人類が犬を得て引き起こした環境破壊

史嶋桂

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写真はイエイヌの祖先系に近いと思われるオーストラリアのディンゴ。僕は、人類を披食者から捕食者へ転向させた一番大きな原因が、イヌ(オオカミ)の家畜化だったと考えている。犬の家畜化こそが人間を生態系のトップに押し上げたきっかけだと言う考え方だ。しかし一方で人間と犬の過去には負の側面もある事を忘れてはならない。

イエイヌは狩猟を行う社会性動物であるオオカミの子孫だ。原始時代、私たち人類も同じ様に狩猟と採集で生計を立てていた。そして異なる進化の道筋をたどりながら、オオカミと人類は驚くほど行動面で、心理面で似通った存在になっていった。その近似性のせいで、初期のイヌ(オオカミ)はみずから進んで人類の伴侶になったとさえ思えるのだ。

しかし、人類と犬の共同体は、捕食者としてあまりに強くなり過ぎた。そのため人類は地球環境の改変さえ起こしてしてしまった。今回は視点を大きく変えて「人類が犬を得て引き起こした環境破壊」について考えてみたい。

イエイヌの祖先オオカミは今からおよそ100万年前に、北アメリカの寒冷な森林地帯で進化を始めた。

一方現生人類はアフリカの熱く乾燥した平原と言う、オオカミとは異なる場所で25万年前くらいに進化を始めた。

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ホモサピエンスという種の原型に近い人々は、現在ではアフリカ南部に見られる黒人だけだと言われる。なぜならアフリカを出たホモサピエンスが、中東やヨーロッパに先住していた、ホモネアンデルタールエンシスと交雑した形跡が見つかったからだ。この交雑により我々人類は、高緯度地方に適応した薄い色の肌を手に入れた可能性がある。そして人類は日照の少ない地方でもビタミンDの生成が可能になり、寒冷な地方にも進出出来るようになったと思われるのだ。

さらに人類はオオカミ=イヌを狩猟のパートナーとして伴い、世界中に広がっていった。初期の犬はディンゴの様に狼と見分けのつかない様な姿で人類に寄り添って移動しただろう。そして生態系の頂点近くにいたオオカミを相棒にした事で、人類はそれまでの喰われる立場から、他の動物を喰う立場に変わったと僕は考えている。

野生の肉食動物の個体数は、獲物となる草食動物の数が減れば自然に減る。例外は我々ホモサピエンスだけだ。我々人類は犬を得て、さらに狩猟のための武器や手法を改善し続ける事で、他の肉食動物では不可能なくらい獲物を狩れるようになってしまった。その結果、人口の増加が始まり、人類はその増えた人口を養うために、さらなる新天地へ分布拡大をすすめざるをえなくなった。これが人類のグレートジャーニイの一因だと僕は考える。

やがて人類は農業と牧畜という手法を開発して、雑食化も進めることで、本来地球の自然環境が養いうるより遥かに多くの個体数を抱えるに至った。その初期の人類の最も強力なパートナーが家畜化されたオオカミ=イエイヌだったと僕は考えている。

仮定の話だが、オオカミと人類が最初から同じ場所で進化を始めていたら、あまりに似通ったニッチェ(生物学的隙間)のせいで、進化の初期に潰しあいになり、どちらかが消え去ったのではと思うくらい両者の狩猟行動や社会行動には似通った点が多いのだ。

少し話を戻して、人類はアフリカを出て、悪い言い方だが、僕から見るとアフリカで喰いつめて、獲物となる動物を追いながら、世界各地に広がっていった。そのグレートジャーニイの初期に、恐らくは中東のあたりで人類はオオカミを家畜化する事に成功し、自分たちの生存確率を飛躍的に向上させる事が出来た。

犬(または狼)を家畜化した人類の生存確率がどのくらい高まったか?反対の立場から見ると、人類と犬が、どのくらい大量の動植物を滅ぼしたか?を示す実例がオーストラリアで見られる。

