使うリスク・使わないリスク、犬の駆虫剤との付き合い方を考える (3)

京子アルシャー

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flea & tick

[Photo by Charley Lhasa]

市販されている滴下式の駆虫剤。

ノミ・ダニと聞いてすぐに市販の駆虫剤を思い出した人、多いはず。それほど犬の飼い主にとって駆虫剤の宣伝広告は行き届いている。

正義の味方の素顔は?

現在市場には多くのノミ・ダニ予防のための製剤(首輪型、スポット・オン、内服薬など)が多く出回っている。

ペルメトリン、フィプロニル、イミダクロプリド、ルフェヌロンなど、これらの有効成分は農林水産省に農薬として登録(「農薬コーナー」参照)をされているもので、普通農薬あるいは劇薬毒物の毒性を示すものであることを知っている飼い主もそろそろ多いのではないかと思う。

これらの駆虫剤の効果のほどは、体に付いたノミ・ダニが薬に接触しただけで死ぬものや血を吸ってから殺虫効果を発揮するもの、そして吸血とともにノミの体に入った薬によって産み付けられた卵や幼虫の成長が阻害されるものまでいろいろで、それぞれ高い殺虫効果を示す。

これらの成分の毒性とは、軽いところでは投与部分の皮膚刺激・肥厚、脱毛、またアメリカでは発癌物質と言われていたり、あるいは遺伝子の変異を引き起こすものであったりするから、これらの有効成分を用いた駆虫剤の使用取扱説明書には使用者に対し「直接手で触らないこと」や「高齢の犬・病気の犬には使用しない」などの注意事項が書かれているのは当然のこと。

ちなみに農林水産省動物医薬品検査所ではこれらの動物用医薬品について情報検索サービス、「動物用医薬品等データベース」を提供している(一覧表から選択するよりも直接主成分や商品名称を入力した方が検索しやすい)。

だってそもそもは農薬だもの、どう転んでも体にいいはずがない。だけどどんな薬だって副作用があるのが通説であるから、それから考えると駆虫剤だけがとりわけ酷いヤツという話でもないだろう。

多くの飼い主たちは「予防」としてこれらの駆虫剤を犬にほぼ毎月投与するわけである。

また虫除け効果のある自然素材もこのところ多く知られるようになってきた。シトロネラやラベンダーなど植物から抽出した精油(エッセンシャル・オイル)を用いた虫除けシャンプーやスプレーは、体への害は駆虫剤の比にならないほど少ない。効果のほどは精油の濃度や使用の形態によりかなりバラつきがあり、よく効くものとそうでないものとに分かれる。またこれらには殺虫効果はないのですでに体に付いたノミやダニを駆除するためには使えないから、特に大量のノミ・ダニが付いてしまったときなどはやはり駆虫剤(シャンプーを含む各種)のお世話になるしかない。

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ピレネー犬アントンは農家で猫と暮らしているので駆虫剤をつかっている。

さて、副作用がなければ駆虫剤は使って安心か?副作用が出なければ毎月農薬を塗りこんでもかまわないか?なんて自己問答するくらいなら、私たちが口にする食品の質なんて気にする必要はないし、ドッグフードにナニが入っていようがお構いなしということにもならないか?

まずは駆虫剤は使っても使わなくてもリスクが伴い、完全な予防策はなかなか存在しないのだということを知ったうえでノミやダニが付く危険性と駆虫剤を使用するリスクを天秤にかけて、自分自身でよく決めよう。

例えばノミの唾液アレルギーが問題で、いろんな手を尽くしてもどうしてもこの薬に頼らなければ状況改善は期待できないというところまで来たならば、止むを得ないだろう。あるいは行楽などでバベジア症の多発地域に足を踏み入れるというのならば予防策の一環として駆虫剤を用いるのも許容範囲だろう。こういった際には吸血前に駆除できるタイプの駆虫剤でなければ意味はない。

しかし、ただ「奨められたから」とか漠然と「ノミやダニが付くと気持ち悪いから」という感情だけで犬の体に余計な負担を掛けてしまうのならば、もう少し思考をめぐらせてみるのも良いのではないかと思う。家庭内に持ち込まれたノミは早期に発見・処理することで充分ヒトへの被害を防げるし、もしも犬についたダニがヒトへ移る可能性があるとするならばそれはダニが犬の体に噛み付く前のまだ徘徊している段階である。

子供がいる家庭でノミ・ダニが子供へ移るのではと懸念するほどお互いの接触が濃いならば、まずは双方のリスクを軽減するためにある程度の労力は惜しまないで欲しい。室内飼いならばノミの住みづらい環境を作るため部屋をできるだけシンプルなインテリアでまとめいつも清潔に保てるようにするとか、ダニを早期に発見するために手入れを心がけるとか、これらは言い換えれば犬と一緒に暮らす上で最低限のことばかりではないだろうか?

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ここから先はちょっと個人的な経験談。私はうちの犬に当初からこれらの駆虫剤を用いないという選択をした。うちの犬は室内飼い、比較的短毛のサルーキーでしかもクリーム色だからノミやダニが付くとよく分かる。森や草原・茂みを散歩した後はもちろん体をチェック。まだ食いついていないダニを発見することも、あるいはすでに食いついて3日は経っているだろうダニを毛抜きで根元から引き抜くことも、どちらもある。一度に7匹見つかったこともあった。おそらくチマチマとダニに食われることによりもう抗体が安定しているのだろう、ドイツのダニに多く媒介されるボレリア症にかかる気配すらもない。

ノミだって過去に2回ほどもらったことがある。いずれも他の犬と遊んだ直ぐ後に頭やお尻のあたりをうろついていたのを発見し、すぐに処置(シャンプー)をしてその後はもうノミの姿は見られなかった。

こんなことを言ってしまうと薬品メーカー関係者や他の獣医師から文句を言われそうだが、正直言ってノミやダニそしてそれらに媒介される病原菌などはわざわざ薬品を使って予防しなくても付いてから退治すればいいと私は思っている。これは決して怠けや金銭問題から来る考えではなく、犬の体が芯から健康でいられることをまず心がけるべきという考えが根底にあるからだ。犬の体に薬を投与することに慣れてしまう職業だけに、私はむしろ犬の持つ底力をもっと信じてできるだけ大事にしたい。

ノミ・ダニの存在を怖がらせようと思えばいくらでも怖がらせることはできる。ノミ・ダニが付く確率やそれらが病原菌などを媒介する確率が不明であればあるだけ不安は募るだろう。しかし一旦その生態を知ればそれらとの付き合い方を見つけることができ、それ自体は恐れるに足りない存在へと変わる。

毒はうまく使えば薬になる。逆にどんなに効果が抜群な薬だって乱用すれば毒に変わる。

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