スパニッシュ・ウォーター・ドッグの故郷を訪ねて

尾形聡子

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アンダルシア地方カディスにある街のひとつ、ウブリケ。山間の中に白い壁の家がひしめき合うように建ち並んでいます。

スペイン南部にあるアンダルシア地方。思い返せば10年ほど前から幾度となくその地名を目にし、スペインにも一度も行ったことがないというのに、いつの日かこの地を訪れてみたいという夢を抱いていました。理由はとても単純なもので、共に暮らし始めてから8年が過ぎた犬たち、スパニッシュ・ウォーター・ドッグ(SWD)の故郷であること、そして、ウブリケ(Ubrique)という街に暮らす SWD の犬種基準を作ったブリーダーさんの犬舎を訪れてみたかったからです。そんな夢が現実となるチャンスは突然、この夏に訪れました。

千載一遇のチャンスを作ってくれたのは、イギリスに暮らす、同じく SWD のボリスくん。ボリスくんがきっかけとなってイギリスに住む Brewster ご夫妻と知りあうことができ、その繋がりから、SWD のスタンダードを作ったブリーダー、アントニオさんの犬舎があるお宅に Brewster 夫妻と一緒に滞在させていただくことができたのです。

ロンドンから飛行機に乗り、スペインのヘレス空港に着いたのは夜の10時過ぎ。ちょうど日が暮れはじめた頃でした。アントニオさんが直々に迎えに来てくださり、そのまま車に乗ってウブリケの街へ。その日はちょうど夏祭りのようなものが開催されており、ウブリケの街出身のデザイナー(Eskaparate というファッションブランド)が作った衣装を身にまとった女性たちが、街の中心部に設置されたステージを闊歩している姿がいきなり目に飛び込んできました。ああ、本当にスペインに来たのだなあとそこで改めて実感したものです。しかも早速に、SWD を連れた家族をそこで見かけました。こんなにも普通に街を歩いているとは!

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色とりどりの衣装がとても素敵でした。スペインの人々はとても陽気でおしゃべり好きです。スペインといえばシエスタ(昼寝)の習慣があることをご存知の方も多いことでしょう。とりわけ、南部に位置するアンダルシア地方の夏の暑さは厳しく、とにかく昼間が長いのです。なので、食事の時間が日本とは全く違い、朝食は10時くらい、昼食は午後3時くらい、昼食の後に昼寝をしたい人は軽くします。夜食は日が暮れたあとの午後10時を過ぎてから。1日の中でもなるべく涼しい時間帯に行動するという習慣が今もなお残っています。そんな生活習慣もあって、アンダルシアの人々は子どもからお年寄りまでみな宵っ張りでした。

ウブリケの街の中心部から山の方へ上がっていった所に、アントニオさんの犬舎「Perro de Agua Español de Ubrique」があります。犬たちがいっぱい。とにかくいっぱい。SWD の成犬は、アントニオさんの犬から預かりの犬まで含めると20頭ほどいました。私がお世話になった10日間のあいだに子犬は入れ替わり立ち替わりしたものの、常に6頭くらいいました。本場もまさに本場の SWD をこれほどまでたくさん一度に目の当たりにして、めまいがしそうなほどの興奮を覚えたものです。その他にも、野生動物などから犬を守る番犬としてスパニッシュ・マスティフが2頭、ネズミ対策にラット・テリアが1頭いました。

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犬舎とアジリティの道具が右手に見えます。日本の山間の景色とは趣を異にする独特の美しさ。犬舎はこのプール付きの犬舎と、日中の強烈な日差しを遮るために木陰に作られた犬舎と2つありました。また、アントニオさんの行っている SWD のアジリティはうんてい型をした梯子競技のようなもので、いわゆる一般のアジリティとは異なります。とはいえ一般のアジリティでも SWD の実力は素晴らしいです。今年のクラフツで開催されたアジリティ大会、中型犬の部で優勝した SWD の様子はこちらからご覧いただけます

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さまざまなコートカラーやパターンを持つ犬舎の犬たち。

SWD の起源については正確なことは分かっておらず、さまざまな説があるものの、1000年以上も昔から今に至るまで、アンダルシア地方の険しい山間でヤギや羊を追う牧羊犬として働いています。古くから存在する犬種にもかかわらず、FCI で正式に公認犬種とされたのは、今から遡ること10数年前の1999年こと。まさに SWD の地元で小さいときから SWD を見て育ったアントニオさんの長年にわたる努力なくしては、この犬種が犬種として世界的に知られることはなかったかもしれないのです。SWD の父といっても決して過言ではないアントニオさんの本職は、英語教師。流暢に英語を操れることもまた、世界各国のブリーダーたちに SWD たるものをしっかり伝え続けることができる大きな武器ともなっているのだと思います。

