去勢とオス犬の心理

京子アルシャー

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これまで何頭ものオス犬の去勢ビフォー/アフターを観察してきたが、こと自分の犬の観察になると、これまた深くいろんなものが見えてくる。「面白い」と言ってしまうとうちの犬の機嫌を損うかもしれないけれど、本犬の葛藤というものが手に取るように見えて、実に興味深い。

昨年5月に、うちの犬は肛門周囲腺腫瘍除去のため11歳で手術を受け、その際、腫瘍の再発防止として去勢も行ったのだった。

去勢手術後もしばらくは体内に雄性ホルモンが残っていることから、去勢の変化が現れるのは手術の3ヶ月くらい後から。傷もすっかり癒え、手術箇所の毛も充分生えそろった頃である。

しかし、去勢後の変化に気付いたのは去勢された本犬ではなく、まずは去勢されたうちの犬の匂いを嗅いだオス犬の方。これまでノーリードで未去勢のオスに出会った場合には、お互いに頭と尻尾を高く掲げ、用心深くお互いの周囲をぐるぐると回り、そして「今日はこの辺にしといてやろう」的な別れ方をしていたのが、いつしか相手のオス犬がとちゅうで「あれ?」というかのように突然力を抜くようになった。力を抜いた相手に対し、うちの犬は引き続き背中の毛を逆立てながらも、どうやら困惑している様子が見て取れる。

去勢を通したホルモン変化によって、私たちには気付くことができない匂いの変化がある。至近距離に来て匂いに気がついた相手オス犬の態度の豹変は、うちの犬の頭の中にある11年分の経験や記憶に当てはまらないようだった。

どんなにうちの犬が相手のオス犬にオス犬としての威を張ろうが、突然言葉が通じなくなったみたいに相手には通用しない。実はこうしたたった数回の経験がトラウマになり、出会う全ての犬に対し、緊張と警戒から背中の毛をブラシのように立てて向かう、そんな困惑の時期が半年ほど続いた。

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やがて未去勢オス犬達の、無警戒どころか興味津々でやってくる挨拶にも徐々に慣れてゆき、今でこそ背中の毛を酷く立てなくなったうちの犬ではあるが、マウンティングされても反撃する姿を見ると、やはり未去勢時代に培ったオス犬としてのプライドを見逃すわけにはいかない。うちの犬のへたれでびびりな性格からして、長年未去勢であったからこそ心の強さを鍛えることができたと思う一方で、未去勢であったために周囲への警戒心や威勢に相当なエネルギーを使い、常に神経を尖らせていた部分もあったことは否めない。

未去勢時代に比べ、なによりもうちの犬が大きく変わったのはマーキングの範囲である。未去勢時代には行く先々で匂いを嗅ぎ、必ず"足跡"を残さずにはいられなかったが、去勢してからは見事に場所を選ぶようになった。いつも通っている森の中ですらめったに"足跡"を残すことがなくなったのは、森の中を行き交う不特定多数の犬達への不安(自信喪失の現れ)が、去勢に伴うコルチゾール増加によって助長されたと思わざるを得ない。

さらには、これまで「行動半径100m」とも言われ、あっちの犬こっちの犬と通りすがる全ての犬に興味を持ち、なかなか帰ってこなかったうちの犬だったが、去勢後9ヶ月にもなればかなりあっさりしたもの、私の側から見事なほど(つまりは普通の犬程度)にあまり離れなくなった。これもまた自信喪失の助長に加え、雄性ホルモン由来の周辺環境への興味がシャットダウンされた影響と思われ、飼い主である私にとっては都合が良いような、ちょっと悲しいような、そんな複雑な心境である。

また、去勢したことで性ホルモンによる摂取行動制御のたがが外れ、これまで食が細く苦労したことに疑問を感じるほど食欲が増したり、目に見えて筋肉が落ちていくなど、典型的な去勢による変化が顕著に現れると、どうしても食餌を含む健康管理に力が入る。

この先は筋肉の減少に伴う靱帯強度の低下や関節炎、神経鞘の退化・減少に伴う神経症状(痴呆などの行動変化)といった心配も近い将来出てくるかもしれないことを頭の片隅に置きつつ、これまで通り森での散歩に精を出すことにしているが、そんな私の心配をよそに、本犬的には去勢後の戸惑いの時期を乗り越え、今は緊張のほぐれたゆるい犬社会を楽しめるようになったようで、そういった意味ではうちの犬は去勢により、第二の犬生が始まったようにも思える。

高齢でもあることだし、これからはゆっくりとお気楽に過ごすのも、きっと悪くないはずだ。

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