藤田りか子さんのセミナー「スウェーデンモデル~スウェーデンに学ぶ完全ブリーディング・コントロール」レポート(1)

尾形聡子

コメント(0)

IMGP4465.JPG

2013年9月5日、藤田りか子さんによるセミナー「スウェーデンモデル~スウェーデンに学ぶ完全ブリーディング・コントロール」が東京・青山のセミナールームにて開催されました。今回のセミナーは、藤田さんと、藤田さんの記事でもお馴染みのデンマークのドッグトレーナー、ヴィベケ・リーセさんのお二人の来日に合わせて、ドッグトレーナー養成スクール「PALYBOW Dog Trainers Academy」が主催したものです。質の高いドッグトレーナーを養成していくことを通じて"ペットの殺処分ゼロ"の社会を目指すことをスクール理念として掲げているPLAYBOWでは、専門職としてのトレーナー養成のみならず、人と犬とがよりよく共生できる社会になるためにとの思いから、一般の人々に向けてもさまざまなセミナーを積極的に企画・開催しています。

読者のみなさんと同様に、私もドッグアクチュアリー上で藤田さんの記事をいつも楽しみに読ませでいただいているのですが、実は今回のセミナーで初めて、藤田さんと実際にお会いすることができました。生の言葉が聞けるセミナーは、文章を読むのとはまた別世界。ワクワクし通しの、あっという間の2時間でした。

「スウェーデンに暮らして15年ほどになります。スウェーデンの犬の世界を見てみると、他のヨーロッパ諸国にもアメリカにもないものがたくさんあることがわかり、そのような情報を日本の皆さんに伝えたいと思うようになりました。簡単ですが、このような経緯からメディアを通じての執筆活動などを始め、今に至っています。今回は、スウェーデンが行っている取り組みを "スウェーデンモデル"と題して紹介させていただこうと思います。」

スウェーデンモデルを紹介することで、将来の日本の社会や犬文化に貢献できればと藤田さんはいいます。

「なぜ今ではなく将来なのかというと、まず、スウェーデンは殺処分問題がないということです。シェルターもほとんどありません。つまり、捨て犬問題で苦しんでいる国ではないんです。ですので、スウェーデンモデルは日本にとって、次のステップで参考になるものと思うからです。」

IMGP4459.JPG

セミナーを主催した、株式会社プレイボゥ代表取締役の森山敏彦さん。森山さんから藤田さんの紹介があり、セミナーがスタートしました。

スウェーデンの特徴:徹底した国の管理と国民の責任感の強さ

「捨て犬問題がないのはもちろん、動物愛護法がしっかりしている、動物倫理がしっかりしているということに他ならないのですが、スウェーデンという国の制度を抜きには語れません。また、動物を飼うことに対する責任感も非常に強い国民性の国だと思います。」

森と湖の国といわれるスウェーデンの人口は約920万人。東京の人口にも満たないほどです。面積は日本の1.2倍になります。

「スウェーデンの犬の飼育率は12.8%、日本は18.2%です。先進国の中で犬の飼育率がそれほど高くないのは、責任感のある飼い主が多いからだと考えています。たとえば共働きの家庭なら、犬の世話を十分できずに可哀そうな思いをさせるくらいならば飼わない、という責任感があります。飼わないのも犬への愛情のうちです。責任感は動物保険の加入率からも見てとれます。スウェーデンは80%と非常に高く、世界一です。ちなみにアメリカは7%以下、イギリスは30%ほどとなっています。」

