
年末のニュースで環境省が「犬猫の深夜販売に対する規制」を導入する方針を決定したことが報道された。
普段動物保護問題に関わっていない人達にとってみれば、子犬や子猫が深夜営業のペットショップで販売されていることすら初耳かもしれないが、幼少の動物にとって生活のリズムと休息の時間が大切であろうことは科学的な証明がどうのと問いただされる以前に、本来一般良識の範囲内で理解できるまさに愛護の本質ではないだろうかと思うが、とりあえず、これでヒトの金稼ぎのネタとして振り回される幼齢動物たちの状況改善は一歩踏み出したということだ。
そうすると次はペットショップでの8週齢以下の子犬子猫販売に対する規制が焦点となる。
なぜ「8週齢以下の子犬を店頭で販売してはいけないか」という問題については、あちこちで話されているのであえてここで掘り返すことはしない。詳しくは過去記事「なぜ子犬の販売に「8週齢規制」が必要か?(2)」をご参考いただくとして、ただ、ここに来てあちこちで「8週齢」という数字ばかりが取沙汰されてしまい、それを見ている側としてはどうしても今一度8週齢の持つ意味をもっと深く現実的に考えてもらわなくては、どうも規制の行く末が心配で仕方ない。
この記事の中で当時
もし仮に8週齢まで親兄弟から離してはいけないという規制がされたとしよう。しかし、いわゆるパピーミルと呼ばれる犬の繁殖場の状況を考えると、狭い檻の中で母子共々ギューギュー詰めになって8週齢まで過ごすというのでは全く意味がない。だから、8週齢規制を行うのであれば最低限それに付随する繁殖犬と子犬の飼育環境への条件付けも合わせてするべきである。もちろん8週齢以上の犬を販売するとしてもそのための飼育条件が伴わなくてはならないということを、絶対に忘れて欲しくない。
と書いた。
実は8週齢規制で一番大事な部分はここなのだ。
8週齢でも7週齢でも9週齢でも、とにかく大事なのは犬の成長時期をただ数字で区切ることではなく、その週齢まで子犬がどのような環境に置かれるかということだ。
子犬の販売週齢規制をしている国のひとつ、ドイツの「犬の保護に関する条例」の中で「子犬を8週齢まで母犬から引き離してはならない、またやむなく引き離す時は8週齢まで同胎犬と一緒に過ごさせること」とあるのは、あくまでも犬の生活環境条件に細かな規制があり、日本のようなペットショップでの店頭販売がなく、子犬達は「母犬や兄弟犬から引き離される=新しい家族の元に譲渡される」という前提がある。
ドイツで生まれる子犬は母犬や兄弟犬から引き離された後にひとりぼっちで暗い箱に詰められてガタゴトと何時間も流通させられることも、無機質なケージの中に閉じ込められて行き交うヒトの目にさらされるだけの日々を送ることもない。だからこそ、ドイツでの8週齢規制は意味を持つ。
「子犬が譲渡され、譲渡先の生活環境変化に対して十分な対応準備が出来上がる期間をいつ頃までとすれば良いか」という最低期間こそが8週という数字で決められているのであり、8週齢規制を通して子犬に「母犬や兄弟犬とともに過ごすことで、将来行きてゆくであろう人間社会や犬社会そして自然の環境に対する順応性を身に付けてゆく機会を与えること」と「その機会を通して育まれるべき正常行動の正常な発育を保証すること」ということをドイツの法は意図しているのである。

もしも日本での子犬の販売週齢が子犬の社会化臨界期である7週齢前後で単に数字で区切られるとしても、それまでの時期に子犬がただ四角く囲われ刺激のない生活環境に置かれて育つのでは、社会性について学べる環境に置かれているとはいえない。また、臨界期を過ぎたからと言ってすぐに親兄弟から引き離し、無機質な個別ケージに放り込んで良いかというとそんなわけはない。
つまり、子犬の社会化の時期をもって販売週齢を規制したいならば、子犬が社会化期をどう過ごすか、まず真剣に検討されるべきではないだろうか。数字にこだわる一方で、子犬の過ごす環境について現在どれだけの議論がなされているかは疑問だ。
社会化の持つ意味合いは犬同士の接触や交流に慣れるということだけではなく、子犬が将来生きてゆく環境、つまり犬以外にもヒトとの接触や音・素材・動く物といった様々な状況を含む周辺環境に対して慣れることが、家庭犬としての社会化の意味である。
また、反対派の掲げる「8週齢まで母犬と一緒に過ごさせるとヒトに馴れなくなる」というのは、そもそも母犬自体にヒトとの接触や関わりが極めて少ないことを物語り、問題なのは子犬の週齢ではなく、そのような状況こそが改善されるべき点なのだ。ブリーダーはただ雌犬に子犬を産ませればよいというものではなく、その重要課題の一つに、子犬に備わっているべき「ヒト社会・犬社会で生きてゆくための心の準備」というものをどれだけ丹念に行うかがあるはずだ。この課題がないがしろにされているから、今いろいろと問題なのである。
世の議論が週齢にこだわるのはまず経済効果が絡むから。その経済のために「流通」という子犬にとって不必要で不自然な状況に日本の多くの子犬たちは置かれる。しかし、経済的には「物」「商品」として扱われる犬は、倫理的には「生き物」である。販売週齢の規制を行うのであれば、繁殖現場の環境規制も同時に行わなければ倫理的な改善は見込めず、動物愛護として片手落ちで表面的なお粗末対応になりかねない、とあえて厳しく指摘したい。
犬として正常な精神成長の発展とヒト社会への馴化を滞ることなく同時進行させ、子犬が将来社会に適応できる基盤をしっかりと築ける健全な繁殖環境を整えることは倫理として経済よりも優先されるべきことのはずであり、その上で子犬は社会生活のためにどれだけの準備期間をとればよいかが検討されるなら、週齢規制は本当に意義のあるものになることが期待されるだろう。
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はじめてコメントさせていただきます。
「ジュルのしっぽ」というブログを管理している山崎と申します。
アルシャーさんの記事に触発されて、わたしも記事を書きました。
ブログ記事の中にこちらの記事をリンクさせていただきました。
事後報告で申し訳ありません。
不都合等ございましたら、お手数ですがご一報ください。
よろしくお願いいたします。