Dogs Trustから考えるイギリスの犬事情 (1)

清水克久

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「Dogs Trust」は、昨年末に「世界で最も環境に優しいレスキュー・センター」として発表され、その名前を知った方も多いと思います。

この団体は世界最大級の犬の保護団体であり、彼らのモットーは「We never destroy a healthy dog (我々は健康な犬は絶対に殺処分しません!)」です。動物の保護団体では当たり前の様に聞こえますが、これは言うほど簡単ではありません。これをとてつもない規模で実践し、そして維持をしている世界でも数少ないチャリティ団体の一つがDogs Trustです。

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イギリスにおいて、チャリティ団体には登録番号が政府より支給されます。この為にはしっかりとした申請書もそうですが、理事になるメンバーにも厳しい審査があります。また団体としてもしっかりとした理念や収支計画書、そして年度ごとに収支報告も行わなければ絶対に認められないのです。その反面、登録チャリティ団体には税金などが優遇され、国としてその活動を支援する仕組みが作られています。

そして理事は、どんな理由があろうとこの団体を利用して利益をあげてはならず、更に個人的に団体の運営に重い責任が課せられます。というのも、もし団体に不正などがあり、損害がでるようなことがあれば、例え理事を辞任または解雇されたとしても賠償責任が残るのです。この様な厳しい条件でも名誉職としてしっかりとした理念や信念の元に、それぞれの理事は彼らの専門分野で力を注ぎ、また所属するチャリティ団体が理念と違った方向に進まない様に、陰で支えているのです。

Dogs Trustの歴史は、今から約120年前の1891年までさかのぼります。当初はNational Canine Defence League(ナショナル ケーナイン ディフェンス リーグ=全英犬保護連盟)として発足しました。当時から動物保護のチャリティ団体(チャリティ登録番号227523 & SC037843)としては英国最大でした。そして、2003年により分かりやすく親しみのある今のDogs Trustと改名しました。

ここで少し余談ですが、「Canine」というのは、日本語に直訳すると「犬科」や「犬歯」などと訳されることが多いのですが、感覚としては「Dog=犬」の一般的な犬を表す言葉より、少しアカデミックな呼び方という表現が合っていると思います。ですので、普通の理系や動物関連ではない人に「Canine」と言っても、「犬歯」ということしか浮かばず、直接「犬」には繋がらないことが多かったみたいです。

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世界最大と言われる由縁は他にもあります。Dogs Trustが所有するリホーミングセンター(保護センターという意味)は、イギリス全土17カ所に分布しており、またこの17の保護センターから毎年約1万6000頭の犬が里親のもとで幸せな新しい生活を始めています。これは単純計算で1施設あたり約941頭となり、1日2.6頭の犬が新しい家族の元に送られています。これは444人のスタッフと、その何倍ものボランティアが犬の命を助けようと一生懸命働いている結果なのです(2009年度)。その甲斐もあり、1匹の犬がリホーミングセンターで過ごさなければいけなかった時間は平均してたったの38日でした。

私がイギリスのNatural Animal Centreで職員として働いている時にも、同じコースにはDogs Trustの現場での最高位であるTBA (Training and Behavioural Advisor) も数多く参加し、その技術と知識を増やしていました。そして彼らの仲間は、毎日どこかの学校や団体におもむいては犬に関する教育を行っていました。その回数たるや、年間3,215回にもなり、毎週どこかの施設ではオープンセンター(センター開放)はもちろんのこと、寄付を募るためのイベントでも教育活動が行われていました。彼らは、「犬を里親に出す」という事も実践で行っていますが、それ以上に「どうやったら施設に収容される犬が減るか?」ということも真剣に考え、教育活動やマイクロチップの導入、避妊・去勢手術も行っているのです。大元となる蛇口を閉めない限りイタチごっこになり、不幸せな犬は減らないことを良く理解しているのだと思います。

どんな作業にもお金は掛かり、ましては400名以上の職員を抱える団体の維持は、経済的にも簡単ではありません。しかし、その運営資金は寄付と投資などの利益、そして利子などから捻出されており、2009年度は6070万2000ポンド(=約82億円)でした。

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この会員が犬のために出してくれた資金を、考えられる方法で有効に使い、そして結果を出してきたDogs Trust。今なお会員は増えており、この不況でも約50億円の寄付が募っています。もしこの様な団体が日本でできたらどうでしょうか? もっと多くの人が犬に関心を持ち、そして知りたいと思うのではないのでしょうか? しかし一人一人のサポートがあり、企業のサポートがあり、そして国のサポートがあり成り立っているのです。日本も少しずつ変わってきています。Dogs Trustも今の組織になるまで120年の歳月が掛かっています。それに比べたら日本の動物愛護もまだ若い段階かも知れませんが、みんなで協力すれば殺処分で無意味に命を落としていく動物の命が救えるのではないのでしょうか? それぞれが興味のあることや得意な分野で少しの力を出せば良いのです。何かできることがあれば、一歩前に進んでみるのも良いと思います。

Dogs Trustから考えるイギリスの犬事情 (2)

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