また、スウェーデンでは国民ひとりひとりに番号をつけて全てを管理する制度がありますが、それを人についてだけでなく、動物愛護ゆえに犬にも適応しているそうです。

「スウェーデンの背番号制は人にとってはあまり喜ばしいことではないのですが、犬の管理も人同様に徹底していて、それが実にいい効果をもたらしているんです。」

スウェーデンには動物福祉に基づくしっかりとした動物愛護法があり、国民の多くがそれを順守していることで、捨て犬がいない社会が作られているといいます。

「スウェーデンの動物愛護法は、ただ犬を生かしておくだけのものではなく、犬という動物は何かということを念頭において作られています。たとえば『動物を飼う際には少なくとも1日に2回は監視していること』とあります。この文言の裏には、社会的な動物である犬をケージに入れっぱなしにするなどして社交欲を満足させてあげることができなければ、その犬は苦しんでいるということがあります。さらに『犬を家の中で飼う際には必ず規則的に家の外に出すこと、犬舎で飼う際には必ず犬舎の外にだす機会を与えること』とうたっています。また、屋外で犬をつなぐ場合は最高2時間までと決められていますので、スウェーデンには繋ぎ飼いの習慣もありません。繋ぎ飼いをしていたら、必ず近所の人に通報されてしまいます。家の中での繋ぎ飼いも禁止です。ほかにも、犬をケージに入れたままにしない、犬を店や市場で売ってはいけない、くじ引きの商品にしてはいけないなどといった細かな条文が制定されています。」

繁殖に関する条文では、メスの年齢に関する規制、自然分娩ができない場合にはそれ以降繁殖させてはいけない、強制的な交配の禁止などがあるそうです。嫌がるメス犬を無理やり交配させることはレイプと同じだとみているからだそうです。

「断耳・断尾などの美容整形も、動物愛護法で禁止されています。また、声帯の除去も禁止です。健康上の理由がない限り、決して犬の体にメスをいれないこと、そして、外科的処置はすべて獣医にまかせることとされています。例外は不妊去勢手術、マイクロチップの挿入などになります。」

スウェーデンでは国の制度として、マイクロチップの装着も法律で義務化されています。

「マイクロチップについては農林省の管轄です。マイクロチップの装着率は100%ではありませんが、92.4%という数字がでています。この数字には、法律は従順に守ろうとするスウェーデンの国民性がでていますね。また、マイクロチップの装着時には犬だけでなく飼い主の登録も行われるため、犬を捨てたとしても飼い主が誰なのかすぐに明らかになります。この制度で一番大切なのは、責任のある飼い主を作るという目的にあります。」

スウェーデンの特徴:ケネルクラブの組織力の強さ

スウェーデンでは、ケネルクラブの力が強いのも大きな特徴だといいます。そもそも犬を飼ったらケネルクラブに登録するのが普通で、ケネルクラブのいうことには犬の飼い主はみな耳を傾けるような社会になっているといいます。

「ケネルクラブが強力な組織なのは、全犬人口のおよそ82%が登録していることにもあります。そこには血統書のない純血種やミックス犬も含まれています。この登録率の高さは世界的に見ても珍しいんです。国で1頭1頭を管理している上にケネルクラブでも国内の犬のほとんどが管理されていることから、捨て犬はほぼゼロなんです。たとえ犬が逃げてしまっても、だいたい24時間以内には飼い主が見つかっています。」

つまりスウェーデンの犬は、国とケネルクラブとで二重に管理され、守られているのです。

IMGP4488.JPG

スウェーデンの特徴:不妊去勢手術に対する認識

「スウェーデンの特徴として、犬の不妊去勢の手術率が低いことも挙げられます。犬は約22%、猫は逆で約80%が手術をしています。」

このことは、健康な体にメスを入れてはいけないということから、過去にスウェーデンの動物愛護法で不妊去勢手術をしてはいけないという条文があったことによるといいます。

「80年代の終わりぐらいにこの条文は無くなり、以前に比べれば手術をする人は増えています。とはいえ、それでもまだ文化背景として根強く残っているため、不妊去勢手術は社会的に受け入れられているとは言えません。むしろ去勢していると、"どうして手術したの?"と聞かれるような環境で、去勢をすること=訓練を怠けている と取られるような風潮も残っています。」