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[photo by Noriko Brewster]
SWD の作業特性を大切にしているアントニオさんは、スペインの SWD クラブ(Asociación Española del Perro de Agua Español)でさまざまなコンペティションを開催しています。写真はそのひとつ、ハーディング・コンペティションでのひとコマ。アントニオさんと彼の犬舎の犬。アントニオさんのおじいさんはまさにヤギ飼いをされていたそうで、もちろん、SWD と共にヤギや羊を集めていたそうです。ちなみに、この8月に行われるウォーター・トライアルのポスターに、サーフボードに乗っている私を犬がけん引して泳いでいる写真を載せてくださいました。嬉しい旅の思い出です。

また SWD の名前にあるように、SWD は無類な水好きの犬種です。そんな特性を生かして漁師の手伝いをしてきたほか、水鳥の狩猟や高地での狩猟にも使われていたそうです。現在では探索犬や救助犬、爆発物の探知犬などとしても働いており、マルチな才能を持つ犬ともいえます。

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ひとつ上の写真でハーディングをしている犬は泳ぐのも得意(写真手前)。この2頭は兄弟犬で(奥がメス、手前がオス)、いずれも泳ぐのはもちろん、垂直に潜ることもできます。この場所でも、SWD を連れて遊びに来ている人と会いました。

SWD は昔からの特性を兼ね備えたまま、今も昔も変わらずにアンダルシアの山間で人と共に生き続けています。アントニオさんの犬舎の犬たちを見て、アンダルシア大自然の厳しい夏を過ごすことができる精神的なタフさと肉体的な逞しさが、ダイレクトに伝わってきました。本能的な面に野生が色濃く残されている、そんな印象です。気が遠くなるような暑くて長い昼間の時間は、よほどのことがなければゴロゴロと寝ています。日の傾きが変わって影が移動すれば、起き上がって日陰に移動する。それでも暑ければ身体を冷やすためにプールに入る。何も教わらずとも、アンダルシアの自然の中で生きていくためにはどうしたらいいのかを熟知している犬種だからこそなのでしょう。

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昼間の暑い時間を寝てやり過ごす犬たち。

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SWD はもちろんですが、初めて会ったスパニッシュ・マスティフの魅力にもすっかり虜になりました。

お世話になった10日間はあっという間に過ぎていきました。その中で感じたことは、アントニオさんの犬たちに対する一貫した態度です。して良いことと悪いことが非常にはっきりしていて、犬たちはそれをとてもよく理解しています。そして、アントニオさんが SWD という犬をどれほどまで理解しているのか、底知れないものを感じました。犬種を熟知しているからこそ、どのように接したらいいのかということが頭で考える必要などないほどに、身体に染みわたっているからなのでしょう。そうでなければ、常に何十頭もの犬を育て、且つ、他の犬舎とも連絡を取り合いながら、SWD という犬種を守り続けるべく繁殖をすることなど不可能だと思うのです。また、犬に食餌を与えることが大好きだというアントニオさん。食餌はもちろん、犬の健康をトータルに考えています。犬舎の犬たちはみなアントニオさんに声をかけられるのを心待ちにしており、泳いだり走ったりといったさまざまなアクティビティをするために選ばれた犬は、それはそれは大喜び。この瞬間を待っていましたといわんばかりに、素晴らしい集中力と身体能力を披露してくれました。犬舎を訪れてさまざまなことを肌身で感じることができ、私自身学ぶことがとても多く、本当に貴重な経験をさせていただくことができました。健康であるからこそ、その犬の魅力が十二分に発揮される、そんな想いがまた一段と強くなりました。

最後に、スペインの SWD クラブ(Asociación Española del Perro de Agua Español)で開催されている様々なデモンストレーションが編集された、動く SWD をご覧いただける映像と、このような素晴らしい旅にご一緒させていただいたBrewster 夫人ことプロカメラマンでもある Noriko Brewster さんの SWD の、躍動感あふれるショットをお楽しみください。

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[photo by Noriko Brewster]

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[photo by Noriko Brewster]
母犬に寄り添いながら一緒に泳ぐ子犬。こんな小さな子犬でもすでに泳ぐことを知っています。

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[photo by Noriko Brewster]

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[photo by Noriko Brewster]

 

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