シーザー・ミランのライブショー、デンマークで講演中止になっていた

藤田りか子

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シーザー・ミランのライブショー、デンマークで講演中止になっていた-画像その1

ミラン氏の訓練哲学は、オオカミの社会に倣った「アルファ」制度を適用することでも有名だ。

犬好きの人なら、シーザー・ミラン氏を知らない人はおるまい。アメリカ在住の世界のカリスマ・ドッグトレーナーだ。ただし彼の訓練方法は、時にショックカラーやスパイクカラーを使う、あるいは、身体的にかなり強引な方法にでるので、カリスマながらも世界中で批判も受けている。

そして、約一年前の話になるが、実は北欧デンマークではシーザー・ミランのライブショーは、講演の直前にキャンセルとなっていた。その代わり、氏は隣の国のスウェーデンで追加の講演を行った。もちろん、いろいろな理由がうわさになって飛びまくったものだが、結局デンマークではなんとケネルクラブ自身が前に出て、彼の訓練方法に批判と警告を唱えていた。それはプレスリリースにてもケネルクラブから発表されている。 動物愛護団体も数年前から声高に非難をしていた。よってデンマークでは、ミラン氏に対してすっかり世論ができあがっていたものと察せられる。そんな国にておちおちライブショーを行った末は...?暗殺でもしかねられない...?

私は、ミラン氏の番組をよく見ていたファンでもないし、また特に人に「シーザーの方法はやめろ」と批判の提唱もしないが、ケネルクラブをも巻き込んで、一人のドッグトレーナーのメソッドがこんなにも大衆的な物議を醸し出している事実にびっくりしてしまった。というわけで、北欧にいるという地元人の利点を活かして、客観的にこの地で起きていたことを話したい。

なお、デンマーク・ケネルクラブから出された、シーザーミラン方法への警告とプレスリリースはこちらを見られたい。その概ねの趣旨は、氏の方法はあまりにも強引すぎて、ケネルクラブが唱えるトレーニング倫理ポリシーに外れる、というものだ。ケネルクラブにて専任の犬の行動コンサルタントを務めるリゼ・ロッテ・クリスチャンセンさんは、そこでこう述べている。

「確かにミラン氏のやり方で、上辺だけ行動を直すことができるでしょう。しかし、問題行動がどうして起きているか、というその根本から見直しをはかっていない。犬は単に問題行動を出さないように抑圧されているだけ。実際の犬の気持ちと感情については(どうして攻撃行動を起こすのか)、なんの問題解決にもなっていない」

ちなみに、ケネルクラブが専門の行動のコンサルタントを抱えているというのは興味深い。これはもちろん全てとはいわないが、欧米の多くのケネルクラブで行われていることだ。日本にも、そんなシステムが導入されるべきだろう。今やそういう時代...。

シーザー・ミランのライブショー、デンマークで講演中止になっていた-画像その2

デンマークやスウェーデンの北欧諸国では、ショックカラー、あるいはスパイク・チェーンの使用は法律で禁止されている。

この騒動で特に面白い発見となったのは、ケネルクラブは犬を扱う団体として動物愛護や繁殖の倫理を強く打ち立てているだけではなく、訓練についての倫理をも明確に記していたところである。これも、現代らしい現象といわずになんと言おう。一昔前では、人々は訓練ということにすら興味もなかった。しかし今や、しつけや訓練は犬を飼うならば必須の事項。だからこそ、そこに倫理的な考慮がなされていなければならない。デンマーク・ケネルクラブから出されている犬の訓練倫理の声明書によると、

「犬の訓練と学習は、犬にとって「優しい」方法あるいはテクニックを用いて行うこと。そしてある行動を仕込むためには、ポジティブなモチベーションそしてご褒美をベースとした方法をとること」
「罰、あるいは矯正は、学習には受けいられる方法ではない。犬をポジティブな気持ちにしたければ、これら方法は是非使わないことである」

デンマークのケネルクラブによる訓練倫理声明書は学習理論の説も取り入れており、かなり「現代的」である。それに比べてスウェーデンのケネルクラブの声明書では
「犬を必要以上に厳しく罰しないこと」
となっている。「必要以上に」という言葉では、いまひとつ具体的なイメージがつかめない。

シーザー・ミランのライブショー、デンマークで講演中止になっていた-画像その3

デンマークの軍隊における訓練のシーンから。この犬は実際にアフガニスタンに出向いた、戦闘軍に属する筋金入りの軍用犬。しかし、ドッグハンドラーの左手にはクリッカーが握られていた!軍用犬とはいえ、いまやポジティブ訓練が元になっているのだ。

スウェーデンは、世界でも動物倫理(及び全ての家畜動物)が非常に発達している国だが、訓練の方法論にはかなりの自由を与えているとも解釈できる。スウェーデンケネルクラブ、さらにロイヤル・カナン等がスポンサーとなって、昨年大きなインターナショナル・ドッグショーにてミラン氏を招き、ライブショーを行っている。もちろん、その後、火花を散らしたようなディベートが繰り広げられたのは言うまでもない。そして、今年もツアーが決定されている。

前回の講演に対して、ケネルクラブはすぐにプレスリリースを出した(この反応の素早さ、やはりミラン氏の現象が大衆の間でただごとではないことを物語る)。

「犬の訓練にはさまざまな方法があるわけで、そのどれを選択するか、というのはあくまでも飼い主の責任においてなされること。この意味でケネルクラブは各々の訓練の方法に対して、こうあるべきという意見は持ちたくない」とスウェーデンケネルクラブは主張する。

ただしあくまでも動物保護法が守られている枠組みの中で、である。

スウェーデンもデンマークも、スパイクカラーやショック・カラーが法律で禁止されている。しかしアメリカで活躍するミラン氏は時に、これら道具を使って犬を訓練することもある(もちろんスウェーデン講演ではこれら方法は見せなかった)。北欧諸国で圧倒的な人気を誇る訓練士であり行動コンサルタントのスウェーデン人、エヴァ・ボッドフェルトさんは、スウェーデンケネルクラブに批判的である。彼女はこう語る。

「アメリカは、これら首輪に対して法的規制されていない国なんです。ほとんどの犬は去勢、避妊手術を受けている(スウェーデンでは去勢に対して批判的。この記事を参考)。そして多くの犬がケージに閉じ込められて、あまり散歩を受けていない。どうしてそんな国で培われた訓練方法を、動物倫理観が普及してポジティブ訓練がすでに早い時期から確立されている私たちのような国に、わざわざ輸入する必要があるのですか?」

いわば、アメリカの犬気候とスウェーデンのそれが、ちょっと違うんじゃないの、なのにそれをまるごと持ってきて、果たしてスウェーデンの犬文化にマッチするのか、といいたいのだ。そして、自分たちの持ついいものを大切にしよう、何も倫理観を捨て、訓練方法までてアメリカ崇拝になることはない、と彼女は自国のスウェーデン人達に言い聞かせている。その証拠にエヴァさんは、例えばレトリーバーのファンが原産国イギリスのなすことを、まるで疑問も持たずに何でも真似している事実も指摘した。

日本の犬文化であれば、果たしてどの立場にたつのだろうか。

 

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