ドイツの動物保護への取り組み

京子アルシャー

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2009年のドイツペット需要工業協会(Industrieverband Heimtierbedarf e.V.)の調べによると、現在ドイツでは推定頭数約540万頭の犬が飼われ、世帯の13%が犬を飼っているそうだ。日本では推定1,232万頭(平成21年ペットフード協会調べ)、世帯の18%に相当するというから、世帯・頭数比だけを大まかに比較すればドイツは日本の約3分の2、逆に言えば日本はドイツの約1.5倍の規模ということになるだろう。

アメリカ合衆国・フランス・ベルギー・アイルランドでは世帯の35%以上、ポルトガル31%、イギリスでは28%の世帯で犬を飼っているというから、それらの国に比べるとドイツは犬と暮らしている世帯の数は断然少ない。

面白いことに動物保護に本腰を入れ国の課題として世界で始めて憲法に「動物保護」を取り入れたスイスでは10%、その他オーストリアとスウェーデン15%など国が動物保護に厳しい姿勢を見せる国のほとんどで犬と暮らす世帯の数は少ない傾向にある。

犬の繁殖に関する管理が厳しいと生まれてくる犬の数が少なく、そして犬の数が少ないから管理もしやすく命を大切にすることが出来る。生まれてきた命をぞんざいに扱いたくないから、むやみやたらと命を生み出すことをしない。これらが統計に現れているような気がする。

ドイツではこれまで犬猫の殺処分は行わず、2002年に動物保護を憲法に取り入れる以前に厳しくそして細かく定めた動物保護法に則って取り締まってきた。こういった点ではドイツ人はなんて法に忠実な国民なのだろうと感心する。

「動物保護法」「犬の保護に関する条例」を2本柱としたドイツの犬の保護は獣医局の局獣医師が中心となり、動物保護法が改正される毎に強化され、現在では従来の職務である食肉食品衛生管理と同じ重きが置かれている。そして「動物保護のための獣医師団(Tierärztlichen Vereinigung für Tierschutz e.V.:TVT)」によって動物種ごとの保護の基準(動物を飼育するにあたっての最低環境条件)が明確に掲げられている。

動物保護法は改正の度に動物に関わるあらゆる企業・団体・教育機関・コミュニティーそして個人へ反映されてきた。

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犬としての欲求が満たされ、ストレスの少ない犬は聞き分けがよく穏やかだ。だからヒトと犬との共存にとって犬のウェルフェアはとても大事なポイントとなる。

「動物保護法」も「犬の保護に関する条例」も、企業・団体・個人に関わらず全ての犬に適応される。例えばペットショップでの生体販売などは法できっぱりと禁止になっていない代わりに、檻の大きさ(小型犬1頭あたり最低6㎡)や採光・通気・建築素材、ヒトとの接触時間の長さ、犬社会との接触の必然性に至るまですべて法の基準に沿っていなければならない。動物の販売業は許可制のため、法の基準に沿っていなければ販売業者としての許可が下りず営業停止となり、現実的には商売として成り立たないことからドイツのペットショップでは犬は販売されていないという現状だ。

もちろん繁殖の現場でも同じ法律が適応されるから、ペットショップ同様効率が悪過ぎて大型の繁殖場なんてなく、これが個人のブリーダーだとしても同じこと、環境が基準に沿っているか獣医局の抜き打ち訪問検査があるほどだ。

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ドッグショーでの成績は繁殖犬として最低必須条件。ただ見た目の美しさを競うだけではなく、骨格の正しさや筋肉のつき方など将来に残すべき犬種の特徴を選び出す。「健全性」はとても大きなキーワードだ。

命を生み出す繁殖を管理する各犬種クラブでは法の主旨に沿って、両親犬の能力判定、母犬の生涯出産回数や出産年齢制限、繁殖許可を得るための健康診断など、繁殖犬に多くの条件を設けて勝手な素人繁殖・乱繁殖を防ぎ、犬の健全性を守っている。

その犬の健全性の基礎となるのが犬学だが、1994年には国内の獣医学者と動物学者、そして犬に関わる団体や個人が集まり、犬のウェルフェアを目的とした研究を費用のバックアップを通して推進する「犬学推進協会(Die Gesellschaft zur Förderung Kynologischer Forschung e.V.)」が創立された。この協会を通して進められた犬の研究プロジェクトは、犬の何たるかを網羅するように繁殖学・遺伝学・行動学・基礎研究など創立以来すでに90テーマにも上る。研究するのはもちろん獣医学者と動物学者たちだ。

企業や大学・教育機関における実験動物の犬たちにも法律は当然適応され、「実験動物の3R」にもかかわらず実験許可の下りた犬の飼育状況は、動物保護委員である獣医師によって監視されている。さらにはティアハイム(動物孤児院)などの施設も例外ではないから、法の基準を満たす設備と人員・運営を賄わなければならない。もっとも犬を助けようという団体なのだから法などなくてもそんなことは百も承知なのだが。

多くの一般企業は動物保護活動・思想を社会への貢献として企業方針にも取り入れ、地元のティアハイムや動物保護団体のスポンサーとなったり、店頭に募金箱を置いたり、あるいは動物保護団体主催のキャンペーンに積極的に参加することで、社会が関心を持っている「犬へのやさしさと愛情」に共感している。これは犬好きの従業員が喜ぶだけでなく、なによりも企業のイメージアップにも繋がるほか、動物保護への関心はまた企業の誇りでもあるようだ。

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生まれつき子供は動物への興味を持っているものだ。それがどのような方向へ育ってゆくかは周囲の大人にかかっている。

また将来を担う子供たちへの動物保護教育も目を見張るものがある。おばあちゃんの愛犬との交流を通して犬との接し方を学ぶだけでなく、幼稚園や学校の遠足先に牧場見学やティアハイム見学が選ばれたり、教会やクラスで募金活動を行ったりすることも決して珍しくない。犬こそ飼われてはいないが、学校飼育はかならず獣医局動物保護担当獣医師の指導の元に行われ、子供たちの目に常に手本となるような飼育状況が心がけられている。

子供は正直だから、自分たちが教わったことと違う状況を目にすると容赦なく指摘する。これが大人になっても変わらないのがドイツとでも言おうか、思ったよりも近所の目は光っているようで、法と自然に背いた飼われ方をする犬の姿をみな見逃さない。

国民の持つ動物保護の意識が法律に反映されて改正され、改正された法律はまた社会へと反映される。その途中で試行錯誤を繰り返し、現在のドイツがある。長年かけて築いてきたこの基盤は信念とも言うべきとてつもない安定感を持ち、そしてこの先もまた揺らぐことなくヨーロッパにおいて動物保護のイニシアチブを取って行くだろうことを確信させるのであった。

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