ご近所のレスキューヒーロー

ガニング亜紀

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毎日のように我が家の犬達を連れて散歩に行く公園には、何人ものお馴染みさん達がいます。ジェレミー・エバンズさんはその中の1人で、いつもシニアのジャーマンシェパードとゆったりと散歩をしている穏やかな男性です。

初めてジェレミーさんと会ったのは5年と数ヶ月前。当時の彼の相棒は上の写真のジャーマンシェパード、エミィルーでした。確か12歳で、足腰が少し弱くなっていて動きはゆっくりだったけれど、公園で誰かが犬にオヤツをあげているのを見つけるとヨタヨタしながらも目をキラキラさせて早足で近づいて来て、こんな風に座っておねだりをする愛嬌のある犬でした。

ジェレミーさんはジャーマンシェパード専門のシェルターでボランティアをしていて、いつもそのシェルターから高齢で貰い手の見つかりにくいシニア犬をアダプトして一緒に暮らしています。

「仕事で留守番をさせないといけないことも多いし、朝夕の散歩の時以外はのんびり寝て待っていてくれるシニア犬は、僕のライフスタイルにぴったりなんだよ。」

ジャーマンシェパードをこよなく愛しているジェレミーさんは、それ故に、若く体力のあるジャーマンシェパードに仕事も与えず、十分な運動もさせずにいるとどんな問題行動につながるかよく知っています。そして多くの人間が、ジャーマンシェパードは利口な犬種だから特に何もしなくても最初から人間の思う通りに動くと思っていたり、プロのトレーナーに一定期間預けて帰って来たら一生そのまま利口な犬でいてくれるというとんでもない誤解をして、間違いに気付いた時には手に負えなくてシェルターに連れて来るという現実もよくよく知っています。

ご自身もゆったりとしたエネルギーを持つジェレミーさんにとっては、シニアのジャーマンシェパードは最高のパートナーであるのです。私が初めて会った時から2年ほどしてエミィルーは天国に召されました。

「老犬を引き取って、平和で安らかな最後の数年を過ごさせてやれることは大きな喜びだ。」とジェレミーさんは言います。とは言え、高齢犬は医療費も多くかかりがちですし、引き取って数年で別れの時がやって来てしまいます。色々な面で強くなくては出来ないことでもあるなあと、しみじみと感嘆の念を抱きます。

それからしばらくして、またシニアのジャーマンシェパードと散歩をするジェレミーさんを見かけるようになりました。10歳のステラが彼の新しい相棒でした。

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エミィルーに比べるとステラはずっと活発で、10歳の大型犬とは思えぬ元気で公園を走り回っていました。海や山にも連れて行ってもらい、本当に充実した最後の数年をジェレミーさんとともに過ごし、今年の初夏、天国へと旅立ちました。

ステラは風邪をこじらせて肺炎になってしまい、それが死因となったのですが、さすがのジェレミーさんも「自分がもっと気をつけていれば」とずいぶん落ち込んでいらしたそうです。愛する者との別れというのは、何度遭遇しても慣れるということはないものですね。

けれどつい最近、ジェイミーさんが新しいシニア犬をアダプトしたと公園散歩仲間から聞いて少しホッとしたところです。残念ながらまだジェイミーさんの新しい相棒には会っていないけれど、きっとまたゆったりした優しい表情のジャーマンシェパードなのでしょう。

さて、この記事を書くにあたってジェレミーさんがボランティアをしているシェルターGerman Shepherd Rescue in Burbankのことを調べていたら、7月12日付けのLos Angeles Timesのコラムに行き当たりました。とてもいい話だったので、こちらも併せてご紹介したいと思います。

2011年の冬のこと、ロサンゼルス東部に位置するサンガブリエルバレーの動物救急センターに一頭のジャーマンシェパードが連れて来られました。廃屋にエサも水もないままつながれて放置されていた犬を見かねた匿名の善意の人が連れて来たのです。体の半分は毛が抜け落ちてカサブタに覆われ、体重はあるべき姿の約半分しか無い状態、そして体全体から酷い悪臭を放っていました。

診察に当たったパトロガー獣医師は、一目見て「これは安楽死させてやるのが一番いいかもしれない」と思いました。しかし、犬に向かってひざまずき「お前、酷い様子じゃないか」と声をかけると、その犬はペロリとパトロガー獣医師の顔をひと舐めして答えました。この全く攻撃性のないところに、獣医師は「ああ、きっと番犬にもならないという理由で捨てられたんだ」と悟りました。

結局、パトロガー獣医師は彼自身の愛犬によく似た面影のあるこの犬を安楽死させることも放置することもできなくて、犬をしばらくクリニックで預かることにしました。心の中では「自分はこの犬を救ったのだろうか?それともただ苦しみを引き伸してしまっただけなのだろうか?」と葛藤しながら。

