から犬が複数飼われていた古い家で生まれ育った。母方の祖父が大の犬好きで、在日米軍の軍属が日本に置き去りにした犬を引き取っては飼ったり、里親を探したりしていたからだ。

普通の家庭では、家族という人間の集団がいるところに子犬を飼う、保護犬を迎えるなどが一般的だろう。つまり人間の家族のところに犬の方が後からやってくるパターンが多い。

僕は逆だった。ジャーマン・シェパード、ドーベルマン・ピンシャー、ボクサー犬と言った日本では警察犬として使役される大型犬たちが複数暮らしていた家に僕が後から加わったのだ。犬たちから見たら、僕は飼い主家族に加わった新参者、あるいは群れに生まれた子犬のような存在だったかも知れない。

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警察犬種の多くは地方条例によって特定犬として飼養方法まで規制される犬だ。「これらの犬は人間を殺傷しうる危険があるため、鎖で係留し檻に閉じ込めて飼う必要がある」 とお役人が考えたせいだろう。だが我が家はこの飼養方法を取っていなかった。掃除が大変なので畳敷きの部屋には入れ無かったが、犬たちは庭と家の土間と板敷きの間を自由に行き来して、人間と共通の生活空間で暮らしていたのだ。

僕のもっとも古い記憶のひとつに、実家の縁側に寝かされて庭を見ていると、大きな犬が次から次へとやってきて、僕の顔を覗き込み、匂いを嗅ぎ、時には長い舌でひと舐めして去っていく、と言うのがある。祖母によると、僕は犬を見せておきさえすればご機嫌な赤ん坊だったので、普段から籐の籠に布団を敷き、ひとりで縁側に寝かされている事が多かったのだと言う。

その縁側にひとりでいた赤ん坊のところへ、先住者である犬たちが入れ替わり立ち代りやってきて、覗き込み、おむつの匂いを嗅ぎ、時には乳臭い顔をひと舐めして挨拶をしていったわけだ。牝犬の中には籐籠の横に伏せ、一日中僕を見守ってくれた犬もいたという。

今、赤ん坊にそんなことをする親がいたら、虐待だと言われてしまうかも知れない。幸い実家で飼われていた大型犬たちの社会性は高かったようで、赤ん坊の僕は擦り傷ひとつ負うこともなく犬に囲まれて健康に成長していった。ある意味僕の最初の社会化の相手は犬たちだったのかも知れない。

ちなみに僕はアレルゲンテストを行うとすべての抗原に反応してしまうアレルギー体質だが、今までアレルギーで苦労した事はない。アメリカの周産期学会における発表によれば、生まれる前から2匹以上の犬猫のいる家庭で生まれ育った子供は有意にアレルギーの発症が少ないという。これは複数の犬たちが持ち込み、彼ら自身が発生する大量のアレルゲン物質で子供が慣らされてしまい、過剰なアレルギー反応が起きなくなるからだという。

赤ん坊時代のもうひとつの記憶については以前も書いた。僕は這い這いから伝い歩きが出来るようになり、台所の板の間を這って進むようになった。畳敷きの部屋より掴るものが多く、板敷きの台所の方が伝い歩きがし易かったからだ。

赤ん坊の僕は台所に着きテーブルの脚を見つけ、それに掴って立ち上がろうとする。しかしそれはテーブルの脚ではなく大型犬の脚であることの方が多かった。今考えるとその犬は、わざわざ僕の行く先々に先回りして掴り立ちの台になるべく待っていたように思えてならない。

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その大型犬はメアリと言うボクサーの老犬で、僕が立ち上がるまで我慢強く待ち、僕が立ち上がると、僕の顔をひと舐めし、あとはゆっくりと僕について歩き、不慣れな二足歩行の練習を助けてくれた。

僕が幼稚園に上がるとメアリは朝夕の送り迎えさえするようになった。これも今だったら東京都条例違反だろう。何しろ僕はメアリに引き綱をつけて幼稚園まで引いては行ったが、僕を見送ったメアリはその引き綱を自分で咥えて、ひとりで家まで帰っていたのだから。

今考えると、僕もメアリと言う老ボクサー犬に依存していたが、メアリも僕と言う子供の世話を焼くことに自分の存在意義を見いだしていた様に思える。つまり僕たちは種族を越えお互いを家族として認識していたわけだ。

そんな風に犬にまみれて育った僕が小学校に上がった頃、祖父の脚の古傷が悪化した。祖父は旧日本軍の憲兵隊にいた様で、戦争中は上海に駐在し、英軍が置いていったエアデール・テリアを軍警察犬として使っていた。祖父は負傷し後送され傷痍軍人として日本で終戦を向かえた。だが脚の古傷の悪化で引き取った保護犬の世話が自由にできなくなった。僕は祖父に訓練を教わり、祖父の代わりに複数の大型犬の散歩や訓練を行うようになった。