また手術は、一般の飼い主の間だけでなくブリーダーにもあまり好ましくないとされている状況だといいます。

「ブリーダーにとっては、手術をして卵巣や精巣などを取り除いてしまうと、そこにどのような遺伝的な健康問題があるかわからなくなるので困るという側面があります。なので法律が無くなった今も、できるだけ不妊去勢手術をせずに自分できちんと管理しなさい、という空気が存在しています。同時に、可愛いウチの子の子犬が欲しいからといった、いい加減なブリーディングをしようとする空気もありません。それは、さまざまな項目をクリアしないと純血種としてケネルクラブに登録できないという、ブリーディングプログラムが非常にしっかり作られていることにもよります。」

スウェーデンの特徴:犬の保育園がとても多い

スウェーデンの人々は、犬を家に閉じ込めてはいけない、可哀そうな思いをさせてはいけない、という気持ちを強く持っているため、国内には犬の保育園がたくさんあり、とても人気があるそうです。

「ケージに長時間入れてはいけないという動物愛護法に基づいて、犬の保育園は大きめに区切られたスペースにそれぞれ犬が1、2頭いれられるような設備を持っています。犬の部屋の広さはもちろん、自然採光ができる窓がついている、床よりも高い場所に犬が横になれるスペースが設置されていることなどの細かな条件も、法律で決められています。」

犬の保育園は、ショッピングセンターの一角にも作られているそうです。

「大きなショッピングセンターになると、そのショッピングセンターが所有する犬の保育園があります。犬をそこに預けてゆっくりとショッピングをしてください、という意図ですね。もちろんショッピングセンターにある保育園も、法律で決められている条件を満たした部屋になっています。細かな条件を全てクリアしていないと、そもそも保育園や預かり所などを開くことはできません。」

スウェーデンの特徴:スウェーデンの人はレトリーバー犬種が好き

「スウェーデンにも小型犬ブームがきています。世界的に見ても小型犬はトレンドで、むしろ日本が先駆者とも言えますね。そんなこともあり、現在のスウェーデンでの人気犬種の1位はチワワです。何十年もの間ずっと、ジャーマン・シェパード(現在3位)やラブラドール(現在2位)が常に上位に君臨していましたが、そういう訳でスウェーデンでも最近は人気犬種が多様化してきています。」

そしてスウェーデンの人々は、レトリーバー犬種をとても好むのも特徴だといいます。

「2位にラブラドール、4位にゴールデン、そしてこれはヨーロッパでも非常に珍しいのですが、11位にはフラット・コーテッド・レトリーバーがいます。とにかくレトリーバー犬種が大好きな国ですね。私が思うに、スウェーデン人はアクティビティが好きな人が多いので、アクティブな犬が好きなのかと。一緒に何かしらのアクティビティをするのに、レトリーバーは最適な犬種だということです。且つ、皆と一緒に過ごす際に心地よくいられる犬、社会的に適応しやすい犬が好きだという面もあります。ほかにも、ノヴァ・スコシア・ダック・トーリング・レトリーバーという珍しいレトリーバーがいるのですが、原産国のカナダの次に登録頭数が多い国なんです。」

スウェーデンがどのような国でどのような社会なのか、犬に対する国や国民の意識を広く紹介していただいたところで、話はケネルクラブの行っているブリーディングへの試みにと進んでいきました。

 

GREEN DOGがお勧めする商品

フード選びに迷ったら。厳選お試しセット
累計注文30,000食突破(2016年7月現在)
フード選びに迷ったら。厳選お試しセット
EPA・DHA豊富!皮膚被毛の健康をサポート
EPA・DHA豊富!皮膚被毛の健康をサポート
ワイルドアラスカンサーモンオイル
獣医師も注目する「お腹の強力サポーター」
獣医師も注目する「お腹の強力サポーター」
バランスフローラ
諦めないで!歯磨き嫌いさんにはコレ
諦めないで!歯磨き嫌いさんにはコレ
ペット用歯磨きジェル 歯にマヌカ
食べきりサイズのおやつが5種類試せる!
食べきりサイズのおやつが5種類試せる!
WITH GREEN DOG ミニサイズおやつセット

