使うリスク・使わないリスク、犬の駆虫剤との付き合い方を考える (2)

京子アルシャー

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こんな草むらにダニはこっそり潜んでいる。

前回からダニ、ダニと出てくるが、ここでお話しているのは森や草むらなど戸外に生息する「マダニ」のことである。

ダニにはいろいろな種類があり、その中でも「マダニ」は、家の中でハウスダストの元になる「家ダニ」や「ツツガムシ」、疥癬の原因である「ヒゼンダニ」やまた「ニキビダニ」とは異なるものであることをあらかじめ頭に入れていて欲しい。

マダニの生態を知る

ともかく下の写真のようなのが、マダニである。

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学名:Ixodes ricinus(約2-3mmの大きさ)。ちなみにこれはオス。

血を吸ったマダニのメスはこのような姿になる。

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満タン状態(直径約1cm)。幼虫ではオス・メスともに、成虫ではメスだけが3日から1週間かけて血を吸い上げ、これで一年は持つといわれている。究極の貯め食いである。ちなみに成虫になったマダニのオスは蚊と同じく吸血を行わずメスと交尾するためだけに宿主につくから、もしもこのような巨大な姿を見かけた場合、それはメスである。

さて、日本語で「ダニ」と呼ばれるものはまずすべてクモの部類に入る。昆虫類と違って8本の足を持つ、といえば納得いくだろう。

マダニのメスは草むらの葉の影に約3000個の卵を産む。卵からかえった幼虫は温暖な気候(湿度75%以上)でよく育ち、宿主となる動物種を変えながら2-3年かかって成虫になる。

背丈の高い草むらや茂みの中を好んで暮らし、もともとは牛を宿主としている成虫なのだが、周辺に適切な宿主がいない場合には手頃な標的として取り付いてしまうのが犬であったり時には人であったりする。

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マダニの一生(「Lehrbuch der Parasitologie fuer die Tiermedizin」より)。マダニが家庭内に入り込むことはなく、その一生はすべて戸外の温暖な気候に委ねられている。成長段階によって宿主が違い、犬やヒトに寄生するのは非常手段に過ぎない。

気温が7度を超えるとだんだん活発になり、草丈70-80cmのところまで登りつめて宿主が通るのを待つ。成虫の行動範囲は直径5m程度。草むらを通りかかった宿主の影や呼吸・汗に含まれるアンモニア・二酸化炭素・乳酸・酪酸などを感知して、宿主目掛けてすばやく身を落とす。

宿主の体の上を彷徨うこと3-8時間、好みの場所(犬では頭部と耳)に辿り着いたらいよいよ血を吸う。

Ixodes_ricinus

[Photo from de.Wikimedia.org]

マダニの頭部。口器を使って皮膚を切り、抜け落ちを防ぐための小さな棘が表面についている口管を突き刺して血やリンパ液を吸う(多くの場合毛細血管には到達しない)。その際わざわざ皮膚に麻酔をかけ(これにより宿主は噛まれたことに全く気がつかない)、長く延々と血を吸い続けるために抗血液凝固物質などもお見舞いしてくれるという入念な手口を持つ。

一度吸血を始めたら腹いっぱいになるまで離れないのがマダニ。数日掛けてパンパンに膨れ上がったら自らポロリと身を落とし、そしてまた茂みの中へ戻ってゆく。

自然界では寒さに弱く、冬の寒さが厳しい地方では越冬できないものが多い。そのために生息には北限があるという。

マダニのナニが問題か?

マダニ自体がノミのようにアレルギーを引き起こすということは稀であり、それよりもまずマダニが媒介する病原菌が問題となる。日本ではバベジア原虫という小さな寄生虫がマダニの唾液を通して体に入り込み赤血球の中に寄生する。

バベジア原虫はマダニが宿主に食い付いてから約48-72時間後に体内に入り込む。入り込んできたバベジア原虫に対して体はまず抗体を持って抵抗するが、時間が経過し徐々に原虫が多く進入し優勢になってくると状況は悪くなる。バベジア原虫が寄生した赤血球は崩壊し、それが大量に引き起ると犬は貧血に陥る。

「犬のマラリア」とも呼ばれるように急性の場合は感染してから5-7日後に高熱や食欲不振、血尿といった症状を示し、酷いときには黄疸や四肢の麻痺なども見られる。病気の犬や高齢の犬ではこれらの症状が急速に進み死に至ることもある。

犬の症状に気が付いて早急に血液検査をし、顕微鏡下で赤血球内にバベジア原虫を特定したならば抗原虫薬を用いての治療はそう難しくはない。急性の場合には輸血という方法もある(※日本では輸血システムがどの程度普及しているかは予測しかねる)。

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イボかと思ったらマダニ。大きさといい、感触といい、似ている。

マダニを発見したら?

日本では近畿地方にバベジア症の発生が多いと聞いているから、この地方の草むらで遊んだ後は念入りにマダニチェックをして、できれば食いつかれる前に取り除きたい。長毛では前回紹介したノミ取り用のコームを使って毛を梳くのも有効だ。

もしもすでに食いついているマダニを発見し自分で対処するのならばまず毛を掻き分け、先の平たい毛抜きを使ってできるだけ皮膚ギリギリのところをしっかり掴んでためらうことなく一気に引き抜く(正確な位置を掴むため明るいところで行おう)。

市販のマダニ取り用グッズもあるけれどいずれも掴み具合がいまいちだったり正確な位置を掴めなかったりで、結局自宅にある先が幅広で平たい毛抜きがベストである、と私は個人的に結果を出した。

正確な位置をしっかりつかむことさえできれば、「ぶちっ」という鈍い音とともにマダニは後を残さず引き抜くことができる。

食いつかれてすでに日にちが経っていてその際に強力な雑菌や原虫がすでに侵入している場合には食いついた箇所を中心に紅斑や腫れが見られる。

注意するべきは引き抜いたときに口器を残してしまった場合。残った口器を無理やりにでも取り出そうと皮膚を引っ掻いて傷つけてしまい、そこから二次感染を起こし炎症に発展するケースが多い。口器が残ってしまってもそのまま放っておこう。2-3日も経てば自然にポロリと取れるのだ。

心配ならばその後を観察し、何らかの変化が現れた段階で獣医さんに駆け込んでも遅くはない。

さて、これで一通りノミ・ダニとはどんなものであるか一応お分かりいただけたのではないかと思う。次回は正義の味方?(あえて疑問符をつけておく)駆虫剤の素顔について。

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