今考えると少し不思議だが、小学生の僕に米軍基地から来たごつい大型犬たちはとても従順だった。元々軍属たちがきちんと訓練を入れた犬だったせいもあったろうが、なにより保護犬たちは最初の飼い主に置き去りにされたトラウマから、自分の面倒を見てくれる人間に縋り付いてくるようなところがあった。引き取り直後の犬の中にはトイレや風呂まで付いてくる様な分離不安を見せる犬もいた。

だがそうした不安を抱えた犬たちも、毎日朝晩散歩に連れて行き、課題を決めて訓練をおこない、朝晩の食事を与え、ブラッシングや毛漉きなどの世話をしてやると、一様に情緒が安定し、安心して里親探しが出来るようになっていった。つまり最初の飼い主に捨てられたと言う最悪の記憶が新しい家族との記憶で上書きされるにつれ穏やかな性格に変わっていったのだ。

情緒面が安定した保護犬たちの多くは、訓練も散歩も食事もない日曜の昼下がり、縁側で漫画を読み、自室で宿題をする僕の横で一緒にゴロゴロして過ごすことが多かった。

僕はその様子を見て、犬たちも自分の世話をしてくれる家族のそばでくつろぐのが一番安心できるのだと考えるようになった。それから僕は、犬を連れて行っても支障のない場所なら、どこにもでも犬を連れて行くようになった。

そうは言っても、その犬たちは軍用犬として使われるようなごつい大型犬ばかりだったから、必ずしも行く先々で歓迎されるとは限らなかった。駅前のスーパーの前にサドルバッグを背負ったドイツシェパードやドーベルマンが何匹も座って飼い主を待っている姿を想像して欲しい。犬嫌いの人は明らかに遠回りして通ったし、犬に構おうとする子供の手を引いて足早に通り過ぎる母親も多かった。

時には駅前交番の巡査に苦情を申し立てる人もいた。だが当時の制服警官はきちんと訓練された警察犬種には鷹揚だった。まだまだ世情が安定しない中で番犬への依存度が高かったし、うちから貰われていった里子の中には嘱託警察犬になった犬もいたからだ。

幸い僕が母と買い物をしている間、行儀良く座って飼い主を待ち続ける買い物犬たちは、通りがかりの犬好きの興味も引いたようだ。そのおかげで僕は「売れ残り」状態だった保護犬たちの多くに引き取り手を見つけることが出来た。

米軍属の置き去り犬は、立川のベースキャンプ返還をピークに段々減っていった。祖父は米空軍の少尉から譲りうけたスナッピー一世と言うダックスフントがいたく気に入ってしまい、その後の余生はダックスフントたちを相手に過ごした。一方僕は保護犬を引き取り、捨て犬を拾っては飼い、欲しがる人がいれば里子に出す暮らしを続けていた。

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今僕は、子犬から育てたジャックラッセルテリアの二匹と、人間の家族と同じ生活空間で暮らしている。犬がどこでも入れるように古い家を改築し畳の部屋は無くした。犬が一番長い時間を過ごす居間はコーティングしたコルクを床に敷いた。夜は犬も同じ場所で眠る。夏は暑いので犬たちは勝手に一番涼しい場所を見つけてそこで寝るが、冬は同じ布団にもぐりこんで朝まで起きてこない。

小型犬だからと言う訳ではないだろうが、ジャックラッセルテリアたちは、我が家の子供の地位で満足し、情緒の安定した暮らしを送っている。いつでもどこでも飼い主の命令に従うし、静止も呼び戻しも効くが、テリアらしく自己主張も欠かさない。まあこの犬種としては十分行儀の良い部類だろう。

そんな風に、僕は我が子にするように犬を飼い育ててきた。適切な時期に公園デビューをさせ、犬や人間の友達と遊ばせ社会性を培い、子供に勉強させるように犬にも訓練を行う。そして、飼い主がきちんと親として振る舞い犬を安心させる様心がける。

よく犬は家族と同様と言うが、それは必ずしも犬を甘やかすことではないと思う。自分の犬が常に礼儀正しく振舞えるよう、時には厳しくしつけることも大切だと思うのだ。

犬を飼うという行為はある意味子育てに似ている。そして犬は飼い主=親と認めた人間を絶対に裏切らない。僕はこれからもそんな犬たちとの暮らしを楽しむにはどうしたら良いか、犬との暮らしで大切なのは何かを考え続けていきたいと思う。

 

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