dog actually ライター書籍 PickUp

「犬と遊ぶ」 レッスン テクニック: 見落としがちな「犬との遊び」は最大のトレーニング法だった! (世界のドッグスペシャリスト)
「犬と遊ぶ」 レッスン テクニック: 見落としがちな「犬との遊び」は最大のトレー… イェシカ・オーベリー (著), 藤田 りか子 (編集, 写真) 誠文堂新光社 (2015/8/20)
最新 世界の犬種大図鑑: 原産国に受け継がれた420犬種の姿形
最新 世界の犬種大図鑑: 原産国に受け継がれた420犬種の姿形 藤田 りか子 (著), リネー・ヴィレス (著, その他)
誠文堂新光社 (2015/2/24)
ドッグ・トレーナーに必要な「子犬レッスン」テクニック: 子犬の気質を読みながら、犬の語学と社会化を適切に学ばせる (犬の行動シミュレーションガイド) (犬の行動シミュレーション・ガイド)
ドッグ・トレーナーに必要な「子犬レッスン」テクニック: 子犬の気質を読みながら… ヴィベケ リーセ (著), 藤田 りか子 (編集), Vibeke Sch. Reese (原著)
誠文堂新光社 (2014/8/20)
よくわかる 犬の遺伝学: 健全性から毛色まで、知って役立つ遺伝の法則
よくわかる 犬の遺伝学: 健全性から毛色まで、知って役立つ遺伝の法則 尾形 聡子 (編集)
誠文堂新光社 (2014/1/20)
今日からチャレンジ! 楽しいローフードのすすめ
今日からチャレンジ! 楽しいローフードのすすめ カリーナ・ベス・マクドナルド (著), 森 ひとみ (翻訳), 尾形 聡子 (翻訳)
エー・ディー・サマーズ (2014/2/28)
DVDBOOK 犬はしぐさで会話する(1): ヴィベケ・リーセの犬のボディランゲージ解説 ()
DVDBOOK 犬はしぐさで会話する(1): ヴィベケ・リーセの犬のボディランゲージ解説 ヴィベケ・リーセ (著), 藤田 りか子 (編集)
誠文堂新光社 (2013/12/10)
いぬ語会話帖: 犬の言葉をシンプルに理解するためのフォトブック
いぬ語会話帖: 犬の言葉をシンプルに理解するためのフォトブック ヴィベケ・リーセ (著)
誠文堂新光社 (2014/7/10)
ドッグ・トレーナーに必要な「深読み・先読み」テクニック: 犬の行動シミュレーション・ガイド
ドッグ・トレーナーに必要な「深読み・先読み」テクニック: 犬の行動シミュレーション・ガイド ヴィベケ・S. リーセ (著), 藤田 りか子 (編集, 写真)
誠文堂新光社 (2011/8/19)
ドッグ・トレーナーに必要な「複数の犬を同時に扱う」テクニック: 犬の群れとリーダーシップについての深まる謎を解く! (犬の行動シミュレーションガイド)
ドッグ・トレーナーに必要な「複数の犬を同時に扱う」テクニック: 犬の群れとリーダーシップについての深まる謎を解く!… ヴィベケ・リーセ (著), 藤田 りか子 (著)
誠文堂新光社 (2013/4/19)
ドッグ・トレーナーに必要な 「犬に信頼される」テクニック: 「深読み・先読み」の第2弾、問題行動はこれで直せる! (犬の行動シミュレーションガイド)
ドッグ・トレーナーに必要な 「犬に信頼される」テクニック: 「深読み・先読み」の第2弾、問題行動はこれで直せる! … ヴィベケ・リーセ (著), 藤田 りか子 (著)
誠文堂新光社 (2012/11/19)

もっと見る