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オーストラリアはかつて有袋類の大陸だった。およそ40,000-65,000年前のどこかで、氷河期の間にニューギニアなどと地続きとなったオーストラリアに侵入した人類は、彼らが連れていたイヌ、今ではディンゴとして知られる野犬と一緒に環境破壊と動物の大量絶滅を引き起こした。

例えば、現在のオーストラリアの植物相の顕著な特徴として、硬葉植物やセロテニーと呼ばれる種子の発芽に火が必要な植物の存在が知られる。これらの植物は乾燥や火に適応しているが、興味深いことに、その適応はヤマモガシ科、マメ科(アカシア)、フトモモ科(ユーカリ)、モクマオウなどの複数の植物群に跨って見られ、現在のオーストラリアの野生の植生には耐火性の高い森林しか残っていない。これは当時の人類が狩猟のために原生林を繰り返し焼き払った影響だと思われる。

また人類が侵入するまでオーストラリアの生態系を占めていた、大柄で動きの鈍い哺乳動物はすべて滅んでしまった。かつては気候変動に伴う砂漠の広がりなどが、オーストラリアの大型動物相を滅ぼしたとされたが、新しい光ルミネセンス年代測定法とウラン-トリウム法にもとづく年代測定は、人類とおそらくは犬が、オーストラリア大型動物相の絶滅の主原因であったことを示唆している。

なぜなら、オーストラリアのすべての大型動物相、いわゆるメガファウナの多くが、人類が初めてオーストラリアに到達した時期とほぼ同時期(約40,000年前)を境に急速に減少を始め、およそ16,100年前までの間に絶滅してしまったからだ。特に人間やイエイヌの祖先系であるディンゴと競合する大型肉食動物はすべて滅んでしまった。

絶滅を免れて、現在も生息している肉食動物は、タスマニアデビルとオオフクロネコに過ぎない。彼らも、ディンゴにより生息範囲を大幅に狭められている。タスマニアデビルは現在では、タスマニア島にのみ生息し、オオフクロネコもタスマニア島と限られた地域のみに見られ、どちらも絶滅危惧種となっている。

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ディンゴと直接競合したと思われるフクロオオカミの仲間は化石記録からオーストラリアに3000万年~1200万年前に現れ、7種類以上存在し、人類が侵入した当時の壁画から見ると、西オーストラリア州や北部準州のオーストラリア大陸に広く分布していたと思われる。しかしディンゴと直接、間接的な競合を繰り返した結果、大陸からは2000年前に姿を消し、タスマニア島のみに生き残った。しかしタスマニア島でも、家畜の害獣として白人の入植者に駆除され続け1936年にはとうとう絶滅してしまった。

この様に、化石証拠から見ると、オーストラリアでは、先史時代だけでも60種以上の動物が人類とディンゴの侵入によって滅んだ事がわかっている。これは犬を従えた人類の狩猟圧と競合力があまりに高かったからだ。僕は同じような事が犬を連れた人類が到達した世界各地で起こったと考えている。

視点を変えれば、イエイヌの祖先系であるディンゴを従えた人類(アボリジニ)の生存確率が非常に高かったため、オーストラリア大陸で独自に進化した、旧型の有袋類たちの生存確率では、全く太刀打ちできなかったと言う見方もできるだろう。

そんな風に、イエイヌを得たホモサピエンスは、自然界では無敵に近い狩猟民族として、その地の野生生物を食いつくしながら世界中に広がっていった。つまり我々人類は犬を得ることで、一躍生態系のトップに躍り出て、地球上のあらゆる生物を食餌にし、同時に滅ぼし得る力を得た事になる訳だ。

異種生物同士の共生関係が、これほど高い競合力を得た例は、生物進化の歴史上、他に類を見ない。

僕は過去を振り返り、人類を現在の地位に押し上げてくれた犬たちにもっと敬意を払うべきだと思う。そして同時に、自分たちが滅ぼしてきた生物の事を認識して、我々人類が地球環境を破壊しつつある、もっとも危険な生き物である事を再認識すべき時期に来ているとも思う。

 

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