日本人は子犬に萌えているか?

史嶋桂

コメント(14)

1.ジャックラッセルテリア

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何故日本では幼い子犬の単独展示販売がこんなにはやっているのだろう?犬は社会性動物なのだから社会化期にある子犬の単独飼育が良い結果をもたらすはずがないのに。今回の記事はそうした個人的な疑問について、資本主義とサブカルチャーと言う、犬の話題として普段は取り上げられない分野から探ろうとする試みである。

犬を飼うという行為は僕にとって家族が一人増えるくらいの重要事である。ある意味それは、養子縁組をして子供を迎え入れるくらいの重さがあると思う。

だが現在の日本を見ていると、そうした覚悟もなしに、単に可愛かったからとペットショップの店頭で子犬を買ってしまい、その子犬が成長とともに可愛らしさを失い、さらに躾も社会化もせずに飼い続けた結果手に負えなくなってしまうと、動物愛護センターに捨てに行くというパターンがあまりに多いように思える。

2.ドーベルマン・ピンシャー

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これは日本のペット業者が、子犬が持つキュート・レスポンスを悪用し、子犬の可愛らしさを強調し安直な販売を行っているせいだ、そういう意見を良く見かける。確かに量販店の子犬の単独展示販売は、その通りの事をやっているのだからこれは批判されても仕方ないだろう。

しかし本当にそれだけが原因なのだろうか?なぜEU圏ではあまり見られない、子犬の単独展示販売という形式が日本を始めとするアジア各国で見られるのだろう?これは本当にペット業界、つまり売り手側だけの問題なのだろうか?

この疑問について、まずはマクロな視点、すなわち経済原理から考えてみよう。

我々は日本という資本主義国家に暮らしている。民主主義というイデオロギーを抜きにして考えると、ケインズが述べた「有効需要によって供給が決定される」世界で暮らしているわけだ。

一方ペットショップが子犬の単独展示販売をするから、安直な飼い主が増えるという考え方は、ケインズ以前に述べられていた古典派経済学における「供給によって需要が決定される...」という古い概念に近い。

後者は現在ではほぼ否定されているため、資本主義体制下ではペットの販売についても「需要が供給を決定する」つまり大多数の飼い主候補=消費者側の需要によって現在の市場が成り立っている可能性が高いはずだ。

ということは、子犬の単独展示販売を求めているのは、売り手=供給側だけでなく、大多数の飼い主候補=消費者側も、そうなのでは?という疑問が浮かんでくる。

ではなぜ日本の消費者はそれほど子犬という存在を欲するのか?

なぜ成犬ではだめなのか?たとえば動物愛護センターには純血種の成犬もたくさんいるというのに、なぜ子犬だけに貰い手がつきやすいのか?

この考察のために、次にミクロな視点、近年の日本人の嗜好のひとつとなったサブカルチャーの視点から考えてみよう。

日本から世界各国に輸出されつつあるサブカルチャーの中で、子犬にも直接影響しそうなものに「萌え」や「カワイイ」という概念がある。以下にその対象となり得るようなキャラクターの写真を並べるので、どれがカワイイか直感的に選んで欲しい

3.ジェニーのドールヘッド

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「萌え」は異性・小動物等の愛玩対象に対して熱烈にのめり込み、恋愛感情や性的欲求に近い強い愛着の思いが「燃え上がる」という意味のスラングから生まれたものといわれる。

一方「カワイイ(kawaii)」はいとおしさ、趣き深さなど、何らかの意味で「愛すべし」と感じられる場合に用いられ、萌えをより一般的な愛着感情を表現にした言葉と思われる。またカワイイは「二十一世紀に入って世界にもっとも広まった日本語」と言われる。

4.クールガールのカスタムドールヘッド

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白人の成人女性がキティちゃんやきゃりーぱみゅぱみゅを見て「kawaii」を連発するように、カワイイはすでにグローバル化された言葉だといえるだろう。

5.キティちゃん(子猫のキャラクター)

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興味深いことに日本語のカワイイに相当する形容詞は他の言語にはあまり存在しないらしい。つまり元々無かった愛着の概念を表わす言葉だったため、カワイイが世界中に広まった可能性があるのだ。

6. タイコ君(シロクマのぬいぐるみ)

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日本におけるカワイイは、主に若い女性の間で、現代日本的で小さくて愛らしいものに対して用いるのが主な用法と言われる。

