Dogs Trustから考えるイギリスの犬事情 (2)

清水克久

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前回は主に組織や変遷などについて書きましたが、今回は少し実際の現場での話をしたいと思います。Dogs Trustのモットーは"We never destroy healthy dogs (健康な犬は絶対に殺処分しない!)"というものですが、その他にも訴えていることがあります。"A Dog is for Life, not just for Christmas"というもので、特にクリスマスシーズンにステッカーやバナーが作られます。直訳すると「犬は生涯にわたるものであり、クリスマスだけのものではない!」というニュアンスになりますが、実際は「犬は一生つきあっていくパートナーであり生き物、ただのクリスマスプレゼントではない!」ということを伝えたいのだと思います。

この言葉からも分かるとおり、犬のリホーミングも大きなウェイトを占める活動ではありますが、実はその根底とも言うべき「どうやったら、この施設に来る犬が減るか?」ということも日夜様々な情報や媒体をもとに、告知しているのです。実際の生き物は、ただ「可愛い」という「動くぬいぐるみ」ではなく、きちんと食事も与えなければいけないし、運動もさせなくてはいけない。そして排泄もすれば、時には大きな病気にもなり看病が必要になるのです。その上生活にもお金は掛かりますし、病院代も病気によっては安くないのです。ただ見た目が可愛いという端的な考えで犬を家族の一員として向かえるその先には、多くの場合犠牲になるのは犬であり、最終的には家族です。

この様な事情を踏まえ、Dogs Trustでは入念な面接や家庭訪問などを実施し、「家族がみんな賛成しているか?」、「きちんと庭にはアクセスできるか?」など細かいチェックがなされます。そしてその前にも、家を失った犬が一番良い状態で、または以前より良い状態で新しい家族に受け入れられるよう、トレーニングや時には避妊・去勢手術などが行われるのです。「どうせ収容していて時間があるのなら、何故楽しいことやその後の犬生に役立つことに使わないのだろうか?」というイギリス人的とも言える前向きな考えで始められたと思いますが、それを実践し、長期に渡り成果を出しているのは素晴らしいことであり、見習わなければいけないと思います。

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以前私が働いていたNatural Animal Centre (NAC)では、定期的にDogs Trustを訪問し、セミナーをしていました。そして長期的に施設に留まってしまっている犬、若しくは直ぐに施設に帰ってきてしまう犬、「Sticky Dog」の環境改善プロジェクトにも参加していました。そしてその中で特に重点を置いていたのが住環境です。これは一日の多くの時間を過ごさなければいけない部屋もそうですが、それ以外にも行動範囲全てが含まれました。例えば、もちろん獣医師やスペシャリストのきちんとしたチェックを受けてからの話ですが、多くの場合、個別の部屋などで1頭分のスペースは確保されていますが、1頭だけでルームに入れられることはなく、その他の犬の部屋にも行き来できる構造になっているものが多いです。1頭で寂しく不安にさいなまれながら毎日生活していても、決して楽しい毎日ではありません。むしろ神経が過敏になり、イライラするでしょう。そして適度な運動や安心できる場所がなければ、どうやって原因となっている行動の出現をなくすことが出来るのでしょうか?恐らく難しいと思います。

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ですので我々がDogs Trustに提案したのは、「多くの選択肢を犬に与え、選べるようにしてあげる環境作り」です。その犬の歴史によって、好きな場所も違えば、好きな臭いも違います。簡単な事ですが十犬十色であり、それに合わせられる環境にしました。部屋によっては外にでられるドアがあり、好きな時に共通スペースの専用ドッグランで遊べる部屋もあり、逆にこじんまりとした部屋でお気に入りのベッドが置いてある部屋もあります。どの部屋もその犬に合わせてあり、1つとして全く同じ環境にはしていないのです。そして犬の欲求階層を1つでも多く提供できるようにしているのが、最近のDogs Trustの傾向であり、最新の住環境です。

その為にはスタッフの教育が不可欠です。最初はドッグケアラーやハンドラーのレベル1、そしてレベル2と進み、最終的にはTBA (Training and Behavioural Advisor) となり犬のスペシャリストとなります。毎日の経験もとても重要ですが、きちんとしたセミナーに参加するのも大切なことです。Dogs Trustでは積極的にセミナーなどに参加するように呼びかけており、その費用も多くは会社が負担してくれます。実際にNACのCanine Behaviour コースもTBAの方々が会社のサポートのもと参加し、「何故住環境が重要か?」や体内で起こっている神経伝達物質の行動に対する影響などを学習しています。そして何より専門職としての就職があり、給与も生活できるしっかりとしたものが付いてきます。

この様にDogs Trustでは、「包括的にどうやったら犬がしあわせになれるか?」を考え、そして取り入れ進化しているのです。もちろん科学の進歩などによってまだまだ様々な改善が必要となることでしょう。しかし前向きな姿勢とぶれない信念は一生変わらず、不幸な犬がいなくなるような世界を作っていくのだと思います。

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