藤田りか子さんのセミナー「スウェーデンモデル~スウェーデンに学ぶ完全ブリーディング・コントロール」レポート(2)

尾形聡子

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ドッグトレーナー養成スクール「PALYBOW Dog Trainers Academy」主催の、藤田りか子さんのセミナー「スウェーデンモデル~スウェーデンに学ぶ完全ブリーディング・コントロール」。スウェーデンでの動物愛護法や犬に対する意識、犬を取り巻く社会がどのようになっているかなどをお伝えした前回に続き、スウェーデンのケネルクラブとはどのような組織で、どのような活動を行っているかについてのお話へと移っていきました。

「ケネルクラブはとてもよく統合された大きな組織です。ケネルクラブの下には各犬種それぞれの犬種クラブがあり、その下にはたくさんのローカル・クラブがあります。さらに犬種クラブと同列の位置に、ワーキングドッグ・クラブという組織があります。ワーキングドッグ・クラブは、犬の訓練や気質テストなどを行っている団体です。そのほか、ブリーディング委員会、ドッグショー委員会などのさまざまな委員会もケネルクラブの傘下にあります。スウェーデンでは、ケネルクラブをトップにして各方面の専門家が所属する団体がそれぞれ犬作りに参加し、尽力しています。要するに、ケネルクラブは犬を作る大きな団体だということです。」

スウェーデンのケネルクラブの力の強さは、組織の統合力にあるといいます。

「犬を作るには、犬に関わる全ての組織が団結して取り組む必要があります。単に見かけが良いだけではダメなんです。それぞれの犬種が持つ機能特性も、犬種として必要とされるもののひとつです。また、犬種によってかかりやすい病気がありますが、それを無くしていこうとすること、つまり、健康であるということも犬のあるべき姿です。スウェーデンは、ケネルクラブをトップに各団体がその傘下にあるという完全なピラミッド型が作られていて、ピラミッド型の統合力がとにかく強いのが特徴です。もちろん別の国にもケネルクラブや犬種クラブなどはありますが、たとえばアメリカですと、AKC(アメリカのケネルクラブ)がありながらも AKC に対抗するようにして同じような団体があったり、同じ犬種でもいくつもの犬種クラブがあり、ある犬種クラブは AKC の傘下、あるところはまた別の団体の傘下というように、非常にごちゃごちゃとしていて統制が取れなくなっている状況にあります。」

スウェーデンのように、ケネルクラブを頂点として犬種クラブなどの各団体の統制がとれていることの利点には、遺伝病や健康状態、気質などのデータが全てケネルクラブに集約される仕組みになっていることがあるといいます。各犬種それぞれのデータがひとところに統括されることで、それぞれの犬種で何が起きているのか?ということが風通し良く分かりやすくなるのです。

「ケネルクラブに登録されている各犬の情報は全てデータベース化されていて、誰でもインターネットを使って調べることができます。データは家系図だけでなくショーや競技会の成績、健康状態まで事細かに記録されていて、ある犬からその両親犬や家系内の別の犬の情報を調べていくことも簡単にできるようになっています。そしてケネルクラブでは、人を教育することにも非常に力を注いでいます。ブリーダーやジャッジはもちろんですが、飼い主も然りです。一般の人々が犬という動物を知り、犬種についての知識をきちんと持っていなければ、さまざまな取り組みもピラミッドの上まで反映されず、統制もとれないということをケネルクラブは知っているからです。とにかくケネルクラブは犬のために真剣な団体なんです。」

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ケネルクラブの試み:ブリーダーへの徹底した教育

スウェーデンでは国の制定する動物愛護法が基本にあり、動物の福祉が守られています。そして動物愛護法に基づいて、独自のルールを作って活動を行うケネルクラブがその下に存在しています。

