犬の言葉を学ぶ、犬に言葉を教える

史嶋桂

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僕が犬を訓練する時 「その犬の言葉を学ぶ、僕自身の言葉を教える」 あるいは 「その犬の感情を理解できるようになる、僕の感情を犬に読み取ってもらえる様にする」と言うことが、訓練の重要な目的のひとつになっている。これはガニング亜紀さんの言葉を借りて言い換えれば「お互いに社会化する、される」と言うことになるだろう。

残念ながら人間の感覚は鈍い。少なくとも僕の五感は、一緒に暮らしているジャックラッセルテリアたちから較べるとかなり鈍いと思う。

例えば我が家は二階家の二階部分にあり来客は一階から階段を登ってくるのだが、犬と一緒に居間でTVなど見ていると、犬たちは来客が階段の下に来た段階でもう気づいているように見える。

犬たちは僕の膝の上や横に座ってくつろいでいても、すっくと頭を上げ、玄関の方を見やる。半立ち耳と垂れ耳を一生懸命立てて、音を聞き取ろうと身構える。

それからマイロは僕の膝から飛び降りる。
ジャンは玄関に走って行き、尻尾をピンと立て、四肢を踏ん張り来客を待ち構える。

そして驚くべきことに、ピンポンとチャイムが鳴らされる直前にジャンはウロロロンと警戒吠えの声を上げるのだ。

ジャンの義理の姉にあたるマイロは玄関まで出張りはするが、ほぼ吠えない。

この行動上の差は彼らの群れの中での地位をそのまま表わしている。

ジャンは我が家のナンバー4、つまり下っ端のひとりであり、早期警戒担当なので、来客があれば

「なにか怪しい奴が来たぞ、みんな集まれ!」

と吠えて知らせるのが自分の役目と考えているらしい。

一方マイロは我が家のナンバー3か、ナンバー2なので、いざという時には

「あたしが敵に咬みついてやっつけてやるわ」

と玄関まで出張るわけだ。

そんな風に犬たちの感覚の鋭さは人間のそれを大きく上回る。そしてその振る舞いを注意深く観察すると、彼らの意図することもだんだん分かるようになってくるはずだ。

幸い我が家も実家も今まで一度も空き巣や泥棒の被害に合ったことがない。これは犬を飼い続け、自分たちで訓練を行い、その警戒能力に頼った暮らしをしてきたからだ。

だから僕は犬たちが来客に吠えても止めない。

インターフォンで確認して迷惑な相手でないことが確認できたら

「ジャン、ヤメ」

と命じるだけだ。それでもジャンが納得せずに吠え続けるときは

「ジャン、もういいよ、スワレ」

と笑顔でジャンに命じて玄関の扉を開ける。そこまですればジャンは確実に吠えやむ。これは不安を抱えて吠える犬に、もう心配要らないと飼い主が自分の意思を伝える行為にあたる。

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が現実問題として飼い主である人間は、自らの感覚の鈍さのせいで、自分の飼い犬の行動から感情を読み取れないことがある。

散歩中に自分の犬がきちんと相手に挨拶できた時、反対にいきなり通りがかりの犬や人に吠え掛かった時、飼い主が前後の行動をきちんと観察出来ていなければ、適切に犬の感情を読み取れない。当然犬の振る舞いの理由が分からなければ、対策をとることはできない。

そんな風に犬と人間の五感の差には埋めようないギャップが存在する。

例えば僕が犬より優れている感覚器官はたぶん色彩に関する認識能力くらいだが、これは実生活でそれ程役立つ能力ではない。だが猿の末裔である僕は、たぶん犬より優れた静態視力と見たことを分析する能力を持っている。それで犬の表情や仕草を事細かに観察して感情を類推することはできる。

そのおかげで、犬よりだいぶ鈍い人間でありながら、僕は目の前にいる犬の感情を一定以上の確度で読むことができる。ただし読み取った犬の感情をその場で人間の言葉にして説明するのは苦手だ。

理由はその手の文才が足りないせいもあるが、一番の問題はコロコロ変わる犬の感情を逐次説明するだけの速度では話せないのと、犬の感情をそのまま受け取ってしまったほうが自分では楽だからだ。これは僕が幼時から複数の犬に囲まれて育ったことによって身についた能力、言い換えれば犬たちに社会化した結果だと思う。

この感覚はたぶん犬を飼ったばかりの人、あるいは一匹しか犬を飼った経験がない人だとたぶん理解できないと思う。犬の感情はそのくらい柔軟に揺れ動き、その刹那せつなで適切な対応を取れるようにすばやく変化するからだ。

ドッグ・ウィスパーと呼ばれる人、あるいは熟練の訓練士は、たぶん僕と同じか、それより高いレベルで犬の感情の変化を読み取ることができる人たちだろう。その人に高い言語能力があれば、犬の感情の変化を適切な言葉で説明することもできるはずだ。

だが、犬を飼い始めた初心者や、犬を飼ったとしても経験の浅い飼い主にはそれは困難だ。彼らは経験不足ゆえに犬の仕草から刻々と変化する犬の感情を読み取るだけの能力がまだ身についていないからだ。

そういう人は最低でも、犬の耳・背中の毛、尻尾、目の開き具合、そして鼻面の状態と口角の形、全身の姿勢、特に前傾か後傾か等から犬の感情を読むように努力して欲しい。大切なのは犬の一部だけ見て判断しないこと。全体を均等に漏れなく見続け、変化に気づくことが重要だ。

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たとえば尻尾を振っているのは、犬がなにかに興奮していることを示しているだけで、必ずしも上機嫌なわけではない。感情面から言うと犬の尻尾は人間の口に相当すると思う。人間はとてもうれしい時、反対に凄く悲しいとき、めちゃくちゃ怒っている時にしばしば口を大きく開く。犬の尻尾もそうした感情の高ぶりを示すに過ぎない。

犬が尻尾を振っていたから歓迎していると誤解し、犬の頭をなでようとして咬まれる人が後を絶たないのは、尻尾を振っている=友好の挨拶と勘違いし、的確に犬の感情が読めていないせいだ。だが現実問題として先に述べたようにめまぐるしく変わる犬の感情を読み取り続けるのは初心者には無理な相談だ。

ではもう少し簡単に犬と意思の疎通を図る手段はないのだろうか?

僕はその解のひとつが、犬を自分の手で訓練することだと思う。

これは最初に書いたとおり、犬の仕草から犬の感情を読み取るための飼い主自身の訓練であり、反対に犬に飼い主の意思、もっと言ってしまえば感情を読み取ってもらうための訓練でもあるのだ。

犬の五感は詳細に物を見る能力を除けば飼い主よりずっと鋭い。彼らは飼い主を観察し、わずかな仕草から感情の変化を的確に読み取れる。

だから犬を訓練すると言うことは、言語能力に優れた外国人に自分の言葉を覚えてもらい、意思疎通を図り易くするやり方に似ている。

つまり犬に声符と視符で訓練する行為は、犬に飼い主の言葉とボディランゲージを覚えてもらい、こちらが犬の言葉をすべて理解できなくても、なんとか意思の疎通を図ろうとする手段でもあるのだ。もちろん飼い主側もその過程で犬の「言葉」を理解できるように努力すべきだ。

こうした観点からも、犬は飼い主自らが訓練しなければならない、と僕は考えている。逆の見方をすれば、犬を社会化させたい相手(たとえば子供)にも訓練に参加してもらうことが重要だと思うのだ。

犬を訓練すること、それは犬の感情を理解し、こちらの意図を犬に理解してもらう手段でもある。

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