
私事で恐縮ですが、1月の下旬から2週間日本に一時帰国をしておりました。
ちょうど当dog actuallyのライターの一人である京子アルシャーさんもセミナー開催のために帰国中で、大阪北部の能勢町にある動物保護のNPO団体
アニマルレフュージ関西(ARK)さんに見学に行くとのことでしたので、私も同行して参りました。
そんなわけで今回は、普段アメリカに住む私の目から見たARKさん訪問記をご紹介いたします。
犬達は単独またはルームメイトとともに、このような仕切りのある犬舎で暮らしている。それぞれに寝室となる小屋が備えつけられており、中には毛布や暖房が用意されていた。手作り風の造りではあるが、動物たちの快適性が実によく考えられていて、その点では筆者が今までに見聞きしてきたアメリカのいくつかの動物シェルターに比べても遜色のないものだった。
アニマルレフュージ関西(ARK)さんは1990年に、英国人であるエリザベス・オリバーさんによって設立された非営利団体です。日本でも有数の名の知れた団体ですので、ご存じの方も多いかと思いますが詳しい歴史などは
こちらをご参照ください。
大阪府の北西部、京都府と兵庫県の接点に位置する能勢町は、大阪市の中心から電車で1時間とは思えない山間地区です。アークの施設が近づいてくると、犬達を散歩させるスタッフの方々が見受けられ、ノーリードでのどかに歩く犬もちらほらといました。
現在アークには犬180頭猫150頭、その他にうさぎや鶏などの動物が暮らしているのですが、施設の中は意外なほどに静かで落ち着いた雰囲気でした。もちろん時折犬の吠える声は聞こえてくるものの、施設に入った途端に耳をつんざくような犬達の声に迎えられるということはありません。私がアメリカで訪問したことのあるいくつかのシェルターでは、耳鳴りとめまいを起こしそうなほど犬の吠え声の酷い場所もありましたし、そういう施設の犬達は顔を見ても声を聞いても、いかにもストレスをため込んでいる様子が見てとれたものですが、アークで暮らす犬達の大半は穏やかな様子をしていました。
犬舎に近付くと、好奇心いっぱいで近寄ってくる人懐こくて可愛らしい犬が多い。中型の雑種犬が多いが、最近では小型犬の保護も増えていると言う。特に増えているのはミニチュアダックスフント。人気犬種トップの座がトイプードルに入れ替わり、繁殖業者が放棄する例も多いというお話に胸が締め付けられた。
代表のエリザベス・オリバーさん自らが案内をして下さり、次々に犬舎や猫舎、施設内のトリミングやクリニックの施設、食餌の準備をされる様子を拝見していきます。元々はオリバーさんのご自宅である場所に少しずつ増築していった施設ですが、とても整然とシステマティックに運営されていました。どこも清潔でニオイの気になる場所などはありません。
動物たちの食餌はこうして1日分ずつに分けて管理されている。トレーニング時のご褒美などもこの1日分の中から与えられるので、食餌量の過不足がない。
このようにアークでは、数百頭の動物達が30名のスタッフと十数名のボランティアの方々から世話をされながら、自分たちを迎え入れてくれる新しい家族を待っています。オリバーさんは「でもいくらここで手厚い世話を受けていても、やはり自分だけの家族ができた子というのは本当に変わります。顔つきもすっかり穏やかになりますね。」とおっしゃいます。
東日本大震災の後は、福島の原発避難区域から保護してきた動物達も数多く受け入れて来ました。しかし東北から保護されてきた犬達は庭につなぎっ放しの外飼いという飼われ方の犬も多く、犬同士の社会化が全くできていないため先に紹介した犬舎の中でも他の犬と一緒にすることができずに単独で過ごしています。そのような犬であってもいったん新しい家族に引き取られると久しぶりにアークを訪れたりする時には、まるで別の犬のようになって他の犬と楽しく遊ぶようになりスタッフを驚かせることも多いそうです。胸の痛むお話も数多く聞きましたが、こんなお話を伺うと犬という生き物の限りない可能性に心が大きく救われる気がしました。
左がアーク代表のオリバーさん、右がスタッフのお一人岡本さん。お二人からたいへん有意義なお話を伺うことができました。
以前に
「レスキュー活動におけるビジネス的視点」という記事で、ビジネスにおけるマーケティングやマーチャンダイジングの考え方でレスキュー活動にあたることの大切さをご紹介したことがあります。アークの活動を拝見していると、まさにそのビジネス的視点で動いていらっしゃるなと感じました。(レスキュー活動をビジネスにしているという意味ではありません。詳しくはリンクをご参照ください。)
徹底した避妊去勢手術の実行(生産量の管理の視点)保護犬のトレーニング(品質管理の視点)欠点も含めた犬の性質を伝えること(情報開示の視点)。さらにアークが定期的に催している、
GEORGEや
GREENDOGといった色々な意味で意識の高い飼い主さんの集まるショップの店頭での里親会はレスキュー活動に対する世間の見方を明るいものへと導いていけるだろうなと感じました。
アークで販売している可愛いデザインのミニバッグ。お散歩バッグにぴったりのサイズ。こんなちょっと洒落たデザインの小物や写真の美しいカレンダーなどはオンラインでの購入も可能。売り上げはもちろん活動資金にあてられる。
アークの施設の運営の仕方や、活動のノウハウはアメリカの成功しているレスキュー団体とほとんど違いがありません。ではアメリカと比べて大きな違いは何か?それはやはり犬やレスキュー活動を取り巻く周囲の環境です。岡本さんから人手や資金の確保のご苦労のお話を伺っていると、ボランティアや寄付に関して一般の人が感じる敷居の高さはやはり日米の大きな違いだなあと改めて実感しました。
避妊去勢手術への抵抗感が高いことやマイクロチップの普及率の低さなどの飼い主側の意識を変えていくことと、繁殖業者や販売業者への規制などの行政から変えていかなくてはいけないこと。今までにも言い尽くされてきたことばかりではありますが、実際にオリバーさんや岡本さんのお話を伺うことで、日本の動物保護活動が取り組んでいくべき方向がよりクリアになった感があります。
現在兵庫県の篠山に
「アーク国際動物福祉センター」建設の計画が進められています。7000坪の土地に近代的なシェルターやドッグランが設置される予定。
イギリスのDogs Trustをモデルとするこの施設は、完成すれば日本で初めての本格的な私設シェルターとなり、日本の動物福祉史に残るものとなることでしょう。今の所下水設備やドッグランの工事は完了しているそうです。
これから本格的に建物の建築に取り掛かるに当たり、まだまだ資金の確保が必要だということです。興味を持たれた方はぜひ上のリンクから詳細をご覧になってみて下さいね。
日本の動物保護団体の草分け的存在であるアークさんを実際に見て、お話を聞くことができたことは本当に素晴らしい経験でした。日本の犬を取り巻く環境を少しでも良くしていけるよう、微力ながら力を尽くしていこうと改めて思いを強くしたことに感謝の気持ちを申し上げます。
レスキュー活動の継続性という視点からも「ビジネス的視点」は欠かせないと思います。破綻し、レスキュー活動が続けられなくなれば、結局、不幸な動物を救えなくなるわけですから。