「ケネルクラブが独自で行っている活動のひとつにブリーダーの倫理観の育成があり、そのために、ケネルコンサルタントと呼ばれる業務を行う人がいるのが特徴です。ケネルコンサルタントは各自治体に配置されていて、犬舎へ抜き打ち検査をしに行き、愛護法に則った状態にあるかどうかをつぶさに調べる仕事をしています。ケネルコンサルタントへの教育はケネルクラブが1年半から2年半かけて行っていますが、誰もがケネルコンサルタントになれるわけではなく、ブリーダーとしての知識と経験を持つ人しかなれません。さらにケネルコンサルタントは、ブリーダーのブリーディング倫理が守られているかを調べることに加え、ブリーダーに対してコンサルティングも行なっています。」

ブリーダーにとってのケネルコンサルタントは、抜き打ちチェックをする嫌な存在ではなく、むしろ何か困ったことがあれば相談役として力になってくれるありがたい存在となっているそうです。つまりケネルコンサルタントは、倫理的にも知識的にもよりよいブリーダーを育成していくために重要な役割を果たしているのです。

「ケネルクラブにはケネルクラブの原則というものがあり、ブリーディングのルール、ブリーダーのルール、譲渡のルールの3つの大きな柱で成り立っています。3本の柱それぞれに細かなルールが決められています。たとえば、メス犬が生涯に妊娠してもいい回数の上限の制定、マールの毛色同士の掛け合わせの禁止、子犬は8週齢までは母犬と共に過ごして犬や人に対して十分な社会化を施すこと、などです。これらのルールが全て守れていなければ、子犬が生まれてもケネルクラブに登録することができないようになっています。」

ケネルクラブはケネルコンサルタントだけでなく、ブリーダーを直接教育する制度も持っています。

「スウェーデンのようなケネルクラブによるブリーダーの教育制度は、日本のこれからに必要なことと思います。いかにしてよりよいブリーダーになるか、そのための手助けをケネルクラブがしています。」

ブリーダーの教育制度は、6つの基礎項目、ブリーディングに関わる法律、子犬の行動学、犬の解剖学、犬の栄養学、犬の遺伝学、犬の繁殖学について学ぶカリキュラムが組まれているそうです。

「たとえば子犬の行動学の講義では、子犬のメンタリティの発展を学びます。そこには、将来的に起こるかもしれない問題行動をなるべく未然に防ぐという目的があります。ブリーダー宅にいる8週間という期間に、子犬の生活環境と社会化訓練がその後の子犬の心身の成長にどのように影響を及ぼしていくか、8週間のうちにブリーダーが果たすべき役割は何か、犬の気質と環境との関係、母犬が子犬に与える影響、子犬同士のコミュニケーション、子犬のボディランゲージの学び方、同腹犬の中で順位はどのように確立されていくか、外的刺激の有無と子犬の感情の成長への影響、さらには、自分が繁殖する犬種の持つ生まれつきの特性がどのように発展していくかなど、実にさまざまなことを討論したりレポート提出するなどして学び、大いに考えさせられる内容となっています。」

子犬の行動学では、子犬を売るということについての教育も行われるそうです。

「子犬を売るためには飼い主からの信頼を得なければならないことはもちろんですが、ブリーダーが飼い主を選ぶということも強調しています。犬種としてのニーズ、たとえば、レトリーバーならどんな遊びが必要か?チワワなら?といったように、飼い主になろうとしている人に犬種に見合った飼育方法がきちんと伝えられること、それができる飼い主であることが大切だと考えられているからです。さらには、ブリーダーが飼い主に適切なアドバイスができるようになるために、子犬を譲渡した飼い主に対するアフターケアという内容も含まれています。」

スウェーデンではブリーダーと飼い主の関係が密接で、飼い主がしつけで困っていることや、健康問題、食餌など、分からないことがあれば何でもブリーダーに相談するという習慣があるそうです。このような習慣が、さらにいい犬を作っていくために必要と考えられているからです。

「ブリーダーはいい犬を作って売るだけではなく、その後の犬の成長を追っていくことも大切とされています。ですので、飼い主たちに向けてパピー・パーティやケネル・ミーティングを開催したり、ドッグショーや競技会への参加、メンタリティテストという犬の気質を測るテストを受けるよう勧めたり、自ら開催したりもします。このようにフォローアップをしていくことで、自分の行っているブリーディングを健康面から気質面に至る、全てにおいて確認することができるわけです。そうすることで、さらにいい犬を作ることへと繋げていけるのです。」