こうした女性たちが街で子犬や小型犬を見かけて発するカワイイという言葉だが、実は欧米の言語にはこのカワイイにぴったり合致する概念が見当たらない。

英語の"cute"やイタリア語の"carina"は、未熟なもの、幼児的な愛らしさを持つものに対する言葉なので、子犬には当てはまるが、成犬となった犬には使われない様なのだ。

7. 碧い月・武姫のドールヘッド

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たとえばソフトバンクのCMに登場する北海道犬のお父さんは、立派な牡の成犬で、親父言葉で話すにも関わらず、彼もしばしばカワイイと表現されているはずだ。

8.クールガールのカスタムドールヘッド

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さてここまで見ていただいた一連のキャラクターについて解説を行う。実は一見ランダムに掲げた犬の写真、ぬいぐるみの写真、ドールヘッドの写真は、偶数番号の写真が相対的に大人びたリアルな外観、直前の奇数番号の写真が子供っぽいデフォルメされた外観のモデルとなるように並べられている。これらは眼の大きさ、高さ、顔の縦横比によって、子供っぽさと大人っぽさを定量的に表現可能なサンプルなのだ。

9.イングリッシュ・ラブ

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10.アメリカン・ラブ

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実は同じ犬種の中でもラブラドール犬のように、カワイイタイプと大人っぽいタイプが存在する。これらの写真を見た瞬間、あなたは奇数と偶数のどちらが自分の感性から見て好ましい、あるいはカワイイと感じただろうか?こうした実験では対象をじっくり見て考えてはいけない。あくまで見た瞬間のイメージで答えるのが自分の嗜好を正確に理解するコツとされる。

僕は多国籍企業に勤めているので、同じ実験を欧米人やオーストリア人、シンガポール人、中国人、インド人など男女のスタッフに試してみた。そうしたら白人とインド人の多くは、海外でも人気の高いキティちゃんには一律興味を示したものの、犬は鼻面の長い立ち耳の犬、ドールヘッドは成人女性に近いもの、よりリアルに見えるもの、つまり偶数のサンプルを好ましいとする傾向が強かった。

一方シンガポールより東の国の人々の多くは、男女を問わず日本人と似た嗜好を示した。

彼らは鼻面が長く耳が立った犬より、垂れ耳で鼻面の短い犬をカワイイと感じると答えた。

ぬいぐるみやドールヘッドの方も、眼が大きく子供っぽい外観、丸まっこい相貌の方をカワイイと選ぶ方が多かった。

さて読者の皆さんは、偶数・奇数どちらの番号が好ましいと感じただろうか?

実験結果から僕が感じたのは、日本人を含むモンゴロイドは、元々コーカソイドの欧米人よりカワイイものが好きな民族らしいということだ。

似通った嗜好を持つ日本人は、犬選びにおいても、成犬より子犬を、大型犬より小型犬を、大人びた犬より子犬っぽい犬を選んでしまう傾向が元々強いのではないだろうか?

今までの dog actually での議論を見ていると、子犬の単独展示販売は一方的に販売側が悪いという議論が目立つように思えた。だが資本主義社会で暮らす我々消費者も市場経済に影響を与える立場にいることを忘れてはならない。店側が行っていることはマーケティングの結果も含めて、消費者側の要望に応えた結果である事は明白なのだ。

つまり犬についても、我々日本人は子犬をよりカワイイと思う感性を、元々欧米人より強く持っている可能性が高いということだ。供給側はそれをビジネスに巧みに利用しているため、現在のような悪循環が生じているのかも知れない。

特に大型犬や獣猟犬の子犬はどんなに可愛くても要注意だ。店頭ではカワイイ子犬でも、子犬はわずか二年程度で成犬に育って行く。将来その犬が、どんな大きさ、姿、体力、性質を持つ犬に育つか良く調べ、成犬になっても自分や家族が扱い切れるか、社会化し訓練して飼いきれるか理性的に考え直して欲しい。

そんな風に犬に関しても、安易にカワイイという一時の感情に任せてペットショップの店頭から衝動的に子犬を買うようなことはあってはならない。犬を飼う以上、家族をひとり増やすくらいの覚悟をもって、熟慮と理性的な選択の上で犬を迎えるべきだと僕は考える訳だ。

 

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