使うリスク・使わないリスク、犬の駆虫剤との付き合い方を考える (4)

京子アルシャー

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enjoying the sunset

[Photo by dewollewei]

日没の前後、蚊が最も活発になる時間帯。

以前の記事で「駆虫剤との付き合い方を考えるシリーズ」としてダニとノミについて取り上げたとき、コメント欄で反響の大きかったフィラリア症について今回改めてお話しよう。

まずは「フィラリア」とは何者か?

日本で犬を飼っている人ならば誰でも耳にしたことがあるだろう「フィラリア」という名前。犬(とイヌ科の動物)に寄生するフィラリアは学名を Dirofilaria immitis といい、日本語では「犬糸状虫」と呼ばれる。その名の通り糸のような姿をしているのが特徴であるほか、体内に入って成虫になると心臓に寄生し障害を起こすのだ。

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[Photo from de.wikipedia.org]

心臓に寄生したフィラリアの標本。まるでそうめんのよう、といってしまっては食欲も減退してしまうかも。

このフィラリアは蚊によって媒介されることから、フィラリアに感染しやすい季節は当然蚊の活発な季節に伴うほか、蚊の行動範囲内にフィラリア症にかかった動物がいるかどうかという「有病割合(Prevalence)」が関係してくる。

さて、ここでフィラリアの一生を見てみよう。

フィラリアの一生は犬に寄生した成虫から生まれるミクロフィラリアがスタート。犬の体内に放出されたミクロフィラリアはそのままでは成長せず、中間宿主である蚊の体内に移動することでその先成長することができる。

だから蚊に血と一緒に吸われるためにミクロフィラリアは蚊の活発な時間帯(夕方から早晩にかけて)には末梢血管に移動するという技をも見せ、なかなか侮れない。上手く蚊の体内に移動したミクロフィラリアはその後2つの幼虫期を経て、そして感染が可能な第3期幼虫に成長する。

この第3期幼虫でなければ犬の体内へはミクロフィラリアは感染しないというから、フィラリアにとっては結構都合が悪いように見えるが、これはこれで最終宿主である犬が死んだときにも次世代フィラリアは別の宿主の中で生き延びることができる、ということでやはりそれなりの生き残りの術なのだろう。

ミクロフィラリアが蚊の体内で成長するにはまず気温が最低14度以上であることが条件となる。気温の条件さえ合えば18度以上で約29日、20度以上では8日でミクロフィラリアは感染可能な第3期幼虫に成長する。

感染可能な第3期幼虫は蚊が犬の血を吸っているときに血の流れを逆に進み最終宿主である犬の皮下に入る。皮下の結合組織の間で犬の免疫抗体の攻撃を受けつつ、生き延びたものは脱皮し、1-2週間で次の第4期幼虫に成長をしたミクロフィラリアは筋肉を通って血管そしてさらに肺動脈へと移動。最終目的地の肺動脈と右心室に届くには実に70-110日を要し、その頃にはミクロフィラリアは約2-3cmに成長してすでにプレアダルト(成虫の前段階)になっている。

永住の地を右心室に落ち着け、さらに3-4ヶ月経てばもうミクロフィラリアではなくマクロフィラリアと呼ばれる成虫となり繁殖が可能な年頃となる(そしてスタートに戻る)。

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フィラリアの一生(「Lehrbuch der Parasitologie fuer die Tiermedizin」より)。犬の体内で成虫が次世代を生み出すことからフィラリアの一生は始まる。フィラリアの成長には中間宿主の蚊と最終宿主の犬の存在が欠かせず、体長220-340μmのミクロフィラリアは約8ヶ月後にはオスで18cm、メスで30cmほどにまで成長する。

心臓に巣食ったマクロフィラリアに対しても犬の体は免疫抗体を作って応戦するが、そりゃあフィラリアとしても必死、そんなことではやられず約9ヶ月の苦戦の末に免疫機能は役目を放り出し、マクロフィラリアの寄生を認めてしまう結果となる。こうして居住権を勝ち取ったフィラリアはその後7年くらい犬の体に世話になることに。

マクロフィラリアが寄生した犬の心臓は本来の能力を発揮できず、また肺には生み出されたミクロフィラリアが集まり、犬の体は充分に酸素が補給されず呼吸困難に陥る。フィラリア症に罹った犬の典型的な症状が咳やぜぃぜぃという呼吸音、はたまた運動時に酸欠で倒れるというのはこのためである。

何しろ一番恐ろしいのは寄生したマクロフィラリアが死んでしまった場合あるいは体内に放出されたミクロフィラリアが抗体の攻撃を受けて塊となり血管に詰まってしまった場合、場所が悪ければショックや突然死に至る。

フィラリアも必死なのは分かるが、それにしては手痛い仕打ちではないか?まるで恩を仇で返されたようだ。

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