スウェーデンのブリーダーのほとんどはホビーブリーダー、つまり、他に主な仕事を持つ人で、そのような人々は自宅でブリーディングを行っているそうです。中にはブリーディングを生業としている人もいるそうですが、それはごくごく一部にすぎないとのことです。

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ブリーダー制度の利点

生体販売するペットショップもなく、捨て犬もいないスウェーデン。つまり、犬を飼うときには基本的にブリーダーから迎えることになります。

「子犬を得るためには、自分で下調べをしなくてはならないというのがブリーダー制度のいいところだと思います。ペットショップがなければ気軽に買うことができませんから、犬について調べざるを得ないんです。犬を迎えるにはまず、ケネルクラブや犬種クラブにどんな犬が欲しいかという電話しなくてはなりません。何も知らずに電話をすることなどできませんから、下調べが必要となってきます。たとえ何も知らなかったとしても、下調べを通じてさまざまな犬種がいることや、犬種特有の性質があることなどを学んでいくわけです。そうしてブリーターを紹介してもらって、ブリーダー宅に訪問するという流れになっています。なんとしてもその犬種を迎えたいと思っている人は、なるべく多くの知識を得てブリーダーに犬を譲ってもらえるよう、頑張っていろんなことを調べるんです。」

一方ブリーダーは、新たに飼い主になる人はどういう人なのかを知ろうとします。仕事で家を空ける時間はどのくらいなのか、どのくらい運動することができるのか、家族構成はどうなのかなど、多くのことを質問するそうです。

「ブリーダーはたいてい自宅でブリーディングを行っていますから、ブリーダー宅に訪問することで、母犬や父犬に会い、性格を知ることができます。また、兄弟犬の性格を比較することもできます。たとえ犬についてほとんど知らない素人であっても、ブリーダーの自宅でお茶を飲みながら話しをすることで、犬の世界がぼんやりと見えてくるんです。」

先ほども触れましたが、犬を新たな飼い主の元へ送りだした後もブリーダーはいつでも飼い主からの相談を受け、フォローアップを続けていきます。また飼い主側では、その犬舎出身の犬を飼う人々が集まるフェイスブックなどのネット上で、飼い主同士、犬についての会話を重ねていきます。さらにブリーダーはケネル・ミーティングやトレーニングクラスなどを定期的に開催して、実際に飼い主と犬たちが集まる機会を作ります。何も知らない人でも、いろいろな情報に触れたり経験できる機会が持てる環境へと入っていくわけです。このようにして、犬を迎えるにあたり最初は全く犬を知らなかった人でもいつの間にかさまざまな知識が備わっていき、だんだんとその犬種の世界への造詣を深めていけるのだそうです。

「たとえば私の飼っているカーリー・コーテッド・レトリーバーは、犬種の頭数自体が少なくて血が濃くなってきていることも原因で、徐々にレトリーブの性能が落ちてきていて、性格がよくない犬が増えてきていると危惧されています。ですのでブリーダーは、なるべく多くの人にミーティングや競技会に参加してもらうようにして、ブリーディングに使える犬人口そのものを増やしていこうと頑張っています。ブリーダーと飼い主が協力して、その犬種がさらによくなるように一生懸命盛り上げているんです。」

このような活動を通じて飼い主は、気質や健康、犬の持つ作業特性を大切にすることを学び、"犬っていうものは皆で作っていくものなんだ"ということに気づいていくといいます。

「誰もが最初から知っているわけではないんです。このような活動を通じて、飼い主がだんだん専門的な知識を増やしていけることが大切で、それこそが犬を飼うことの極みでもあると思います。このような状況にあることもまた、スウェーデンの特徴であると思います。」

犬を作っていくことはどういうことなのか?ケネルクラブと頂点として、皆が一丸となってよりよい犬種を作っていこうとする姿勢は本当に素晴らしいものだと感じました。スウェーデンにおけるブリーディングへの取り組みについての話はまだまだ続きます。

 

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