できるだけ多くの動物を譲渡できるように~横浜市動物愛護センターのいまとこれから

尾形聡子

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今年の5月22日に開所してからちょうど1ヶ月が過ぎた6月末日に、横浜市動物愛護センターを訪問してきました。「人と動物がともに快適に暮らせる環境づくり」を目指し、保護した動物を可能な限り譲渡していくという運営方針には、大勢の人々が関心を寄せていることと思います。横浜市動物愛護センター(以下、センターと略します)運営企画係長の鈴木忠雄さんに、センターの現状と今後についてお話を伺ってきました。

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青々とした芝生がきれいなふれあい広場。

構想20年をへて開所へ

横浜市に畜犬センターができたのは昭和44年。名前の通り、犬だけを収容する施設でした。

「畜犬センターで挙げられてきた諸問題をふまえ、動物愛護センターをつくったらどうかという構想ができたのは20年ほど前になります。センターをつくる際にはこういう機能が欲しい、こういう設備が欲しいといったことを少しずつ積み上げてプランをつくってきました。その際に参考にしたのは、他都市の施設です。視察に行ったり話を伺ったりしながら、いわゆる、"いいとこどり"的な考え方で作り上げたものといいましょうか。」

小高い山の上に建てられたセンターは、敷地面積約10,000平方メートル、延べ床面積約2,800平方メートルと、とてもゆったりとした作りになっています。最大で、犬70頭、猫120頭を収容できる設備のほか、大ホール(定員300人)や滑りにくい床材を使った飼育体験実習室、グルーミング室、芝生の広場など、さまざまな目的で市民の方、市民以外の方も活動できるスペースが備えられています。

「この施設は動物愛護センターという名称ではありますが、動物愛護の拠点としてだけではなく、地域交流の場所としての施設も兼ねています。そんなこともありまして、施設としてはかなり大きなものとなっております。地域交流の場としてセンターに足を運んでいただける機会が増えることによって、収容されている動物と触れ合う機会も増しますから、そこからも動物の譲渡や啓蒙活動の活発化へと繋げていきたいと思っています。保護された犬や猫に対してとりたてて興味を持っていなくても、別の目的でセンターを訪れた人が、それをきっかけにして動物たちに興味を持っていただけるようになれば、という想いです。」

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建物の外側から見た、犬の個室。芝生広場に面しています。

基本的に成犬が収容される

もともと畜犬センターで保護されていた犬も引き受けたこともあり、この短期間に犬の収容頭数が60頭を超えた時期もあったそうです。取材時は50頭くらいの犬が保護されていました。猫も含め、センターに保護される動物がゼロという日はまだないそうです。

「基本的には子犬は収容されません。と言いますのも、こちらのセンターで保護する犬は基本的には迷い犬なんです。迷い犬の子犬は殆どいませんから。また、飼い主さんが犬を飼えなくなったから引き取ってくださいということは、基本的にはお断りしています。法令的には引き受けなくてはいけないのですが、そのようなことを続けてしまうと、やはり、飼い主の方の責任というものがどんどん希薄になっていってしまうんですね。ですので、まずは終生飼育をしてください、それができなくなったのであれば、ご自身で新たな家庭を探してください、それでもどうしても見つからないという場合にだけは引き受けます、という姿勢でやっております。」

いわゆる迷い犬を見つけた場合には、横浜市の各区にある保健所または警察で一時保護し、そこからセンターに連絡が来て、担当の者が出向いていってセンターへ連れてきます。そこでまずは、飼い主の方が犬を見つけられるよう、犬の写真を撮ったり特徴を確認してホームページに1週間ほど掲載します。それでも全く連絡が無い場合に、譲渡対象の犬としてセンターに収容されるという流れになっているそうです。

「保護した犬は、全て譲渡していく姿勢でいます。ただし、どうしても譲渡出来ない理由がある場合、たとえば感染症などの病気を持っていてなかなか治癒しない場合などは困難かと思っています。公衆衛生上、周囲に影響が及ばないように細心の注意を払って終生飼育してくださる方がいらっしゃるならば譲渡することも可能ではあるのですが、なかなかそれも難しいと思います。かといって、センターで飼育し続けることもできませんから、そのような場合には安楽死という道を選択せざるを得ない状況になることもないとは言えません。」