そのジャーマンシェパードはSidというニックネームをもらいました。Skinny Itchy Dog(ガリガリでカイカイの犬)という有り難くない呼び名の頭文字を取って(笑)

Sidは皮膚のトラブルだけでなく、手術の必要な歯のトラブル、様々な感染症など多くの問題を抱えていました。クリニックのスタッフ達はクチコミやフェイスブックなどを使ってなんとか里親を探そうとしたのですが、成果はないまま3ヶ月が過ぎました。

そして最後の手段、クリニックの顧客の一人であるビバリーヒルズの著名な音楽プロデューサーで、動物保護に積極的に協力している人物に助けを依頼しました。プロデューサー氏はすぐにクリニックにやって来てSidに対面しました。
「う〜ん。このガリガリハゲハゲの犬を欲しがる人はいないよなあ。」
しかし彼はすぐにSidの写真を撮り、その場で南カリフォルニア中のレスキューグループにメールを送信して引き取り手を探し始めました。

その中でただ一件、レスポンスをして来たのがGerman Shepherd Rescue in Burbankだったのです。ここは私営のNo killシェルターで運営は全てボランティアと寄付金、そして里親希望者が支払うアダプション料金によって成り立っています。

Sidとシェルター担当者の面接の結果、Sidは無事引き取られることになりました。しかしこの時点でも、担当者もパトロガー獣医師も「本当にこの犬の貰い手は見つかるんだろうか?」と不安に思っていました。

さて、Sidがやって来たシェルターのボランティアリーダーが、先にお話ししたエミィルーとステラの飼い主のジェレミー・エバンズさんです。犬のいち飼い主としては積極的にシニア犬を引き取り、彼らとの生活を楽しんでいるジェレミーさんですが、シェルターを運営するリーダーとしては若くて見た目もきれいな犬が必要なのです。そういうきれいな犬はすぐに引き取り手が見つかり、シェルターに居る他の犬達をケアする為のアダプション料金を引き出してくれるからです。

彼はしばしば夜中にふと目が覚めて、シェルターに引き取ることのできなかったシニア犬達の顔を思い出すと言います。
「引き取れなかった犬達に対して、まるで自分が死刑宣告をしたような気持ちになるんですよ。」
けれど実際問題として、「いったいこのSidにどうやって引き取り手を見つけたらいいんだ?」と頭を抱えてもいました。

シェルターのボランティアの中に、女優でドッグトレーナーのベサニー・ウィルソンさんという女性がいました。彼女は犬達を散歩させる為に週末のボランティアに来ていましたが、その度に簡単なコマンドやアイコンタクトを教えていました。こういうちょっとしたことが、犬達の譲渡率をグンとアップさせることにつながるからです。けれどもSidは、アイコンタクトを覚えることが出来ずにいました。何人かの面会希望者が現れ、Noの返事を返され、ベサニーさんは途方に暮れていました。

そして2011年9月10日、また新たな面会希望者がSidのところにやって来ました。しかし彼はアイコンタクトを拒否し、希望者が持参したビスケットを無視し続けました。ボランティアのベサニーさんはついに声に出して「誰も彼をもらってなんてくれないわ」と言ってしまいました。

しかしそのビスケットを拒否された人こそが、現在のSidの飼い主さんになりました。

レネー・リンチさんというその女性は、シェルターに来たその前日に13歳のシェパードミックスの愛犬をガンで見送ったばかりでした。彼女とご主人は「シェルターにいる誰も貰い手のない犬をアダプトしよう」と決めてやって来たそうです。

Sidはクリニックやシェルターの多くの人に涙で見送られ、新しい生活をスタートしました。

ハゲとカサブタばかりだった背中はフサフサした毛並みにおおわれ、体重もグッと増え、毎日レネーさんとの散歩を楽しんでいます。彼は今はSkinny Itchy Dogではなくて、ランボーという名で呼ばれています。

ランボーの今の幸せを作ったのはどこかのスーパーヒーローではありません。ご近所にいるようなごくごく普通の人々の少しずつの善意と協力が、「安楽死しかないかもしれない」と思われた犬の幸せな現在と未来を作りました。

ランボーの過去と現在は、こちらの動画にまとめられています。少し長いですが、とても感慨深い動画なのでぜひご覧になってみて下さい。

<参考サイト>
Los Angeles Times "A Dog's Many Best Friends"

プロのカメラマンであるジェレミーさんのサイトです。素敵な犬の写真がたくさんアップされています。
http://evansdp.phanfare.com/3865455

 

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