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建物の内側から見た、犬の個室。

終生飼育をしてもらうために

「譲渡するにあたっては条件をもうけさせてもらっています。新たな家庭が見つかっても、何らかの理由で再びセンターに戻ってきてしまう、ということが起こらないようにするためです。終生飼育をしていただくために、動物を飼える環境(住居状況など)にあるか、ご自身の年齢などを確認させていただいています。また、どんなに飼育経験が豊富な方であっても、譲渡前講習を必ず受けていただきます。その後、面談をして希望する犬や猫について伺ってからマッチングを行い、最後にお見合いをしていただく、という流れになっています。また、会ったその日に動物をお渡しすることはありません。会った直後はどうしても感情的に"かわいい""飼いたい"となってしまいますから、一度家に戻っていただいて数日経ってからお渡しするようにしています。」

取材に伺った日の前の週に、第1回目の猫の譲渡会を開かれたそうです。猫の場合は、犬とは逆に、基本的に成猫は引き受けていないそうです。センターで猫を引き受ける条件として"自活できない猫"という基準があるため、殆どが子猫なのだそう。もちろん、病気などで餌を取れない場合などは成猫でも引き受けるそうですが、いわゆる地域猫は引き受けていないそうです。また、保護された子猫は、不妊・去勢の処置やマイクロチップを装着するためにはある程度成長してからでないと譲渡できないそうです。

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譲渡室は2部屋あります。奥には健康チェック部屋も。

市内外の動物愛護団体とも協力態勢をとっていく

「今後、個人の方々だけではなく、団体の方々にも譲渡をしていく予定です。団体譲渡を行うにあたりまして、まず最初に、これまでにしつけ教室や介護犬のデモンストレーションなどといった部分でご協力をいただいてきました市内の団体の方々にお願いしようと思っております。そこで、問題点や課題などを挙げて検証し、団体譲渡のノウハウを構築し、ゆくゆくは、市外の団体の方でもご協力いただけるようにネットワークを広げていきたいとも考えております。また、一般の方々も、センターに来ていただいて、講習を受けていただき、諸条件をクリアしていただければ、横浜市民でなくてもどなたでも収容動物の譲渡をいたします。」

また、今後はボランティアの募集も開始されるそうです。

「センターのスタッフは23名、そのうち獣医師が11名です。現在、動物たちの日々の世話は、基本的に獣医師と他スタッフ18名ほどで行っております。しかしスタッフだけでは人手が足りないことも多く、是非ともボランティアの方にお手伝いをお願いしたいと思っております。現在ボランティアの方を受け入れるための規則や態勢づくりがほぼ終わり、近いうちにボランティアの方を募集させていただく予定です。募集するにあたり、まずは、これまでにもご協力いただいている愛護団体の方の推薦を受けた方にお願いしようと思っています。センターも動き始めたばかりですので、実際にどのようなことをどのような形でご協力いただいて運営していくか、ボランティア活動に慣れた方々にお手伝いいただいてルール作りをしっかりしたうえで、秋口くらいに一般の方々のボランティアを募集させていただこうと考えております。その時には是非とも多くの方々のご協力をいただければと思っております。」

できるだけ多くの動物を譲渡していくために

開所してから1ヶ月。動き始めたばかりの現段階では、この施設をどのように軌道に乗せて運営していくかというのが大きな課題だと鈴木さんはお話されていました。

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「できるだけ多くの動物を譲渡できるようにという基本理念をしっかり持って、まずは運営を軌道に乗せて安定させることを考えております。今後、さまざまな問題点も出てくるでしょうし、市民からの要望や実態も含め、改善できるところからしていきたいと思っております。開所して間もないのでまだまだではありますが、当センターの職員はもちろん、横浜市としても全面的に応援してくれております。また、市だけではなくさまざまな愛護団体の方、色々な立場の市民の方々からもたくさんの意見をいただいております。行政という立場はどうしても縛りがありますからもどかしく感じられる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、行政だからできること、広く意見を聞いて動物についての意識の底上げができるよう、市民の方々のコンセンサスを得ながら良い方向へと進めていきたいと思っております。」

まずは横浜市で保護されている犬や猫に対して万全な態勢を取っていきたいとのことですが、運営が安定してきたら、被災犬の受け入れなども視野に入れて動いていきたいと考えているそうです。ちなみに、横浜市には動物と一緒に避難できる一時避難場所が5か所あり、その中のひとつが横浜市動物愛護センターとなっているそうです。

「できるだけ多くの犬猫が譲渡できるよう頑張っていきたいと思っています。」

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